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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク三人目
42/255

茶髪美少女はゲーセンに行きたい

 

『あん?何、馬鹿芽衣子?』


 発信音が5回程鳴ったあと、電話をかけた相手が面倒くさそうな声で出た。


「何じゃないよっ、静くんっ!今どこにいるの?今日は彼氏役として、後を付けてきてくれるようにお願いしてたでしょっ?」


『キンキンした声出すなよ?ちょっと出るの遅くなったけど、ちゃんと後を付けてるぜ?言われたラーメン屋にも、ちゃんと来てるし、芽衣子の割にはなかなかいい店知って…

「はい。お兄ちゃん、追加のチャーハンお待ちどうさま!」あ、あざーす!』


 静くんが、毎々軒の奥さんらしき人とやり取りする声が聞こえた。


「もう、とっくにその店は出てるよぅっ!

 ちゃんとL○NEに送ったタイムスケジュール見て!何、呑気にチャーハンまで追加してるの?」


『何だよ?もらった資金をどう使おうが俺の勝手だろ?』


「そういうのは、ちゃんと、任務を果たしてからにしなさいよぅ!こっちは、ストーカーの人を静くんだと思ってて、メッチャビックリしたんだからね?」


『知らねーよ、そんなの。芽衣子をストーカーするなんて、物好きで、命知らずな奴がいたもんだな?そいつに彼氏役頼めば良かったんじゃねーの?』


「やだよ!本気にされたらどうするの?気持ち悪いし!」


『面倒くせーなー。ハフッ。』


「とにかく、次のスポットは駅前のゲーセンだからね?必ず来てね?来ないと、先払いしたお金没収だからね?」


『ハイハイ、行けたら行くって。ムグッ。ったくたりーな…。ブツッ。』


「あっ、こら、静くん!?」


 静くんは電話を一方的に切った。

 私は通話の切れたスマホを片手に持ち、大きなため息をついた。


 ダメだ、あの子ったらマイペース過ぎる…!

 行けたら行くって、ほぼ来ないときの断り文句じゃん…。


 静くんに頼み事するなんて、諭吉さんと樋口さんドブに捨てたようなもんだったわ。

 もう、後で、諭吉さんだけでも回収してやる…!


 仕方ない…。京ちゃんには、結局止めてもくれず、連絡も来なかったから、彼との仲は自然消滅になりましたと、ご報告することにしよう。


 なんだか、自作自演感強いけど…。

 いや、静くんに頼んだとしてもそれは同じなんだけどね。


 もう、この後は単純に京ちゃんとのデートを楽しむ事にしよう。

 ゲームあまり上手じゃないけど、京ちゃんの好きなゲーム一緒にできたらいいな。


 あと、プリクラ…とか一緒に撮りたいなぁ。


 京ちゃんの写真、小さい頃の一枚(しかも破れたのを修復したもの)しか持ってないから、今の京ちゃんと撮れたら最高に幸せだなぁ!


 京ちゃんを騙して嘘コクデートしているにも関わらず、当初の目的を忘れすっかり舞い上がってしまっていた私だった…。



 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


「あっ。京先輩〜。」


 女子トイレから出て来た芽衣子ちゃんが、

 近くで心配しながら待機していた俺に手を振ってきた。


「芽衣子ちゃん。大丈夫そう…かな?」


「はい。待ってて頂いてありがとうございました。もう大丈夫です。」


 まだ笑顔に少し元気がなさそうだが、顔色は戻っており、さっきよりは大分回復したようだ。


「それならよかった。じゃ、帰ろうか?」

「ええー!??」


 ニッコリ笑ってそういうと、芽衣子ちゃんはポニーテールの髪を逆立ててビックリしていた。器用だな…。


「なな、なんでですか?ゲーセン行こうって言ってたじゃないですか?」


「いや、こんな怖い思いした後だし、もう嘘コクデートどころじゃないだろ?家まで送るから、今日はもう帰ろ?」


 そう諭すように説得したが、芽衣子ちゃんは半泣きで首を横に振った。


「嫌ですぅ!あんな事くらい大丈夫ですよ。私は今日の嘘コクデートに人生をかけているんです!このまま帰るのは嫌!」


「芽衣子ちゃん…。」

 また、人生かけるとか、重いこと言って…。


 しかし、涙まで目にためている芽衣子ちゃんの様子はあながち大げさに言ってる感じでもなさそうだった。


 まぁ、今日の嘘コクデートで、彼氏さんとの仲がどうなるかが決まるとなれば、途中で止めたくないというのも分からなくはないんだが…。


 でも、万一菱山が気を変えて、戻ってきたとしたら、誰でも出入りできるゲーセンて、危なくないか?

 俺に迷いが生じていると…。


「ぐすっ。京先輩と一緒に、ゲーセンでプリクラ撮れるかもって楽しみにしてたんだもん…。帰るのやだ…!」


 ??


 涙をポロッと零しながら、唇を噛み締めている芽衣子ちゃんに、俺は問いかけた。


「え?彼氏さんを待っているから帰りたくないんじゃないの?」


「え?違いますよ?あの人はもうほぼ来ないと思いますし…。」


 キョトンとして、芽衣子ちゃんは見返してくる。その様子はやけにあっさりしていて、彼氏さんが来なかろうが特にショックではなさそうだった。


 んん?彼氏さんにもう未練はないって事か?


「じゃ、芽衣子ちゃん。ゲーセンでプリクラだけ撮ったら、すぐ帰るでもいいかい?」


 芽衣子ちゃんは瞬間顔を輝かせてポニーテールの髪を大きく揺らして頷いた。


「はいっ!」


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