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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク三人目
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嘘と真実

 

「それにしても、芽衣子ちゃん、今回は結果オーライだったからいいけど、あまり無茶はしないでね?剛原とサッカー勝負するって聞いて、俺も笠原さんも、すごく心配したんだよ?」

「うんうん。全くそーだぞぉ?芽衣子!」


 俺も笠原さんも芽衣子ちゃんを怖い顔で睨んだ。


「えっ。ふ、二人共ごめんなさい。剛田先輩、あんまりひどい事言うから、頭に血が登ってしまって…。その…。」


 申し訳なさそうにこちらを見てくる芽衣子ちゃんに、俺は思い当たる事を言ってやった。


「どうせ、奴の事だから、俺がカースト底辺の陰キャのクズだとか何とか悪口でも言ってたんだろ?」


「な、何故それを…!」


「笠原さんに聞いた。」

「ハーイ。私言いました。」


「マキちゃん、言わないでよぉ。京先輩、嫌な思いするから、知らせたくなかったのに…。」

「そうは言っても、芽衣子の一大事だったんだよ?」

 笠原さんが唇を尖らしている。


「芽衣子ちゃん。俺は人から、悪口言われるのなんて日常茶飯事なんだから、そんなの気にしないよ!

 それよりも、俺の為に、知らないところで、芽衣子ちゃんが危険な事をされる方が堪える。もう、こういう事はしないでね?」


「は、はい…。京先輩、ごめんなさい…。

 もうしません…。」


 少し厳しめに言い聞かせるように言うと、芽衣子ちゃんは、飼い主に叱られた子犬のようにしょんぼり肩を落とした。


 でも、俺の悪口言われて、怒ってくれた事は純粋に嬉しかったし、さっき、剛原がぶっ飛ばされてるの見たとき、正直、ちょっとスカッとしちゃったんだけどね。


 俯いている芽衣子ちゃんの頭を撫でてあげたい衝動に耐えていると…。


「?!笠原さん?」

「ふにゃっ?」

 ふいに、笠原さんが俺の手を掴んで芽衣子ちゃんの頭の上にポンッと置いた。


 笠原さんはいたずらっぽい笑顔を浮かべて俺を見上げた。


「ま、芽衣子も反省しているようですので、許してやって下さい。叱った後は、愛情をたっぷり与えてあげるのが、マキちゃん流のしつけでして。矢口先輩にも伝授します。

 ホラ、撫でて撫でて!」


「えっ…とぉ…。」

「…!!♡♡♡?」


 途端に頬を赤らめて期待に満ちた目でこちらを見てくる芽衣子ちゃんの頭を、戸惑いながら撫でてあげると芽衣子ちゃんは気持ちよさそうに、目を閉じた。


「クゥーン、クゥーン…。」


「ううっ。よかったね。芽衣子。マキちゃんは忙しくてしばらく構ってやれなくなるけど、矢口先輩にたんと可愛がってもらうんだぞ?」


「クウゥーン!」


 涙ながらに語る笠原さんに答えるように吠えるワンワン(芽衣子ちゃん)。


 動物の感動ドキュメンタリーかよ?


 しかし、芽衣子ちゃんの茶色い髪、少しヒンヤリして、サラサラで柔らかくて、やっぱりメチャメチャ触り心地よかった…。


 ヤバい。癖になりそうだ…。

 俺、髪フェチの変態かよ…?


 俺はいたたまれず、嬉しそうな芽衣子ちゃんから視線を逸らした。


 *

 *

 *


 笠原さんは、あれから遅れて部活のミーティングへ行き、俺と芽衣子ちゃんは、屋上でお昼をとることにした。


「京先輩。嘘コクデートのときと言い、今日と言い、度々ご迷惑おかけしてすみません。つまらないものですが、気持ちだけは沢山詰まっていますので、よかったら、食べてください。」


 芽衣子ちゃんは、深々とお辞儀をしながら、俺に青いナプキンに包まれたお弁当を差し出して来た。


「お、おう…。迷惑とかは気にしなくていいけど、お弁当はありがたく頂くよ。ありがとう…。」


 美少女からのお弁当(二回目)を卒業証書みたく、厳かに両手で受け取る俺。


「あと、これ、あさりの味噌汁です。」

「おっ、汁物まで!ありがとう!」


 芽衣子ちゃんはにっこり笑って、前回野菜スープを入れていた、保温スープジャーを俺に手渡した。


 お昼に温かい汁物食べられるのって贅沢でいいよな。

 しかも、俺の一番好きなあさりの味噌汁とは…、ポイント高っ!


 前回のお弁当はサンドイッチだったが、今回は、和風らしい。


 青いナプキンを紐解くと、中から、卵焼き、鮭の塩焼き、きんぴらごぼう、など、俺の好物のおかず、ご飯が入ったお弁当が出てきた。


「メッチャ美味そう…!」


「エヘヘ。気に入ってもらえました?

