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エイム迷走ス  作者: くろ
24/111

ブレスレット


 アリロスト歴1889年  12月




  私が貴族社会と縁が切れてから約5年に成る。

  それ程豊かでも無かった領地で、両親が何とか貴族としての体裁を整えていた頃を思い出すと、経済的にも豊かになったと思う。

  私も働くことに抵抗が無い訳はなく、シーズン中ロンドで会う度に優しかったサマンサさんからの連絡が無かったら、生活の為に誰かと結婚していただろう。


 「シェリーお嬢様のような貴族女性が働く事に成ろうとは。」


 父に仕えていたバトラーが苦悩した表情で私に告げ、溜息を吐いた。

 でも女である私には如何する事も出来なかった。

 まだ働くと選べれるだけ私は幸運だったと思う。


 そして探偵と言う不思議な職業を知り、悲しい事件をジェロームさんに教えられて、本当の被害者である彼女に何かしたくて、「青火花草の企み」と言う本を書き上げた。

 それがジェロームさんの兄であるエイム公爵の目に留まり書籍を出版して貰えた。

 実は私が書かなくてもジェロームさんの事を記したモノであればエイム公爵は本にしたと思う。

 凄い金額を原稿料として支払ってくれたのもエイム公爵だった。


 目付きとか雰囲気はとても怖いと感じるけど、とても感謝をしているのです、怖いですけど。


 そして約2年前にセインさんから「少し問題のある少女の家庭教師を妻アリッサが探している」と話があり、私もジェロームさんと同じ部屋に居るのが個人的な問題で難しかったのでそれを引き受けた。

 でも時々はジェロームさんやサマンサさんやジャックさんと同じ空気に触れていたいので、土日の祝祭日とシーズン中、クリスマス休暇を取る我儘な契約にした。

 ナニーや他の専門教師もいるので了承して貰えました。

 うん、作家デビューしてて良かったです。

 


 そしてどんな問題だろうと私はアリーと会うまでドキドキと緊張していた。

 会えば金の巻き毛の可愛らしい女の子でした。

 当時アリーは7歳だったかな?

 焦って緊張すると少し吃音気味な話し方に成るだけだった。

 アリーの母親バレッタ夫人が神経質に悩んでいるだけのような気もする。

 その所為かどうかは分からないけど、余り話をしない内気な少女なの。

 可愛い女の子なのに勿体ないなー。

 そんなことを私が考えていると「喋らずに喋る方法」ってジャックさんが教えてくれた。

 それが日記。

 アリーが思った事や感じた事を其の侭ノートに記す。

 そしてアリーの承諾を貰って、そのノートに私もアリーの文章を読んで感じたり思った事を書く。

 初めはお互いにたどたどしく固い文章だったけど今では会話するように交換日記を書いている。

 近頃では交換日記を話題の中心に置いてアリーと気楽に話せるようになった。


 今は来年から参加することに成る子供たち同士のお茶会を如何乗り切るかを話し合っている。

 バレッタ夫人とコンパニオンも参加するそうだけど生憎と私は一緒に行けない。

 悩んでいた私は休日に3人に相談した。


 「ミサンガ」と謎の言葉をサマンサさん。

 「「ブレスレット」」そうジェロームさんとジャックさんが声を揃えて答えた。


 「同じようなもんじゃない」

 「いやブレスレットは切れたら駄目でしょう」

 「身に着けていると安心出来る物だとアリーの緊張が和らぐよ」


 そう最後に言ったジャックさんに説明を聞くと、私が居ると安心するなら「ブレスレットにシェリーの代りをして貰う」そう言うのです。

 ジェロームさんが「私の代わりにアリーへプレゼントするブレスレットを買って上げる」と言うのを勿論、私は断りクリスマス休暇に入る前にアリーへとプレゼントしました。

 デイジーを模った銀のブレスレット。

 私にしては頑張って買いました。

 アリーも、ものすごく喜んでくれて、その笑顔を見れて私もとても嬉しくなった。


クリスマス休暇が明ければ、きっとアリーから私宛のノートに山の様なお喋りが綴られているだろう。

 そんなことを考えながら私はマーサの家へとトマスと共に歩いていた。










  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





 「ジェローム久しぶりだな。ワンコ(セイン)は元気?」

 「うげえー、パトも来てたのかよ。」


 俺も恋愛において最低な奴かも、と言う自覚はあるが目の前のパトリック、通称パトには負ける。

 褐色の髪を細い三つ編みにして横に垂らし頭部に沿った半円の帽子に南グロリア共和国のキャメル革の民族衣装を着て、青翠の瞳を妖しく光らせてコニャックを煽っている。

 まあ、此処に居る人間が大抵は怪しいけどな。

 一応は芸術愛好家が集まるミューズ(を愛でる)・クラブ。

 世に出ていない画家が描いた裸婦像を酒の肴に「あーでもないこーでも無い」と、美について語り合う一見健全なミューズ・クラブかもね。


 不定期開催で新たな絵画が入ると会員に招待状が届く。

 実に半年ぶりだったので顔を出して見た。

 「新たな絵画=会員の新たな愛人の裸婦像」鑑賞会。

つう、下らないクラブなのだが、名目は新たな芸術家の発掘と援助だったりする公益性のあるクラブ。

 まあ今まで援助した画家2人がパルスの芸術アカデミー(フロラルス)に招かれたり、ドリード(モスニア)で賞を受賞したりしてるので対外的には実績がある?

