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エイム迷走ス  作者: くろ
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解呪の秘薬



  アリロスト歴1894年  5月




 エイム卿から婚約の相談と言うか最終的には愚痴を聞かされて、そして遠くロングロングな此の島の話に成り、俺はエロいエイム卿の声を聴きながら夢の世界に旅立った。

 時々合間に緑藍の話題が入らなければ子供に聞かせるのにはバッチリだと思う。

 最終的には7つの王国が近親婚で5つに成ったと言う落ちも在るし。

 ソレも今は昔の話。

 とも言えないのが物悲しさを誘う。

 てか、エイム卿は近親婚復活論者だったりするし。



 国教会が近親婚は望ましくなって宣言しなければ、もっとグレタリアンの貴族家は減っていた?

 俺的にはいい仕事したと思うよ、国教会。

 グレタリアンの呪いと言われている短命と狂死。

 少しは減って来ているのでは?と俺は感じているのだが、、、精神錯乱は秘されるから分んない。

 いや、俺だって他家の血が入れば、その呪いが解けると気楽には考えていない。

 子孫たちのリスクが減るのでは?

 そう遺伝的な可能性を俺は乏しい前世の知識で類推してるだけだからね。

 国教会で呪いの解呪を必死に研究して出した答えなのだろうと思う。

 解呪の秘薬は時間が掛かるのさ。


 

 年若い今の陛下には是非とも子孫を一杯作って貰って、新たな歴史を作って欲しい。

 そう願う俺である、

 本音を言えばエーデン王国の姫君と此の国のロイヤルとは婚約して欲しかった。

 バーサーカー気質のエーデン王国が、ウィルの報告通りにデサーク王国へ応援と言う名の軍を派兵したら、レーヴィヒ地方とルタイン地方は鎮圧どころで済まない気がする。

 デサーク王国は圧勝するだろうが、確実にプロセン連合王国が出て来る。

 其処にルドア帝国が同盟国プロセン王国へ協力とか言って出て来そうなのだ。

 なんかもう血みどろな戦いが広がって行く気しかしない。


 そこでグレタリアンのロイヤルとエーデン王国の縁が纏まれば、グレタリアンとプロセンの同盟がエーデン王国の重しに成って呉れそうだと思ったけど。

 しかしグレタリアンも戦争を望んでいるなら意味がない。


 バンエル王国も元は神聖帝国の選帝侯の1人だっだが、オーリア帝国の同君君主だった義兄ランツ3世が、神聖帝国とオーリア帝国を併合した時に独立しバンエル王国を築いた。

 緑藍に持ち上がっている婚約のお相手ハンリー王国も同じだ。

 そのバンエル王国の王太子は芸術の才溢れる美貌の王子、、、なのだが美少年好きと言う噂。

 まあ噂は噂なので真実は俺の知る処では無い。

 つうか、ゲルン語圏の王族って腐ってる性癖が多い気がする。

 フリード2世しかり、ランツ3世しかり。


 本来なら廃嫡案件だが、生憎と息子は彼しかいない。

 後は見事に女子ばかり。

 嫁に来る予定のバンエル王女は現在15歳そして6歳年上のバンエル王子は21歳未婚。

 まあ俺のアフルレッド時代に比べれば、今は婚姻年齢が上がったので、バンエル王子が21歳で未婚でも問題は無し?

 ロイヤルと来年婚約しても婚姻は最短でも1年後なので17歳を過ぎ、懐妊・出産もバンエル王女にとって比較的安全そうだと思う。

 俺が内心で陛下をロイヤルって呼ぶ癖もそろそろ改めないとなー。

 皇帝に即位しスチュアート4世に成った時は、まだ10歳の少年だったので陛下って呼ぶのは、少し抵抗が在ったのさ。

 じじいも幼少時代に即位して苦労した話とか聞いてたからね。

 基本、王位なんぞはシステムの一部だと思えるように為ると、玉座に居ても少しは気楽なのだが、若い内は難しそうだ。


 枢密院の本命は、オーリア帝国の皇女だったのだが、現在グレタリアンがプロセンと同盟しているのを理由に、オーリア帝国は遠慮した。

 まあっ、今は主導権を取る為、プロセンとオーリアは水面下で争ってる所だし、胡散臭い外交と定評があるグレタリアンを、ややこしい時期に絡ませたく無いと言う、オーリア帝国の防衛措置だろう。