 今回は、鮭を焼くのと、ご飯の飾りは私がやったんですよ?」


 嬉しそうにそう言う芽衣子ちゃんの言葉に、ご飯部分を見てみると、でんぶで何かの形になっている事に気付いた。


「芽衣子ちゃん、コレ…!」


 芽衣子ちゃんは頬をでんぶのようなピンク色に染めている。


「また、桃の形にしてくれたんだね?」


 でんぶで桃の形、よく見ると、小さく切ったさやえんどうで桃の葉まで作っている。


「はい!京先輩が好きだって言って下さってたので。桃の形を型どった“桃弁“にしてみました。」


 芽衣子ちゃんは満面の笑みを浮かべた。


「嬉しいよ。ありがとう!芽衣子ちゃんも桃弁にしたの?」


「いいえ。私のは、こんな感じですよ?」


 芽衣子ちゃんは、自分の弁当を俺に見せてきた。


 おかずは俺のと一緒だが、ご飯の上には、パンダや、猫、ゾウなど、動物の形の海苔が散らしてある。


「わぁ、動物の海苔、可愛いね。」


「エヘヘ。動物の形を型どった、お弁当だから、略して“ドブ弁”です。」


「うん。無理に略さなくていいかな。」


 さり気にダメ出ししてやると、芽衣子ちゃんは残念そうに舌を出した。


「駄目でしたか…。」


「芽衣子ちゃん、動物好きなの?」


 芽衣子ちゃんは嬉しそうに頷いた。


「ハイ、割と好きです。○山動物園の年間パスポート持ってますし、文具とかポーチとか、動物系のグッズ結構持ってますよ?」


「ああ〜、それで、いつも動物のパンツ穿いてたんだぁ!」


 思わず、手をポンと叩いて納得してしまった。


「…京先輩?」

 失言に気付いたのは、芽衣子ちゃんの凍るような眼差しを見たときだった。


 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…!

 何故俺は言わなくていい事を言ってしまったんだぁ!?

 冷や汗を背中にダラダラとかいた。


「わ、私のパンツ、見たん…ですか?いつもって何…?私そんなにいつもパンツ見せてたって事ぉ…!?」


 驚愕の事実を知った芽衣子ちゃんは青くなった。


 俺はその場に土下座で謝り、洗いざらい吐いてしまった。


「ご、ごめん。わざとじゃないんだ!

 芽衣子ちゃんが転んだ時とか、体操してる時、シュートを打ってる時とか、猫や、ハリネズミ、パンダの柄がチラッと見えた程度で、そんなにじっくり見た訳では…!」


 そう必死に言い訳したが、火に油を注ぐ結果になった。


「えええ!そんなに見せてたの?最初見られたクマさんと合わせると、もう少しで私の動物パンツシリーズ全てコンプリートする勢いじゃないですか!」


 芽衣子ちゃんの青い顔はみるみる間に真っ赤になっていった。


「いや、その芽衣子ちゃん…。本当にごめ…」


「うっわあぁ〜ん!!痴女でごめんなさあぁいっっ!!!」


 芽衣子ちゃんは自分のお弁当と水筒を引っ掴むと泣きながら、屋上の出口に逃げていった。

「あっ!め、芽衣子ちゃん、俺のお弁当箱どうしたら…。」


 ドオン!!


 俺の弱々しい呟きは、重いドアの閉まる音にかき消された。


 あ〜もう!俺って奴は、本当にどうして余計なところで正直さを発揮してしまうのか…!


 俺は深い悔恨のため息をついた。


 嘘をつく事だけでなく、場合によっては、真実を話す事で、信用を失い、気まずくなってしまうこともある。


 難しいもんだ…。


 明日からまたぼっち飯かな…。

 ま、元から芽衣子ちゃんみたいなS級美少女が俺なんかに絡んでいた今までがおかしかったんだよな。矢口京太郎よ、分かってた事だろう?


 泣きそうになりながら、そう自分に言い聞かせていた時、再び屋上の扉が開き、芽衣子ちゃんが両手で赤い顔を隠しつつ姿を見せた。


「芽衣子ちゃん…?」


「あのっ、今は恥ずかしくて顔を合わせられないのですがっ!下校までには頑張って立ち直りますので、か、帰りは出来れば一緒に帰りたいですっ!!いい…です…か?」


「お、おう…?いい…よ…?」


 俺は目を瞬かせつつ返事をした。


「あ、ありがとうございます!で、ではっ。お弁当箱はその時に!アディオスです!」


 ガチャン!


 そう言うが早いか、屋上の扉はまた厳かに閉まった。


 …………。


 えーと、つまりどういう事かというと…。


 後で許してくれるって事…だよな?


 俺は、頬を緩めながら、甘いでんぶごはんを口いっぱいに頬張った。


動物パンツを晒していた事が恥ずかしくて、顔を合わせられないものの、

少しでも京太郎くんの近くにいたくて、実は

屋上の内扉の近くでお弁当を食べていためーこちゃんでありましたとさ…(*´ω`*)


ちなみに、めーこちゃんの動物パンツは全部で5種類。

最後の柄がなんだったのかは、読者の皆様のご想像にお任せします…♡


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