 2つとも国外だけどな。

 どうもグレタリアン帝国では面倒な事に芸術コンプレックスがあるみたいで、国外でメジャーにならないと国内で認めて貰え無いのだ。

 その代わりなのかは知れないけど、風刺画がヒットしてて風刺画集などが売れている。


 俺が此処の会員に成ったのも大学で2年先輩だったパトに紹介されたから。

 つか学年が2個上なだけで年はもっと上だと思う。

 知り合った時は既に子持ちだったし、暫くしてパトの身持ちの悪い下半身に、嫁さんが嫌気が差して子供連れて出て行ったと笑いながら話してた。

 ジェロームの中で俺の意識が目覚めても、未だに付き合って居るのは、パトが下半身でしか物事を考えない悪意無き最低野郎でしか無いからかな。

 此の悪意無きつうのが俺には大切なんだ。

 案外俺は悪意に過敏なんだよな。

 ジャックが匂いに無茶苦茶過敏なように。


 つっても男女誰でも良い訳でも無いらしく質が悪いのは難敵に見える相手を落とすのが好きな所。

 俺の場合は難敵に見えたのに緩くて驚いたらしい。

 まあパトにアヘン教えたのは俺らしいから、どっちもどっちなのかもな。

 そしてそこそこに有名な戯曲作家で議員もやってるマルチなハンター。

 小難しい事を言っている様で実は性欲だけという碌で無し。


 本当にさ、相手が落ちる迄パトは一世一代の恋をしている。

 そう落ちる迄だけ。

 全精力傾けて口説く。

 その恋は1日かも知れないし3日も知れない、若しかすると1週間持つかも?

 でもって社交界で有名に成っているのに被害者が後を絶たない。

 戯曲作家とかしている言葉の魔術を使われたら相手も抗えないのかも知れないなー。

 まあ幾度もストーカーと化した貴婦人から刺され掛けてるからその内にヤられると俺は踏んでる。


 一度パトに「その性格で良く婚姻したな」と尋ねたら、元妻から「婚姻しないと付き合えない」そう言われたので婚姻したと答えた。

 口説いてる最中でも2度と婚姻はしないとパトは決心したらしい。

 その後悔は元妻の方がしていると俺は思う。


 俺の意識が覚醒してから余り誘って来なくなっていたのにボソリとパトから誘われた。


 「ジェリー、今夜どうよ。」

 「なんで?」

 「実は同棲相手が自死してさ、当分女は要らんと思って。」

 「はあー、パトが死ねば良かったのにな。お断りだ。」

 「ジェリーは酷いな。」

 「マジで死ねば良いのに。」


 さて、大っぴらに出来ない話。

 会員しか知らないが女も好きだが男も好きだと言う面子の集いでもある。

 あれ程に濃厚接触な男同士の友情が許されているのに同性愛は禁止されているグレタリアン。

 裸婦像を隠れ蓑に密かに会員同士のコンタクトも行われている。

 この流れの系列に2つのクラブが付随している。

 その内の1つが此処より上位クラブに成っている。

 色々と噂だけは俺の耳にも入って来るが実体は不明だ。

 兄は知っているみたいだったが説明はしてくれなかった。

 クロエでは無いが「グレタリアン紳士の闇は深い。」









   ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 アリロスト歴1889年  12月 




 明日はクリスマスと言う事で俺はクロエとシェリーにクリスマスプレゼントを用意して見た。

 ジャックの元へも、もう嫁を届けたと言う知らせが大グレタリアン博物館からあった。

 2人にはジャックが調香したと言うハーブオイルだ。

 清々しい香りで気に入ったのでジャックに頼んでおいたのだ。

 ウェットリバーにあるオーフォールの森に生えているハーブで作ったと嬉しそうに話していた。

 代金を払おうとしたがジャックは受け取らない。

 自分はプロじゃ無いし素材もただなので代金は不要だと言いやがる。

 言いたく無かったが、仕方が無く俺はジャックに話した。


 「クロエとシェリーのクリスマスプレゼントにしたい。だから俺の為に多少の金は受け取れよ。」

 「、、、じゃあプレゼント向けのハーブオイルポットを依頼するからその代金を払ってくれ。」


 届いたソレは濃く深い青とシェリーの髪色に似た赤いガラスの小さな瓶に入っていた。

 名前を指定しなくてもどちらがどの色の瓶をイメージしたのかが一目で解った。

 ホント偶にジャックはセンスが良いんだよな。

 そしてジャックの手紙は、、、。


 「出来た。送る~~~ジャック」


 俺の世話とか掃除とか丁寧で几帳面なのになんで手紙はソレなんだ。

 俺は溜息を吐きクロードが居れたハーブティを口にした。




 そろそろ1階へ降りようかと思って居たらトマスが来客を告げた。

 ジェローム探偵事務所の黒い扉を潜って来たのは、何処かの誰かが肖像画で羽織っていたのに似ていた、艶やかな黒豹の毛皮を羽織ったパトだった。


 「パトー!何しに来やがった。」

 「おいちょう待てジェリー。俺は客だ調査依頼をっ。」

 「お断りだ。」

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