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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク三人目
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再びの剛原

 

「芽衣子ぉ!これから、また、屋上で矢口先輩とお昼かぁ?ラブラブだなぁ!こいつぅ、羨ましいぞ?コノコノ!」

「わあぁ!痛いよぅ。マキちゃん、やめてよぅ。」


 お昼休み、教室で、二つのお弁当を入れた手提げを準備していた私は、突然背後からマキちゃんに肩を抱かれ、拳で脇腹をグリグリされて悲鳴を上げた。


「それに、ラブラブとか全然まだまだ程遠いんだから!」


「ええ?先週は嘘コクミッションとはいえ、デートまでして、今日は手作りのお弁当食べてもらうんでしょ?傍から見たら、どう見ても、二人付き合ってるっしょ?」


 マキちゃんは目を丸くした。


「そのデートがミッションとしても、デートとしても、大失敗だったんだよぅ!や、私はも、死んでもいいってくらい幸せだったんだけどね?

 とにかく、京ちゃんの信頼度を下げてしまったので、今日は贖罪のお弁当!

 今は私の気持ちを押し付けるんじゃなくて、地道に京ちゃんに信頼してもらえるように努力しようと決めたの!」


 私は気合いを入れるように、両手拳にむんっと力を入れた。


「ふーん。君達相変わらずまだるっこしいんだな。まぁ、芽衣子らしいけどね?自分の信じた道を突き進み給えよ?」


 マキちゃんはニヤニヤしながら、背中をポンポン叩いてきた。


「もー、面白がってぇ…。で、マキちゃんは、これからバスケ部の集まり?」


「そうそう。ミーティングがあるんだって。部活入ると何かと忙しくなるよね。」


「そっかー。なんか、マキちゃんを柳沢先輩にとられちゃったみたいで、寂しいよぅ…。」


「何言ってるんだよ?芽衣子には矢口先輩がいるじゃんか!それに、柳沢先輩?あの人優しそうな顔して、部活ではマジ鬼!練習とか親身になって付き合ってくれんのはいいけどさ。しごかれて、体筋肉痛でバッキバキだわ〜。」


「そうなんだ!意外だな…。」


 鬼のような形相で、マキちゃんをしごいている柳沢先輩…。ちょっと思い浮かばないなぁ。


「じゃあ、そろそろ行くね?」


「あっ、うん。マキちゃん、部活頑張って…。」


 と、言いかけたところで、マキちゃんの目の前に長身の男子生徒が現れた。

 うわ。もう、来ないでって言ったのに…!

 私はその人が視界に入った途端、げんなりした気分になった。


「ん?やぁ、こんにちは。芽衣子さんのフレンドかな?君も可愛いね?サッカー部のマネージャーやらないかい?」


 自信満々な笑顔を浮かべているのは、剛田先輩だった。


「あ。もう運動部入ってるんで、結構です!」


 笑顔でサクッと断るマキちゃん。


「そうかい。残念だな。芽衣子さんと二人でマネージャーすれば、楽しいかと思ったのに。」


 いや、私もマネージャーやらないって言ってるよね?

 剛田さんの話を聞かないっぷりには呆れるばかりだった。


「では、芽衣子さん。そろそろ意地を張らないで、届けを出しに行こうか?おっと、婚姻届じゃないぜ?サッカー部の顧問にマネージャーの届けを出すって意味だぜ?仔猫ちゃん?」


「はぁ!?」


 うっ。気持ち悪い!!ホント無理!!!

 私は背中がゾワッとなり、鳥肌がたった。


「芽衣子!ダメだ!気持ちは分かるが、公衆の面前だぞ?」

 無意識に右足が構えてしまっていたらしく、

 マキちゃんが止めてくれた。


 クラスの人達が興味津々で私達の様子を見ている。


 駄目だ、冷静に対処しなければ…!

 冷静に…。


「もしかして、そのお弁当、また矢口とかいうフツメンに作ってきたの?」


 剛田先輩は机の上に用意してあった、手提げに入ったお弁当を見て眉を顰めた。


「!あなたには関係ありません!」

 私はお弁当箱を入れた手提げを庇うように胸に引き寄せた。


「いい加減目を覚ました方がいい。あんな矢口なんて、フツメンで何の取り柄もない陰キャのカースト最下位のクズカスじゃないか!」


 プチン!私の中で何かが弾ける音がした。


「君に相応しいのは、俺のような…。」

「剛田先輩!!」


 それ以上の不快な発言を遮るように、私は大声を出した。


 驚いたように目を見開いている剛田先輩に向かって、私はニッコリ笑いかけた。


「もう来ないでって言われてるのにぃー、そんなに何度もお誘いしてくれるなんて、剛田せんぱいってー、随分根性のある方なんですねぇ?そんなに言うなら、私と、せんぱいの得意なサッカーで勝負しませんかぁ?せんぱいが勝ったら、わたしぃ、マネージャーになってもいいですよぉ?ただし、負けたら、もう二度と誘いに来ないで下さいね?」


「おおっ。芽衣子さん、俺の魅力にやっと気付いたか?素直にマネージャーになるのが恥ずかしいからって勝負で決めるなんて。いいよ。君の気持ちを汲んでやろうじゃないか。ただし、俺が勝ったら、そのお弁当も頂いていいかな?」


 剛田先輩は私が抱えているお弁当を指差し、ウインクした。


「いいですよぉ?」


 私はこめかみに血管が浮き出るのを感じながら、作り笑いを浮かべた。


「め、芽衣子…?」


 心配そうなマキちゃんに私は笑顔で頷いた。


「大丈夫だよ。マキちゃん。これ、暴力じゃないから!スポーツの勝負だから!」


「芽衣子、やばいよ、目が据わってるよぉ…!」


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