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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク四人目
69/255

氷川姉弟共通の敵 ※おまけ話有り

「相手を怪我させることなく、一瞬で戦闘不能にする方法…。フムフム…。」


私はTシャツとスカーチョといった格好で、リビングテーブルの席に腰掛け、食後の紅茶を飲みながら、今日図書室から借りてきた本

『図解!人体の急所』を読みふけっていた。


中1でキックボクシングの習い事をやめて以来、私の右足は、無遠慮に言い寄ってくる男子を振り払う為にしか使っていなかった。


しかし、高校に入って、京ちゃんと再会してから、嘘コクの女子達やその彼氏など敵と相対する機会が増えた。

確実に京ちゃんを守る為に、やり過ぎて相手を傷付け過ぎることなく、最低限の被害で相手を仕留められるよう、勉強し直そうかと役に立ちそうな本を借りてきたのだが、神条先輩に見られてしまった。


あんな争いとは無縁そうな先輩に、私が格闘系に通じてると知られてしまったかと、ちょっと恥ずかしい…。


私が再び顔を赤らめていると、玄関の鍵を開けられる音がした。


「ただいま。うーふぁ、疲れたぁ…。」


ドサドサッ。ドスンッ。


リビングに現れて荷物を放り投げ、ソファーに寝っ転がったのはキックボクシングのジムから帰ったばかりの静くん。


キッチンからお母さんがこちらを覗いて声をかける。


「静くん、お帰りなさい。ご飯とお風呂どっち先するー?」


「メシでっっ!!」


くわっと目を見開き、一瞬元気になる静くん。


「了解〜!5分で出すわね?」

「よろ!」


言うなり、また、ソファーの上にクタッとへたばる静くん。


「静くん、お疲れ。練習キツそうだね。」


「まぁ、試合ももう来週だからな。最後の仕上げをしていかないと。」


「試合京ちゃんも来れるって言ってたよ。

皆で応援行くから、頑張ってね!」


静くんはわずかに頬を緩める。


「そうか。そりゃ有り難いな。美湖も、鷹月師匠も見に来てくれるっていうし、今回は気合入れないとな。」


「鷹月師匠が?遠いのに来てくれるんだぁ。静くん、すごく期待されてるんだね!」


「まぁ、俺の試合もあるけど、お前にも会いたいんじゃないか?」


「私?もう辞めちゃったのに、なんで?」


「鷹月師匠はお前の事今だに気にかけてんだよ。本当はキックボクシングの道に戻って欲しいみたいだぞ?」


「ええ?気持ちは有り難いけど、それはないよぅ。痣だらけになるの、嫌だもん。腹筋割れるし…。」


年頃の女の子として、その選択肢はない!

せっかく、京ちゃんとちょっといい感じになってきてるかもしれないのに、嫌われちゃったら嫌だもん!


「勿体ないな。天はどうしてこんな奴に才能を与えたんだ…。」


静くんにジト目で見られ、私はちょっといたたまれない気持ちになる。


「才能だったら、静くんのがよっぽどあるじゃん。もう同世代の子に並ぶものなしって言われてるんでしょ?お母さんから聞いたよ?今度の試合だって優勝間違いなしって!」


「んな事ねぇって!一人ライバルがいるんだよ。」


「ライバル?」


「ああ。同じ中3で、風道虎太郎ふうどうこたろうっていう体格も技術も俺と同じ位、芽衣子と同じように足技が得意な奴がな。」


「ああ。だから私に練習相手になってくれって言ってたんだ。」


「ああ。ま、流石に芽衣子よりは全然力は劣るんだがな…。」


「え。何言っているの?か弱い女の子相手に!」


静くん、謎に時々姉を持ち上げる(?)発言するな。


「お前をか弱いというなら、ほとんどの人類貧弱すぎて、生きていけんわ!」

「何それ!」


そこまで言ったら、悪口じゃん!


