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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク三人目
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彼氏との仲を取り戻すための当て馬にしろ?

 

 毎々軒を出たあと、俺と芽衣子ちゃんは、目的地のゲームセンターに向かって並んで歩いていた。

 が…、なんだろう?

 芽衣子ちゃんとの間にさっきより少し距離があるような…。

 当然手も繋いでいない。


 何か、俺、怒らせるような事言ったかな?

 もしかして、ラーメン屋に連れてったの良くなかったのか?

 源さんに結構いじられちゃってたし、疲れさせちゃったかもしれないな。


「芽衣子ちゃん、ラーメン屋に付き合わせちゃってごめんね?」


「いえ、とんでもない。ラーメンすごく美味しかったし、店長さんや奥さんも良い方で、楽しかったです。素敵なスポットを紹介して頂いて、ありがとうございました。」


 芽衣子ちゃんは満面の笑顔でお礼をいってくれた。

 ホッ。よかった。どうやら、怒ったりしていたワケではないらしい。


「そう言ってもらえると、連れてきたかいがあったよ。」


「私、ちょっとは京先輩のお友達の代わりになれたかな?」


「えっ。いや、お友達の代わりっていうより…。」


 芽衣子ちゃんを連れて入ったときの、店長の様子を思い出した。

 いつものラーメン屋が別空間になってたよ。


 友達を連れて来てたら、ああはならなかっただろうよ。


「ダメでしたかぁ…。」

 しゅんと肩を落とした芽衣子ちゃんに慌てて

 言う。


「いやいや、友達と来たときとはまた違ったの雰囲気で、楽しかったって事!」


「ホントですか?良かったぁ!私もすごく楽しかったですよ?」


 芽衣子ちゃんはぱぁっと笑顔になる様子は、まるで、飼い主に褒められて、喜んでいる小型犬のようだった。


 距離があるように感じられたのは、俺の気のせいだったかな?


「芽衣子ちゃんはゲーセンって、行ったことある?」


「んー、マキちゃんとプリクラ何回か撮りに行ったぐらいですかね。ゲームの方はあんまり…。私、あんまり手先が得意でなくって、すぐゲームオーバーになっちゃうんですよね。あっ。でも、モリオカートは好きです。なんか、景色とかも綺麗で本当に運転してる気分になれるから!」


「あっ、うん、分かる!俺もモリオカート好き!」


 好きなゲームの名前を挙げられ、つい芽衣子ちゃんに近寄ってしまうと…。


「そ、それ以上近付いてはダメです!」


 厳しい声でそう言うと、芽衣子ちゃんはササッと俺から遠ざかった。


 ガーン!!ショックでけー…。

 やっぱ気のせいじゃなかった…!


「め、芽衣子ちゃん、やっぱり俺、なんかやっちゃった…?」


 肩を落として恐る恐る聞いてみると、芽衣子ちゃんはびっくりして首をブンブン横に振った。


「違います、違います!そうじゃなくて、私、その、口臭がするのではないかと…。さっきラーメン食べたから…。」


「えっ?」


 芽衣子ちゃんは、赤い顔で、両手で口元を覆い、ゴニョゴニョ言った。


「その、一応ブレスケアのタブレットを一個口にしたんですが、京先輩に不快な思いをさせたらと、気になってしまって…」


「何だぁ。そんな事か。大丈夫だよ。芽衣子ちゃんのラーメンニンニク少なめだったし、大体俺だって同じもの食べてるんだから、少し位匂いしたって気にしないよ。

 あっ、でも、俺の方が臭うかもだから、逆に芽衣子ちゃんの方に不快な思いさせちゃうかも。やっぱ、離れてようか。」


「あっ、いえ。そんな事ありません!私も気にしませんけど…。うーんと、じゃ、じゃあ、一回お互いの匂いを嗅ぎ合ってみて、大丈夫だったら、距離を縮めて歩くことにしませんか?私も本当は手を繋ぎたいですし。」


 うん?今さり気に、芽衣子ちゃん手を繋ぎたいとか言ったか?

