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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク三人目
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嘘コクデートの舞台裏

 

「ぶほっ。はぁ?バカ芽衣子何言ってんだ?お前正気か?マジ、キモい!無理!!」


 リビングのソファーに、私と向き合って座っていた弟の静くんは、飲んでいた牛乳を吹きながら、そう叫んだ。


 まぁね、そう言われると思ってたよ…。

 普段から、口の悪い静くんだが、今回ばかりはキモいと言われても、無理ないことだと思う。


 ()()()()()()()()()()()()()()()なんて、確かに嫌だよね。


 いくら義理とはいえ、私達は姉弟。小4から家族として過ごしてきた私達にはお互いを異性として意識する事すら不可能。


 恋人の真似事をするなんて、生理的な嫌悪すら感じてしまう静くんの気持ちは分かる。


 だけど、もう私にはこれしか方法がないんだ…!

 京ちゃんとの3番目の嘘コクミッション、それは『彼氏との仲を取り戻す為の当て馬役にする』という何とも難易度の高い内容だった。


 京ちゃん命の私にとって、他の男子には一切興味もなく、今まで関わりもなかった。

(外見だけ見て、言い寄ってくる男子はいたが、全てお断りさせて頂き、しつこい方や手荒な方には失礼ながら、少々手を…、いや右足を出させて頂いた。)

 当然、彼氏役を頼める男子なんておらず、いたとしても、例え、フリでも京ちゃん以外の男子と触れ合うなんて嫌だった。


 そうなると、年頃の男子で私がそんな話を頼めるのは、弟の静くんぐらいしかいなかったのだ。


 嫌がられるのは、承知の上!どんな手を使ってでも、静くんにこの件を了承させてみせる!

 私は静くんに再びの説得を試みた。


「静くん。試合の前だから、姉さん張り切って練習相手になってあげたんだよ?優しいお姉さんが可愛い弟の頼みを聞いてあげたのに、静くんはお姉さんの頼み聞いてくれないのかな?」


「お前、それで妙に協力的だったのか。汚ねーぞ!!どこが優しいんだよ?アホ芽衣子!!」


 眉間に皺を寄せて、罵倒してくる静くんに、私はニッコリ笑った。


「それに、姉さん、知ってるんだ。最近、静くん彼女できたよね?」


「な、何故それを…?」


 彼にしては珍しく狼狽していた。


 数日前、静くんの部屋の前を通りがかった時、普段の静くんからは想像もつかないくらいに甘い声で電話していたのを偶然漏れ聞いてしまった事があったのだ。


 いつも以上に試合前に練習を張り切っているのも、きっと彼女が出来たことと無関係ではないだろう。


 彼女が出来た静くんに至急必要なもの、それは…!


「デートとかで、先立つもの…いるんじゃない?じゃじゃん!」


 私は、手に隠し持っていた諭吉さんを静くんの目の前にかざした。


「ただとは言いません。一日だけ私に協力してくれるなら、この諭吉さんを静くんに進呈します。」


「くっ…。お前は本当に汚い女だな。」


「何とでも言って。愛と嘘コクに挟まれて、切羽詰まった私にはもうこれしか方法がないの…。お願い、静くん…!」


 私は昼ドラのヒロインのように切ない顔で訴えかけた。


「何を言ってんだお前は?…くそっ。分かったよ!ただし、必要経費は別にもらうからな

 ?」

 静くんは私から諭吉さんを乱暴に奪いとった。

「OK!ありがとう、静くん!」


 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇

 あれから、静くんと、京ちゃんの予定を聞き、嘘コクデートは今週の土曜日決行予定となった。


 静くんには私と京ちゃんの嘘コクデートの大体のスケジュールと場所を伝え、私と京ちゃんのデートを尾行し、程よいタイミングで彼氏役として出てきて、他の男(京ちゃん)とデートしている私に愛想を尽かし、振ってもらうという手筈になっている。

 静くんが、後々弟とバレるとマズイので、サングラスとかつらで多少変装してもらうことにした。

(静くんの知り合い(特に彼女さん)に万が一にも見つからないために、この変装は必須といえた)


 これで、嘘コクミッションの条件は最低限クリアできるが、他の男子とイチャイチャしていたふしだらな女子とは京ちゃんに絶対思われたくない。

 そんな風に思われたら、先々私を恋愛対象として見てくれる可能性もなくなってしまうだろう。


 京ちゃんには、彼氏(偽)について、親同士が仲の良い幼なじみで、何となく近い距離の人がいて、高校に入ってから疎遠になり、

 はっきりしない関係を精算したいという設定を伝えた。


 休みの日に面倒事に付き合ってもらう事になってしまう京ちゃんに、少しでもメリットがあるように、行く場所は京ちゃんに決めてもらう事にした。

 最近お友達と疎遠になってしまい、ラーメン屋とかゲーセンとか行ってないと言っていたから、そこへ行けたらいいのではないかな。


 京ちゃんに嘘をつくのは胸が痛むけれど、

このミッションを叶え、かつ京ちゃんとの未来を閉ざさないためには私にはもうこれ以上思いつかなかった。


 そして何より、このミッションをやるメリット、それは…!

 京ちゃんとデートが出来る!!


 休みにも京ちゃんに会うことが出来る。

(しかも二人きり!)

 京ちゃんの私服が見れる。

 京ちゃんと色んなデートスポットを回れる。

 も、もしかしたら、手とか繋いじゃったり

 出来るのかな…?


 考えただけで、鼻血が出そうだった…!!


 この嘘コクミッションで、


 京ちゃんは、私をお友達の代わりにしてラーメン屋やゲーセンなど行きたいスポットに行ける!


 静くんは、彼女とデートする資金を得る!


 私は京ちゃんとデートが出来て幸せ!


 皆ウィンウィンで完璧な計画!!


 私は早く土曜日が来ないかと待ち切れない思いだった。


 まだこの時の私は知らなかった。


 完璧と思われた計画は脆くも破綻して、塵のように崩れ去る事をー。




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