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バレンタインデーからしばらくして久々に会う友人からのチョコ

作者: 光井 雪平

「バレンタインデーでチョコもらった?」


 二年ぶりに会った友人から何の脈絡もなくその質問が飛んでくる。


「いきなりなんだよその質問?」

「いやねチョコパフェって文字見たら、なんとなく気になったの」


 自分の質問の回答になっているのかよくわからない答えが返ってくる。そのよくわからない突拍子もない発想、前と変わらないやつだとこの時さらに思う。


 池澤雪見。俺の中学時代からの友人で、中学一年から高校三年までずっと同じクラスだった腐れ縁とでもいうべき存在。


 別の大学に行くことになり、ようやく離れるのかと思うと少し寂しい気もしたが、二年近く結局ろくに連絡もしなかった。自分からも相手からも。


 先日池澤から、『久々に会わない?』と連絡が来た時には非常に驚いた。その理由も『久々に会ったら楽しそうだと思った』とかよくわからない理由でその驚きも減ったが。


 別に会いたくないとも思わず、むしろ池澤の近況が気になり、会うことにした。


 そして、今休日なのにも関わらずそれほど混んでいないどころか、空席が目立つカフェで話をしていたのだ。


 他愛もない話をした。大学について、最近何で休日をつぶすのかとか色々な他愛ない話。


 そんな話をしていたらまさかのバレンタインデーの話。まあ一週間程前の話ではあるが。


 バレンタインデーのチョコもらったかどうか答えたくないわけでもないので、適当に返す。


「もらってない。大学に女子の友人もほぼいないしな」

「へーそうなんだ」


 自分から聞いといて、どうでもよかったのかと思うほど淡白な反応で、なんだこいつ?と思うが別に怒る気はない。どうせそういうやつだ。ほんとうになんとなく思ってきいただけなんだろう。


「お前は誰か渡したのか?」

「いや、誰にも。だって渡すほどの相手いなくて」

「そうか」


 自分で聞いておきながら淡白な反応だ。別に聞きたいわけでもなかった。ただ聞かれたから聞き返しただけだ。しかし渡す相手がいないのかと思っていると。


「てなわけでお互い初めてのチョコ」


 そういって池澤は俺の目の前にラッピングされた小さな箱を置く。俺が「は?」といって驚いていると。


「遅くなったけどバレンタインデーチョコあげる」

「あ、ありがとう?」


 なんとなくよくわからず疑問形になってしまう。なんで渡してきたのかよくわからなかった。


「久々に会うしさ、中高では絶対あげてたし」


 俺の内心を悟ったのかそう言ってくる。俺は確かにもらっていたなとか思う。


「でさ、お返し楽しみにしてるね」

「ああ、わかった」


 池澤の嬉しそうな顔を見ながら、俺はまた今度会うことになるのかと思う。まあそれは悪い気はしないのだが。


「ねえ、また会ってくれるよね?」


 池澤はさっきと打って変わったどこか不安そうな顔をしながら聞いてくる。


「予定が会えばいつでも会うぞ」


 俺が即座にそう返すと池澤は嬉しさと不安が混ざったような感じで「ほんと?」と聞いてくる。俺は「ここで嘘言うメリットないだろ」というと、池澤はどこかニヤニヤしながら「そっかそうだよね」と言っている。


 前から思うが変なやつだと思う。


 だが、どこか悪い気はしないし、むしろいい気持ちになる。


 久々に会うが、本当に変わらないなと思うのだ。


 池澤も。


 そして、自分自身の感情も・・・


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