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 少女は肩を押さえながら小走りでやってきた。

 大きな胸が上下に揺れている。

 俺が無事だと見ると安堵していた。

「よかった……」

 こうして見るとすごい美少女だ。

 今まで見た中で一番かわいい。

 大きな目に薄い唇。白い肌。明るく肩まで伸ばした髪にはリボンが揺れている。

 自然素材で作られたドレスはところどころ破れている。

 そのせいで少し際どい格好をしていた。

 少女は俺の近くまで来ると少し警戒しながら周囲を見渡した。

「魔犬はどこですか?」

「さあ? どこに行ったんだろ?」

「……なぜ助けてくれたんですか?」

「え? なんでって……。まあ、なんとなくかな」

 俺が笑うと少女は益々不思議がった。

「なんとなくって……」

「いや、でも普通はそうだろ? 女の子が襲われてたら助けるよ」

「でも私は獣人で、あなたは人間です。人間はみんな私達獣人を襲ったり捕まえようとするのに……」

「いや、どっちかって言うと俺もそっち側だから?」

「そっち?」

「迫害される側かな。だから迫害されてる人の気持ちは少し分かる」

 きっとだからだろう。

 だから助けた。

 それが今分かった。

「それにあそこで見て見ぬ振りをしたら後悔すると思ってさ。もうしたくないんだよ。後悔ばっかりの人生だったからさ。もっと勉強しとけばよかったとか、就活がんばったらよかったとか。色々さ。でも結局変われないままで、どっかで変わりたかったんだ。多分だけど」

 全部転生する前の話だ。

 この子には意味なんて分からないだろう。

 だけどどこか共感しているようだった。

「……分かります」

「え?」

「わたしも後悔したくなくてもここまで来ましたから」

「……はあ」

 どういう意味だろうか? 

 分からないけど事情がありあそうだ。

 話をしたせいか少女の警戒は少し解けていた。

 口元が微かに緩むと益々かわいく見えた。

「こんな話しても分からないですよね」

「まあ、それはお互い様かな」

「そうですね」

 俺達は目が合うと互いに笑い合った。

 すると少女が胸に手を当てて微笑んだ。

「わたし、リズーシアといいます。リズって呼んでください」

「リズ……。あ。俺はショウゴ。昔の仲間からソーコって呼ばれてた」

「ソーコさんですね」

「いや、それはあだ名なんだけど……。まあいっか」

 からかわれていた時と違ってリズから呼ばれると悪くない。

 笑顔を向けられるとある気持ちがむくむくと膨らんできた。

 ああ。こんな子と一緒に居られたらなぁ。

 楽しいだろうなぁ。

 いや。いかんいかん。変な望みは抱くな。どうせ砕け散るだけだ。

 俺はかぶりを振ると気を落ち着かせた。

 するとリズは打って変わって真剣な表情に変わった。

「ソーコさん。あなたを信用できる人とお見受けしました。そこで折り入ってあなたに頼みがあります」

「頼み?」

 リズは頷くと胸に手を当てた。

「わたしをあなたの所有物にしてくれませんか?」


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