「ま、とにかく。

実力だけなら、相手に負けない自信はあるんだが、風道は最近の試合で、失格スレスレの卑怯な技を使ってくる傾向があって、油断出来ないんだ。

奴の兄弟子で嵐山魁虎あらしやまかいとっていう、素行が悪くてジムを破門された奴ともプライベートでも付き合いがあるらしく、そいつの影響とも言われている。」


「悪い兄弟子さんに影響を受けちゃっている子なんだね。試合で卑怯な手を使うなんて、許せないね。そんな奴に負けないで、静くん。」


私は静くんに向かってムンっと気合を入れるように、ガッツポーズをとった。


「ま、どんな状況だとしても勝つしかないんどけどな!」


「うん、頑張ってね!静くん!」


「芽衣子、静くんにご飯運ぶの手伝って!」

「あ、はーい!」


奥からお母さんの声がかかり、私はキッチンに飛んで行った。

         *

         *


今日のメニュー=大盛りのカツ丼を静くんが一心不乱に口に運ぶ様子を見守りながら、

私はさっき静くんから聞いた名前の一つが気になって首を傾げていた。


嵐山魁虎…。うーん、どこかで聞いたような…?

どこだったっけ…?





*おまけ*


〈倫理 課題発表の授業  1-Dにて〉


先生㋑「え〜、ここでは、ギリシャの哲学者が、肉体を愛する者と魂を愛する者と二つのパターンに分けて、愛について問答をしておる。その続きの問答を考えて皆に発表してもらう事になっとったね。

ほぉい。では、㋮㋱ペア発表どうぞ。」

生徒㋮㋱「「はい。」」


生徒㋮「そうですね。肉体のみ愛する人は、肉体の衰えと共に、すぐ心変わりしてしまうことになりますね。」

生徒㋱「では、魂を愛する者が肉体をも愛するようになるということはあるだろうか。」

生徒㋮「有り得る事だと思われます。そういう場合はどうなるのでしょうか。」

生徒㋱「魂を愛するが故に、より肉体を愛し、肉体を愛するが故に、より魂を愛する事になるだろう。特に愛する人に抱きしめられたときの、あの幸福感、魂の一体感といったら!」

生徒㋮「め、芽衣子?そんなのレジュメにあった?」


ザワつく教室…。


生徒㋱「お互いの肉体の反応により、相手の魂を理解し、惹きつけ合って…!」


生徒㋮「め、芽衣子ちょっとストップ、ストップ!芽衣子、ハウス〜っ!!」


生徒㋮生徒㋱の口を手で塞ぐ。


生徒㋱「ク、クウーン…♡(きょ、京ちゃーん…♡)」


先生㋑「ん、お、お前ら〜、ちょぉっと、後で職員室来い。」


※その後、職員室で担任に肉体の愛について厳しい追求を受ける生徒㋱だったが、生徒㋮が必死に誤解を解き、放免となったとの事…。



*更におまけ話* 神条桃羽 苦悩の選書


図書室にてー。


「あっ。神条先輩、こんにちは。この本返却お願いします。」

「あら、氷川さん、こんにちは。承りましたよ。」


カウンターに座っていた図書委員、神条桃羽は、芽衣子に本を差し出され、にっこりと笑顔で受け取った。


(ホッ。青川太郎の本ですね。矢口くんから勧められたのでしょうか?)


以前芽衣子が『図解!人体の急所』という恐ろしい題名の本を借りた事から、芽衣子と京太郎がハードなSMプレイをしているのかと桃羽は誤解していて、芽衣子が今回は案外普通の小説を借りていた事に、安堵していたのだが…。