 俺は動揺を隠せないまま、芽衣子ちゃんの意見に同意した。


「あ、ああ。いいよ。だけど、俺の方がリスク高いけどいいの?ラーメンのニンニクの量も違うし、芽衣子ちゃんブレスケアしてるし。」


「んー、じゃ、ちょっぴりリスク減らしましょうか。京先輩。手出して下さい。」


「?」


 手の平を広げて差し出すと、芽衣子ちゃんはショルダーバックから取り出したミントタブレットを2つそこへ置いた。


「私は一つしか食べてないから、これでちょっとはフェアになったでしょ?」


 芽衣子ちゃんはニマッといたずらっぽい笑みを浮かべた。

 *

 *

 *



「では、京先輩、お互い背中合わせに立ちましょう。3.2.1で振り向いてお互い近付いて10秒…、いや30秒お互いの匂いを嗅ぎます。いいですね…?」


 芽衣子ちゃんは何故か悲壮な表情でルールを説明した。右手はピストルの形にしている。


「??あ、ああ、いいよ。」


 何故背中合わせになる必要が…?

 とは思ったがなんだか本人楽しそうなのに水を差すようで止められなかった。


 俺と芽衣子ちゃんは、近くの公園の金網側に寄り、背中合わせに立った。


「3、2、1…!」


 振り向いた先には目の前に、目を閉じた、S級美少女の顔があった。


「えっ!芽衣子ちゃん、何で目閉じて…!?」

 なまらびっくりして、声を上げてしまった。


「嗅覚に集中出来るよう目を閉じてるんです。もう少し京先輩近付いて下さい。」


「ええ?こ、このぐらいか?」


 俺は芽衣子ちゃんの顔が至近距離になるまで近付いた。


 うおぅ、髪からはシャンプーの花のような香り、口元からはかすかにミントの香り、あと全体的に女の子特有の甘い、いい匂いがしてきた。

 ニンニクの匂いなんて全くしない。


「はい。じゃ、このまま30秒嗅ぎ合いましょう。あ、京先輩の匂いがする…。」


 目の前の芽衣子ちゃんは目を閉じたまま、かすかに頬を染め、トロンとした表情になっている。

 桜色の唇は僅かに開いている。

 ヤバイ。ハッキリ言って、めちゃめちゃ色っぽい…!


 何考えてんだ、芽衣子ちゃん。無防備過ぎるだろ?俺が良からぬ事考える奴だったら、どうなると思ってるんだ?


「京先輩の事は信用していますから…。」


 俺の心を読んだかのように、芽衣子ちゃんは告げてきた。


 ぐっ、信頼が重い…!!


 目の前の(傍から見たらキス待ち顔の)美少女の匂いを30秒嗅ぐ…。


 一体何の耐久試験なんだ…!?


 俺は目の前の誘惑に必死に耐えながら、数を数え始めた。


 1、2、3、4、5、…10、11、12…


 数えている途中で、後ろから誰かに肩を掴まれた。


「こんな道の往来で、無理矢理キスを迫るなんて、なんて破廉恥なやつだ!彼女から離れろ!」


 振り向くと、サングラスにジャケット姿の長身の男が、怒り心頭の様子で、俺を睨みつけていた。


 もしかして、こいつが、芽衣子ちゃんの…!


「君は、芽衣子ちゃんの彼氏…か…?」


「そうだ!芽衣子さんと、運命の赤い糸で繋がれた菱山健だ!」


 菱山と名乗る男はサングラスを外して、こちらに挑むような視線を向けた。


 その素顔は俳優のように綺麗な顔立ちだった。


 そっか。芽衣子ちゃんにはこんなに、イケメンで背の高い彼氏がいたのか…。


 自分に関心ないなんて、言ってたけど、ちゃんと止めに来てくれたじゃん。


 芽衣子ちゃん、よかったな…。

 いささか淋しさを感じながら、隣の芽衣子ちゃんを見遣ったが…。


「だ、誰…!?」


 芽衣子ちゃんはその男を見るなり、片手で口元を覆い、青ざめていた。

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