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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク三人目

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許す理由、許さない理由

 

 喫茶店から出た俺達は、デートに行く義弟さんカップルとそこで別れる事になった。


 別れ際、義弟さんから声をかけられた。


「矢口さん…でしたよね?本当に今日は、お騒がせして、迷惑かけてすいませんでした。」


「いや、気にしなくていいよ。彼女さんと仲直り出来てよかったね。」


 飄々としている印象の義弟さんに礼儀正しく謝られ、俺は少し驚いてしまった。


「はい。義姉の事よろしくお願いします。

 一応、こんなポンコツでも家族だし、義姉には幸せになってもらいたいという気持ちもあるんですが…、」


「静くん…!」

 感動したように、手を組み合わせる芽衣子ちゃんだったが…。


「でも、命の危険があったらすぐ逃げて下さいね?何か義姉から被害があったら、連絡下さい。」

「ええ!?」

 義弟さんは、神妙な顔で連絡先のメモを俺に渡してきた。

「何を言ってんの、静くんは!私を何だと思っているの?!」

 芽衣子ちゃんはプリプリ怒っている。


「あと、うまいラーメン屋あったら、教えて下さい。毎々軒美味しかったっす。」

 そう言うと義弟さんはいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「!」


『氷川静司 ☓☓☓ー☓☓☓☓ー☓☓☓☓』


 連絡先のメモと義弟さんを交互に見ながら、俺も自然と笑みが浮かんだ。


「ああ。この辺何軒か美味しい店あるから、また連絡するよ。静司くん。」

「あざっす!」


 そうして、腕を組み寄り添う静司くんと新庄さんに手を振り、その後ろ姿を見送った。


「なんだか、芽衣子ちゃんも、二人の仲を取り持つ当て馬役みたいになっちゃったね…。」


 思わず感じたことを言ってしまうと、芽衣子ちゃんは苦笑いしながら、頷いた。


「確かに…!私のせいで、二人の仲が壊れてしまったらどうしよう?姉弟の仲もこれで終わりかと焦りました。

 新庄さんの誤解が解けて本当によかったです。ありがとう。京先輩…!」


 お礼を言われ、俺は目を丸くした。


「俺、何もやってないよ?」


「そんな事ありません。京先輩が喫茶店に移動するよう助言してくれたから、落ち着いて話し合うことができましたし、京先輩が隣にいてくれたから、新庄さんは誤解だって分かってくれたんです。」


「いやいや、そんなの誰でも出来ることで、むしろ、俺なんか力不足…。」


「そんな事ないんですってば!京先輩がいてくれるだけで、その場の空気が柔らかくなります。すごい人なんです。あなたは!あのマイペースな静くんでさえ、京先輩の事を慕って連絡先を渡していたじゃないですか。私、ビックリしたもの。」


「え。静司くん、普段からフレンドリーな子に見えたけど。」

「いやいや、大抵の人には無愛想ですよ。初対面の人に自分から連絡先を渡すなんて私の見る限り初めてですよ。」


「そうなの?」


「ええ。余程、京先輩の事を気に入ったんですね。」


「そうだったなら、なんか嬉しいな…。」


 別れ際に笑っていた静司くんを思い浮かべ、口元を緩めると、芽衣子ちゃんが何故か頬を膨らませた。


「(むーっ。ちょっとジェラシー…!)」


 それにしても、この子はどうしていつも俺のことをそんなに買ってくれるんだろうか?


「芽衣子ちゃん、ちょっと帰り、歩きながら話そうか…。」

「は、はいっ。」

 俺の呼びかけに、芽衣子ちゃんは真剣なものを感じたのか、表情を固くして、一緒に歩き出した。


「芽衣子ちゃん、喫茶店で、新庄さんの前で、俺の事凄く褒めてくれたよね?あれは嘘?俺の事を想っているフリをした方が誤解を解きやすいから?」


 芽衣子ちゃんはキョトンとした。


「え。いや、あれは、単純に新庄さんが

 京先輩が魅力的な人だって誰が見ても分かる事を、分かってなかったから腹が立っちゃって教えてあげただけですよ?」


 そうだよな。そんな事を聞かれるのが、不思議と言わんばかりに、君は当たり前みたいにそう言うんだよな?

 でもね、芽衣子ちゃん。

 俺は一般的には何の取り柄もないフツメンで、リア充男子にいじられたり、女子にからかれるのが関の山の、カースト底辺の陰キャなんだぜ?