 俺がオーリア帝国の立場でも断ると思う。



 緑藍の婚約は、心を入れ替えたエイム卿が、何とかハンリー王女の瑕疵が無いか、と部下に命じて調べさせている。

 俺に相談した後、エイム卿は凹んでいる場合では無いと立ち上がった。

 あのー、どっちかと言うと、エイム卿が愛する弟の緑藍に、瑕疵が有り捲くりな気がするのだけど。

 『だがジェロームの子は欲しい』

 ボソっと呟いたエイム卿の危険な声を、俺は聞かなかった事にした。



 俺的に緑藍は婚姻が決まっても大丈夫な気はしている。

 『俺って愛が無いとエロい事が出来ないんだよねー』

 そう宣う緑藍は量産型なラブを撒き散らしてる。

 その割にはパトリック氏のような問題を何も起きずに、ラブ売りの美少年をしている。

 でもって俺はエイム卿が知らない所で、緑藍の子供が生まれているって、何となく思っているんだけどね。


 まっ、唯一気に成るとすれば、でっかい栗鼠のワート君かなー。

 俺にはグレタリアン流の暑苦しい友情は理解出来ないが、愛犬が主人を取られて寂しげな目をしていると同情心は湧く。

 ペットを愛護する優しさ位なら俺にもある。

 まあー、探偵事務所でワート君がしょ気ていたら慰めてやろう。

 勿論スキンシップはゼロで。

 だけどまあ、下宿112Bにはクロエがいるし、ソレとなくフォローはして呉れそうだ。





 俺は窓から流れ込んで来た5月の風で、床に散らされた書類を拾う為、俯いていた身体を起こして椅子から立ち上がった。

 えー、実は補佐官ヒューイに頼んで見たんだよ。

 エイム卿を試す為に補佐官ヒューイが緑藍の話をしてみてよって。

 そしたら補佐官ヒューイは呆れた目を俺に向けて言った。


 「ジャックは暇なのですね。其処まで暇なら僕を手伝って下さい。」


 そう言って俺のワークデスクにタイプされた書類が置かれた。

 見せられた報告書はグロリア語で書かれていた。

 読み進める内に俺の胃がシクシクと痛み出した。


 「ヒューイ、コレって外務の案件だよね。此の侭で外相に渡して良いのでは?」

 「表に出せないから僕が纏めてグレタリアン語の報告書にしているんでしょ。僕はアシャッタの方を纏めるので、北グロリアのサリーニャ王国はジャックが遣って下さい。」

 「ええー。」


 補佐官ヒューイは、肩を竦めて呆れ顔を崩さず、そう俺に告げて自分の部屋へと立ち去った。

 もう南セントラルの男爵邸は、エイム卿のオフィス状態だよね、コレって。


 書類に目を落とすと、それはサリーニャ王国の首相ヴァールとモスニア帝国との密約だった。

 ルドア帝国がクルミラ半島へ侵攻する際、サリーニャ王国がモスニア帝国に呼応して攻撃を加える。

 見返りとして、グロリア南北統一で障害に成っているプロセンへの牽制と、デロッセ家へ攻撃を共に加えると言うモノだった。


 はー、ルドア帝国は南下を諦めないな。

 前回トルゴン帝国から分捕った領土では足りなかったのか。

 しかしサリーニャ王国は、レオンハルトが遠征中に落とした後、サリーニャ島は放置していたから其処へサリーニャ家が逃れて北と南に飛び地で存続していた場所だった。

 その後、北グロリアにあった元々の王家は、オーリア帝国と縁戚に成ってたから、北グロリア自体はオーリアの影響力が強く残っている筈だ。

 幾らオーリア帝国から独立したとはいえ。

 サリーニャ王国の統一だけなら兎も角、グロリアの統一はハードルが高いと思う。

 ヨーアン連合会議『国際会議』での議題案件に成りそうだ。


 でも此の密約をサリーニャ王国がモスニア帝国と交わしていると言う事はオーリア帝国にも当然話を通してるって事だよな。

 モスニア帝国とオーリア帝国は友好国だし婚姻同盟も結んでいる。

 つう事は裏でオーリア帝国も動くのか。

 

 まっ、俺の心情的には統一はして欲しいとは思う。

 統一って言うより南グロリアの秩序回復かな。

 緑藍から聞かされたグリーンオブグリーン事件みたいな、犯罪者の輸出をせずに食べて行ける国を目指して欲しい、と俺の勝手な希望を願ってしまう。



 そして俺は纏めた書類を補佐官ヒューイへ渡し、閉じた玄関ホールから扉を開いて、5月の眩い光の中へ出た。

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