「あ、あの、神条先輩…。お願いしたい事があるのですが…。」


「??はい。私に出来る事なら何でもご協力しますが…?」


「で、では、私にピッタリな本を選書して頂けませんか?」


「えっ…||||。」


芽衣子に、思わぬ頼み事をされ、固まる桃羽。


「京先輩に触発されて、私も読書を楽しんでみたいと思ったのですが、普段はあまり本を読まないもので、どの本を読んでいいか分からなくて…。

本の知識の豊富な神条先輩ならいい本を選んで下さるのではないかと思いまして。」


自信無さげに上目遣いでそう言う芽衣子だが、桃羽はガクブルしていた。


「は、はは、はいっ。でで、では、自信はありませんが、氷川さんの好みに合う本を、せ、精一杯選ばせて頂きます。」


「ありがとうございます。(神条先輩、急に震え出してどうしたんだろう??寒いのかな?)」


          *


そして、10分後、桃羽は3冊の本を芽衣子の前に並べた。


「い、命の限り選ばせて頂きましたが、どう…でしょうか?」


「わあっ。あっという間に選書を…!ありがとうございま…。?!」


芽衣子は、礼を言いかけて、本のタイトルを見て凍った。


(『拷問の歴史』『あなたの知らないSMの世界』『ひもの縛り方(拘束編)』?!神条先輩、どうしてこんな恐ろしげな本ばっかり選書したの??|||||||)


「そそ、そうですね…。何というか、どれも刺激的な本で、きょ、興味深いです…。」


顔を引き攣らせながら、それぞれの本のページをパラパラと捲る芽衣子。


(う〜ん。強いてこの中から選ぶには…。あっ。ひもの縛り方の本、人を縛る方法が載っているのは前半の方だけで、後半は、生活で使うひもやリボンの結び方が紹介されている。)


「じゃあ、コレ!『ひもの縛り方(拘束編)』でお願いします!」


「わ、分かりました…!(緊縛プレイに使われるんですね…。)||||」


青褪めながら、桃羽はその本を芽衣子に貸出したのだった。


        ✽


そしてその翌日のお昼ー。


「京先輩♡今日のお弁当と…、これもよかったら、召し上がって下さい!//」


いつものように京太郎に手作りのお弁当と一緒に、可愛くラッピングされた小さな箱を手渡す芽衣子。


「ありがとう。えーと、これは…?」


「昨日家で作ったクッキーです。」


「えっ!クッキー?!芽衣子ちゃんが作ったの?すげー!!ラッピングもめっちゃ可愛い!!う、嬉しい…!!」


初めての女子からの手作りお菓子のプレゼントにテンション爆上がりの京太郎。


「えへへ…。喜んでもらえてよかったです。//リボンのラッピングのやり方は、神条先輩に選書してもらった本を参考にしたんですよ?最初はこの本、本当に私に合っているのかと思いましたが、読んでみたら、すぐに役立って、神条先輩の選書はやっぱりすごいなぁと思いました!」


「そうなんだ…。神条さん、芽衣子ちゃんに必要な本を選書するなんて、相変わらずすごいな…!うん。クッキーサクサクで美味しい。」

「♡!」


桃羽の選書サービスに感心し、頷き合った芽衣子と京太郎は、幸せな時間を過ごしたのだった。


そしてその後、京太郎も返す本があった為、図書室へ一緒に本を返却にしに行くことになった。


「神条さん。この本返却お願いします!」


「神条先輩、ありがとうございました。この本、すっごく役に立ちました!」


「…!」


今日も図書当番だった桃羽は本を返却しに来た京太郎と芽衣子の清々しい笑顔を見て、目を見開き…。


「は、はい。返却承りました。この本が役立ったのならよかったです…。(お二人とも緊縛プレイをお楽しみになられたんですね?)せ、世間がなんと言おうと、私はお二人を応援させて頂きますからねっ…?」


「「??(神条さん、何で笑いながら泣いてるんだろう…。)」」


深い笑みを湛えて血の涙を流している桃羽に、京太郎と芽衣子は首を傾げ

たとか…。






嘘コク4人目の話はこれて終わりです。

今回明確なざまぁはありませんが、めーこちゃんが色んな意味で神条さんを打ちのめした

形にはなっております。

神条さんをどう思われるかによるのですが、

モヤモヤが残ってしまった方がいらっしゃったら、すみませんm(_ _;)m


嘘コク5人目はおそらく、7人の内で一番嫌われるタイプかと。

胸糞悪い展開もありますが、めーこちゃんと

京太郎くんの絆を深める大事な話になりますので、読んでいただけると大変嬉しいです。

今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

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