 そんな事を言ってくれるのは君だけなんだよ。

 乾いてひび割れた大地に水が染み通っていくような嬉しさと共に、同時に怖さも感じてしまうんだ…。


「今日、芽衣子ちゃんは俺に嘘の設定を話して、嘘コクデートをしたよね?」


「は、はいっ。」


 芽衣子ちゃんは、いよいよ身を固くした。


「正直に言ってくれれば、俺、義弟さんと一緒にその設定で演技したのに。なんで、わざわざ彼氏がいるって嘘をついたの?」


 芽衣子ちゃんは、青い顔で頭を下げた。


「きょ、京先輩。ごめんなさい…。本当にその通りだと思います。嘘コクのミッションの事を考えたときには、できるだけその設定に近付けなければと思ってしまって…。よく考えれば、こんな事で嘘をついたら、京先輩の信頼を失ってしまう事分かっていた筈なのに…。私、間違っていました…。本当にごめんなさい。京先輩。」


 まぁ、嘘の目的のために、俺を付き合わせたという点では細井美葡も、芽衣子ちゃんも同じなんだよな…。


 俯く芽衣子ちゃんに俺は厳しく伝えた。


「もう、こういう嘘コクのミッションは、しない方がいいね。」


「!!きょ、京先輩…!!」


 絶望的な表情で目を見開く芽衣子ちゃんを見て、胸が痛んだが、ここは心を鬼にすべきところだ。


「これからは、もう…。」

「……っ!!!!」

 俺から最後通牒を突き付けられるのを耐えるように、芽衣子ちゃんはギュッと目を瞑った。


 俺は震えているポニーテールの頭にポンと軽く触れた。


「他の人を巻き込むミッションはやめよ?俺はいくらでも付き合ってあげるからさ。」


「へっ?」

 芽衣子ちゃんはぽかんとした顔で目を瞬かせた。

「きょ、京先輩?な、なんで?許してくれる…の…?嘘コクミッション続けても…いいの?」


「だって、しょうがないじゃん。最初に会ったとき、そう約束しちゃったし。嘘コクのパートナーなら、最後まで付き合ってやらないと。

 芽衣子ちゃんは、人生かける程好きなんでしょ?嘘コクが。」


「!!」


 芽衣子ちゃんは見開いた大きな目からポロポロ涙を零した。


「はい。好きですっ…。大好きなんですっ!京先輩に迷惑かけるって分かってるのに。私、どうしても、どうしてもっ…諦められないんです…。ひぐっ…。京先輩、ごめんなさい。本当にごめんなさいっ…。」


 泣きながら、俺に何度も謝った。


「もう、いいよ。その代わり、嘘コクの設定は初めに全部教えといてね?こういう当て馬とかはもーやめとこ?」


「はいっ。はいぃっ。嘘コクは好きですが、当て馬のミッションだけはもう懲り懲りです…。懐も寒くなりましたし…。」


「一応聞いとくけど、菱山のストーカーは仕込みじゃないんだよな?」


「違います!あれはただのハプニングです!本物のストーカーさんです。」


「そっか。じゃ、帰り家まで送るよ。」


「え。」

 固まる芽衣子ちゃんに慌てて付け足した。


「あ、や、家の前とかじゃなくても、近くまでってこと、一人で帰るの怖いかなと思ってさ。」


「あっ、ありがとうございます。

 別に京先輩を警戒してるワケじゃないんですよ?今日は嘘ついて、振り回した上迷惑かけて、申し訳ないなと思っただけで。

 京先輩がいいなら、ぜひ送ってもらっていいですか?()()()まで。」


 まだ泣いた跡の残る赤い目で、芽衣子ちゃんは、この上なく嬉しそうに笑った。

 その笑顔は雨上がりの後、現れた太陽のように眩しく輝いていた。


「お、おう…。」



 細井美匍と似たような事をされたのに、

 芽衣子ちゃんに、全く腹が立たず、許してしまったのは何故だったのか?  


 芽衣子ちゃんが、普段から礼儀正しくて、人に対する思いやりをちゃんと持ってる子だからとか、俺に対して悪意があるわけじゃなかったからとか、理由は色々挙げられる。


 でも、大きな理由ではないにせよ、芽衣子ちゃんのポニーテールとワンピース姿が可愛かったからとか、小さな手が柔らかくって温かかったからとか、色々あったけど今日の嘘コクデートが楽しかったからとか、そんな不純な理由もほんのちょっぴり小指の先程はあるような気がした。


 あんだけ、女の子に騙されてて、煩悩を完全に捨てる事ができないとは。

 俺も本当にまだまだだな…。


 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


「芽衣子ちゃん、ちょっと帰り、歩きながら話そうか…。」

「は、はいっ。」


 京ちゃんの呼びかけに、不穏な響きを感じとった私は、表情を固くして、一緒に歩き出した。


「芽衣子ちゃん、喫茶店で、新庄さんの前で、俺の事凄く褒めてくれたよね?あれは嘘?俺の事を想っているフリをした方が誤解を解きやすいから?」


 私は最初、何のことを言われているのか分からなかった。

 喫茶店で私が新庄さんの前で京ちゃんへの想い(性癖)をぶちまけちゃった事かな?

 新庄さんの誤解を解くために、意図的にやったかって?


「え。いや、あれは、単純に新庄さんが、京先輩が魅力的な人だって誰が見ても分かる事を、分かってなかったから腹が立っちゃって教えてあげただけですよ?」


 正直にそう言うと、京ちゃんは警戒するような表情のまま、俯いて黙ってしまった。


 京ちゃん、なんでそんな事聞くの?


