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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク八人目
253/255

誕生日編② 越えられない一線


「ね、矢口!あたし、あんたのチェリー卒業させてあげよっか?」

「な、何言っているんだ??触んなよっ。」


「?!!||||」


 芽衣子は京太郎の肩をポンポン触って迫っている地味そうな黒髪女子に叫んだ。


「そ、そこのあなた!その汚らわしい手を京ちゃんからどけなさい!!」


「め、めーこ!」 

「げっ。氷川芽衣子…!」


 京太郎とその黒髪女子が振り返り、目を見開くと、芽衣子は京太郎を庇うように前に立ち、黒髪女子の前に立ちはだかった。


「京ちゃんのチェリーは私が既に予約済みですっ!!今更どこの馬の骨ともしれない女子なんかお呼びではありませんっ!!」


「め、めーこ…!(予約済みって…。///)」

「おー、怖っ!そんなんだから、矢口、あんたに手を出せないんじゃないの?相変わらず、あんた達が童貞、処女を拗らせてて隙があるから、声をかけてやったのよ。」


 芽衣子の言葉に照れる京太郎に、勢いよく言い返してくる黒髪女子。


「?! 相変わらずって、あなたは一体誰なんですか?」


「分からないの?あたしは、あんたがサッカーボールでズタボロにした剛原翔の元カノ、細井美葡よ!」


「えっ!あの細井先輩?!」

「ああ。俺も勉強していたら突然話しかけられて、驚いたんだが、どうやらそうらしい。大分外見変わったよな…。」


 黒髪女子の正体に芽衣子が驚き、振り返ると、京太郎もまだ衝撃覚めやらぬ様子で頷いた。


 嘘コク三人目で、かつて京太郎と芽衣子に迷惑をかけた細井美葡だが、染めた髪に派手な化粧にネール。制服を着崩したギャルっぽい外見だった彼女が、今は、ほぼすっぴんに黒髪のひっつめ髪とすっかり地味な外見に変わっていた。


「まぁね。あたしも翔くんと別れてから、将来の事考えて真面目に勉強する事にしたの!

 地味で真面目なタイプの男も悪くないかなと思って、矢口にも声かけてあげたんだけど、反応悪いし…。

 やっぱり、お子ちゃまで陰キャの矢口にはこのあたしの魅力は分からな…」


「それ以上京ちゃんの悪口言ってご覧なさい。ただではおきませんよ。」

「…!||||」

 本気の目で右足を構える芽衣子にひゅっと息を飲む細井美葡。


「10秒数える間に失せなさい。今度私と京ちゃんの前に顔を出した時が、細井先輩の命運の尽きる時です。

 10…9…」

「ひいぃっ。暴力女っ。ちょっとからかってやっただけだもん。頼まれてもあんた達には二度と近付かないわようっ!!」


 細井美葡はバタバタと図書室から去って行った。


「ふうっ。全く、細井先輩、油断も隙もない!嘘コク女子の中で、一番関わりが薄かったくせに、今更、京ちゃんの魅力に気付いてアプローチして来ても遅いんだから!」


 ぷりぷり怒っている芽衣子の肩をポンと叩く京太郎。


「まぁまぁ、めーこ。俺は、細井だろうと誰だろうと、他の女子に靡く事はないから!」


「京ちゃん…。でも、京ちゃんは魅力的だから口説かれる場面を見るだけで、不安だよぉ。これからは、家で勉強しない?」


「そ、それはできない…。」

「どうして…?今まで、ずっと勉強も作品作りも家でやってたのに…。私、何かしちゃった…?」


 苦しげに眉根を寄せる京太郎に、芽衣子は泣きそうな顔で聞くと…。


「分かった。めーこ、ちゃんと話をしよう。」


 京太郎は神妙な表情で芽衣子にそう言ったのだった。


 そして、その後、喫茶店で向かい合う二人。


 芽衣子は目に涙をためている。


「ひぐっ…。この流れ…、まさか別れ話じゃっ…。家にも行きたくないって言うし…。」

「ち、違う違う!別れ話なんかじゃないから、めーこ泣くなって!」


「ギロッ。お客様、コーヒー…お持ちしました。」

「あっ。ありがとうございます!」


 コーヒーを給仕しに来た店員に白い目で見られる中、京太郎は必死に芽衣子の誤解を解いた。


「そうじゃなくて、むしろ、最近、芽衣子が可愛い過ぎて、俺も、ホラ、男だから家で二人きりだと、その…欲望を抑えるのキツイ時があって…。///

 それで家に行くのやめた方がいいんじゃないかって思ったんだよ。」


「え。か、可愛過ぎるなんて…♡欲望って…、キス以上の事とか?////」


「そ、そう…だよっ。////」


 二人は真っ赤な顔で確認し合った。


「わ、私は、その…構わないよ?京ちゃん?」

「へっ。」


「(反嘘コク同盟として)付き合い始めてから、大分経つし…、清い交際を誓った白瀬先輩も、もう卒業して迷惑をかける事はないし、そろそろいいんじゃないかと思ってた。京ちゃんが望んでくれるなら、私はいつでも…。////」


「め。めーこ…!!////」


 赤い顔でチラリとこちらを見上げる芽衣子に、心臓がバクバクいい始める京太郎。


 しかし、同時に脳裏に、京介と母の姿が思い浮かんでしまった。


「めーこ、その気持ちは有り難いけど、やっぱりダメだ!」


「えっ。」


「京介おじさんが甲斐性がないせいで、若くして俺を生んだ母さんが苦労して来たのをずっと見て来た。

 めーこにあんな思いはさせたくない。


 少なくとも、お互いに18になるまでは少しでも妊娠する可能性のある行為はしちゃいけないと思う。」


「じゅっ、18…まで!?そんなに?」


「ああ…。めーこを大事にしたいんだ。分かってくれるよな?」


「う、うん…。わ、分かったよ…。京ちゃん…。」


 芽衣子は、ショックを受け、モヤモヤした気持ちを抱えながらも頷いたのだった。


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