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妖精の国〜特別な目のせいで家族に虐げられた少女が幸せになるまで〜   作者: 冬月子@悪役令嬢のダイエット革命2卷8/1発売!


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物語の裏側

リューシ―視点から。

湖畔に漂う月明かりが、妖精たちの舞台を照らし出していた。風ひとつない静寂のなか、波一つない湖面は、磨かれた鏡のようだった。

その鏡には、人間たちの営みやささやかな喜び、そして時折の哀しみさえも映し出される。


その畔に、一人の妖精が佇んでいた。

軽やかで、絹糸のように繊細なその羽は、静かに折りたたまれている。

彼の名はリューシー。

夜になると決まってこの場所を訪れ、月の光を浴びながら、人間の国を映す湖をじっと見つめていた。


彼がいつも目を留めるのは、一人の少女の姿。

妖精の愛し子、ただ一人。


妖精が見える目を持つ、特別な少女。彼女が姿を見せると、森は潤い、草木はより鮮やかに生き生きと育ち始める。

彼女のそばに自然と妖精が集まるのは、その魂が放つ魔力の波長が、妖精たちにとってあまりに心地よいからだった。

柔らかく、温かく、まるで森そのものが息づくような魔力を持つ彼女。


けれど、その特別さゆえに、少女は孤独だった。

周囲から恐れられ、遠ざけられ、理解されることなく、冷たい視線にさらされていた。

彼女の言葉は「嘘」や「夢想」として一蹴され、時には嘲笑の的となった。


日々、少女の心には静かな痛みが積もっていった。

家族の中でも、友人の中でも、彼女は居場所を持てず、いつもただひとり。

その寂しさと傷ついた心を、リューシーは何もできずに見守るしかなかった。


彼のいる世界からでは、少女に声をかけることも、触れることも叶わない。

どれほど手を伸ばしても、届かない距離。

それでも彼は、夜ごと湖に訪れる。己の無力さを恨みながらも、少女の姿を水面に探し続けていた。


「どうして、こんなにも純粋な光が、こんなに苦しまなければならないのか……」


傷ついてもなお、優しさを失わない少女。

他人を憎まず、自分を犠牲にしてさえ誰かを助けようとする。

人間とは本来、自分勝手な生き物――それがどれほど難しいことか、リューシーはよく知っていた。


彼は夜空を仰ぎ、月へ問いかける。

けれど返ってくるのは、変わらぬ静寂ばかりだった。


それでも彼の心は少女から離れない。

一度でいい、あの子の笑顔を見たい。

その手に温もりを届けたい。

もしもひとつだけ願いが叶うのなら――その涙を止めてやりたい。


決意はやがて行動へと変わった。

彼は遠い人間の国に住む仲間の妖精たちへ助けを求めたのだ。

それは女王との約束を破る、危うい賭けだった。


「村で孤独を強いられている少女を救い出し、妖精の国へ導いてほしい」


その願いは風に乗り、妖精たちの間を駆け巡った。

家族や村人の仕打ちに怒りを抱いていた妖精たちは、迷わず応じる。


「妖精の国に行けば、ケイトはきっと幸せになれる!」

「そうだよ。あんな家族、もう捨てちゃえばいいんだ」


そして、ついにその日が訪れた。

薬草を探して森に入ったケイトは、妖精たちに導かれ、知らぬ間に妖精の国へと通じる小径に迷い込む。

そこで彼女を待っていたのは――リューシーだった。


初めは戸惑っていたケイトも、次第に妖精の国の暮らしに馴染んでいった。

妖精たちも驚きつつも、すぐに彼女を受け入れ、絆を結んでいく。

ケイトの痛々しかった笑顔は少しずつ自然なものへと変わり、魔法を使えたときには、誰よりも晴れやかな笑顔を見せた。


ケイトは、妖精の国に心を惹かれていた。

色鮮やかな花々は季節を問わず咲き誇り、妖精たちは彼女を笑顔で迎えてくれる。

人間の世界では決して得られなかった温もりと安らぎが、ここにはあった。


それなのに――彼女はまだ家族の、故郷の村に帰る方法を探していた。

リューシーは表向きこそその探求を手伝う素振りを見せながら、内心では決して帰すつもりなどなかった。


「ケイト、君が帰る必要はない。……君の居場所はここにあるのだから」


人間の世界へ戻すなど、ありえない。あの場所は彼女を拒み、傷つけ、孤独に追いやっただけだ。

ならば、二度とあんなところへは返さない。彼女が望もうとも、決して。


「大丈夫。君の物語は――『幸せに暮らしましたとさ』で、最後は締めくくられる」


もう二度と涙は流させない。必ず幸せにする。

たとえその幸せが、彼女自身の望むものとは違っていても、この美しい妖精の国で――。



めでたし、めでたし――?


読んでくださり、ありがとうございました!別名義で連載していた作品でしたが、ようやく完結出来て嬉しいです。

自由を愛し美しい存在でありながら、利己的で排他的な一面を持つ、そんな妖精像を描けていたら嬉しいです。


もし少しでも面白いと感じていただけましたら、ぜひ☆評価やお気に入り登録をしていただけると励みになります!


また、同時連載中の

『追放聖女の異世界ライフ!~精霊たちと冒険を満喫してるので、追放した国には帰りません!~』

もよろしくお願いいたします。こちらでも小さな精霊たちが元気に活躍しています!


余談ですが、この作品を「異世界恋愛」に投稿するか悩んだこともありました。ただ、恋愛とは違うな……と思い、今回はやめました。ケイトとリューシ―の行く末については考えていて、ちゃんとハッピーエンドを迎えます。

ちなみに妖精の大きさ=魔力の大きさという設定なので、リューシ―は人間サイズにもなれます。


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― 新着の感想 ―
実に楽しい物語でした! 楽しめましたよ!
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