 私が言った事を本当かどうか疑っているの?


 彼氏がいるなんて嘘をついたから、もう私の言うことを全部信じられなくなってしまったの?


 京ちゃんに、彼氏とうまくいくといいねと言われたときよりも、もっと強く、私の胸は痛んだ。


「今日、芽衣子ちゃんは俺に嘘の設定を話して、嘘コクデートをしたよね?」


「は、はいっ。」


 更なる京ちゃんの追求に、私は身を縮めて返事をした。


「正直に言ってくれれば、俺、義弟さんと一緒にその設定で演技したのに。なんで、わざわざ彼氏がいるって嘘をついたの?」


 私は京ちゃんに必死に頭を下げて謝るしかなかった。


「きょ、京先輩。ごめんなさい…。本当にその通りだと思います。嘘コクのミッションの事を考えたときには、できるだけその設定に近付けなければと思ってしまって…。よく考えれば、こんな事で嘘をついたら、京先輩の信頼を失ってしまう事分かっていた筈なのに…。私、間違っていました…。本当にごめんなさい。京先輩。」


 そもそも、嘘コクミッションの目的は京ちゃんの過去のトラウマを払い、癒やすことだった筈なのに、嘘コクの設定に近付けるために

 更に嘘をついて京ちゃんを傷付けたら、本末転倒だ。

 もっとよく考えれば分かった事なのに…!

 初めてのデートに浮かれて見失ってしまっていたんだ。自分の欲望を優先してしまった。

 バカだ!!私、取り返しのつかない事をしてしまった…!


 これじゃ、細井先輩のやった事と変わらないじゃない…!


 激しい後悔に俯く私に京ちゃんは厳しく告げた。


「もう、こういう嘘コクのミッションは、しない方がいいね。」


「!!きょ、京先輩…!!」


 私は京ちゃんとの唯一の繋がりが断たれる言葉を絶望的な気持ちで聞いた。

 自業自得だ…!だけど…、受け入れるにはあまりにも胸が痛すぎて死んでしまいそうだった。


「これからは、もう…。」

「……っ!!!!」

 京ちゃんから最後通牒を突き付けられるのを耐えるために、私はギュッと目を瞑り、歯を食いしばった。


 次の瞬間、降ってきたのは、冷たい絶縁宣言の言葉…ではなく、ふいに頭に感じた大きな手の感触と、同じぐらい優しくて温かい言葉だった。


「他の人を巻き込むミッションはやめよ?俺はいくらでも付き合ってあげるからさ。」


「へっ?」

 私はぽかんとして目を瞬かせた。

 目の前には、いつもの京ちゃんの困ったような優しい笑顔があった。


「きょ、京先輩?な、なんで?許してくれる…の…?嘘コクミッション続けても…いいの?」


「だって、しょうがないじゃん。最初に会ったとき、そう約束しちゃったし。嘘コクのパートナーなら、最後まで付き合ってやらないと。

 芽衣子ちゃんは、人生かける程好きなんでしょ?嘘コクが。」


「!!」


 京ちゃん…!!

 私は想いが溢れて、目から面白いように涙がポロポロ零れた。


「はい。好きですっ…。大好きなんですっ!京先輩に迷惑かけるって分かってるのに。私、どうしても、どうしてもっ…諦められないんです…。」


 京ちゃん。京ちゃん…!

 あなたが好きです!!


 京ちゃんの心の傷を癒やしてあげたい!

 京ちゃんを傷付けるもの全てを薙ぎ払って、

 守ってあげたい!!


 時に暴走してしまう恋心と、京ちゃんを大事に思う気持ちが、せめぎ合って心がシクシク痛かった。


 それでも、ごめんなさい…。

 私はこの想いを捨てる事ができないんです。


 もう間違えないから、歪な形で側にいる事を

 もう少しだけ許して下さい…。


「ひぐっ…。京先輩、ごめんなさい。本当にごめんなさいっ…。」


 泣きながら、京ちゃんに何度も謝った。



今回、色々と悪手を打って、やらかしてしまっためーこちゃんですが、彼女もまだ幼いですのでね…(^_^;)

そうしたいという気持ちはあれども、

自分の気持ちを抑えて、相手の為に尽くすというのは、なかなか難しいところがあります。

失敗から学んで、段々いい女になっていく予定ですので、見捨てないで頂けると嬉しいです。


京太郎くんは、7回の嘘コクの事もあり、家庭環境もあり、かなり潔癖で、女性に対して清純さと高潔さを求める傾向にあります。


嘘コクの女の子達に毅然とした態度をとるのはいいのですが、真に自分を思ってくれる相手には少し寛容であって欲しいと思い、

今回はやらかしためーこちゃんを許す形になりました。


まだまだ未熟な二人ですが、成長していく様子を温かい目で見守って下さると有り難いです。

今後もよろしくお願いしますm(_ _)m


次回はお待ちかね(?)剛原再登場です。


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