「8回目の嘘コク」クリスマス編 《前編》
文化祭も定期テストも終わり、忙しさが一段落した11月半ば…。
「あっ。英語の辞書忘れちったな。めーこ、机の上にあるあの辞書、借りてもいいか?」
「あ、うん。もちろん。」
「ありがとう。…あれ?」
休日、芽衣子の家で一緒に予習していた京太郎は、机の上の辞書を借りようとして、
近くに、小さなおもちゃの指輪が置いてある事に気付く。
「めーこ。この指輪って…。」
「ああ。その指輪、京ちゃんが前にくれたものだよ?エヘヘ。今でも私の宝物なんだよ?///」
「え?俺が…? そ、そうだっけ…??」
照れながら答える芽衣子に首を捻る京太郎。
「えーっ。京ちゃん。覚えてないのっ!?」
京太郎の発言にショックを受ける芽衣子。
「う、うん。ごめん…。いつ頃の話かな?」
頭を掻きながら聞いてくる京太郎に必死に説明する芽衣子。
「ホ、ホラ!秋頃に、京ちゃんが私にこの指輪をプレゼントをしてくれた事があったでしょ?
私ったら、せっかくもらった指輪を、誤って落としてしまって…。」
「ああ!そう言えば、落ちたおもちゃを探してめーこ、ドブに突っ込んで行っちゃって、二人で探した事あったな!」
「う、うん…//まぁ、ドブに入っていった事は出来たら忘れて欲しいけど…。
そう…!あの時見つけた指輪がそれなんだよ?」
ドブに嵌まった自分を思い出されたのは恥ずかしいが、京太郎に思い出してもらえてホッとする芽衣子。
「あれ、指輪だったのかぁ…(泥だらけでよく分かってなかった…。)」
「ええ?京ちゃんが、くれたのに、中身わかってなかったの?」
「う、うん…。実は母さんが、会社でもらったおもちゃの景品が女の子向けで、
めーこにあげるように言われて、そのままあげたものだったんだ。」
「あ〜そうだったのかぁ…。あの時は京ちゃんにプロポーズされたのかと思って、舞い上がっちゃったよぅ…。」
「そうだったのか。ご、ごめん。めーこ…。(めーこの事、おもちゃの為に突然ドブに飛び込むちょっと面白い子みたく思ってしまっていた。俺が想いを込めてあげた指輪だと思ったから、必死に探していたのか…。)」
残念そうに苦笑いする芽衣子に、過去のめーこの思い切りのよい行動ににやっと合点がいき、謝る京太郎。
「ふふっ。いいよ。あの時、京ちゃんは私を妹のように思っていてくれてたんだもんね?
あの時京ちゃんに1番近い女の子だったから、この指輪をもらえたんだろうし、私にとっては大事な指輪だよ。
もう指が大きくなってはめられなくなったけど、これからも、この指輪はずっと、私の宝物だよ?」
「めーこ…。」
指輪を手のひらで包んで大事そうに胸に抱える芽衣子をいじらしく思う京太郎。
(昔の俺は、本当に何も考えていないガキで、めーこの想いにも気付いてやれなかったな…。それなのに、めーこはずっと俺にもらった指輪を大事にしていてくれたのか…。
過去はどうしようもないが、想いの通じ合っている今、俺がめーこにしてあげられる事があるはずだ…。
よしっ!もうすぐクリスマスだし、いつも尽くしてくれるめーこに、ちゃんと身に付けられるアクセサリーをプレゼントしよう。)
と固く決意した京太郎。
「めーこ。クリスマスイブの日って空いてる?」
「えっ。//う、うん…。24時間空いてる…けど…?」
「じゃあ、もし良かったら、外で食事にでも行かないか?」
「…!!!(京ちゃんからクリスマスデートのお誘い✧✧)い、行くっ!行きます!!ワフンワフン!!」
京太郎の誘いをぴょんぴょん飛び跳ねて、喜んで受ける芽衣子だった。
*
*
「え?めーこの好みそうなアクセ?サプライズでクリスマスにプレゼント?」
「ああ。笠原さんなら、めーこの事に詳しいかと思って…。」
2−D教室にて、休み時間に芽衣子の親友である笠原真希子を呼び出し、芽衣子にプレゼントするアクセサリーについて、相談する京太郎。
「アクセサリーの種類とか形とか、ブランド名とか、めーこの好みそうなものがあるなら、教えて欲しいんだけど…。」
「ああ。それで、わざわざ、リサリサ先輩経由で、呼び出されたんですね?
何事かと思いましたよ。」
「そうなの。矢口、サプライズでアクサあげたいけど、センスないから相談したいって。」
「そ、そうなんだ。俺、アクセサリーについてのセンスは皆無だからさ…。」
呼び出された理由に納得した真希子に、その場にも同席していた柳沢梨沙と、京太郎が頷いた。
「確かに男子目線の贈り物って女子のポイント外れてる事多いけど、芽衣子なら、矢口先輩のくれたものなら、何でも大喜びで受け取ってくれそうですけどね?」
「ね〜。私もそう思うけどな…。」
真希子と梨沙はそう言ったが…。
「けど、俺の選んだものを身に着けて、めーこが変に思われたらと思うと…。」
深刻そうな表情の京太郎を見て、二人は顔を見合わせた。
「ありゃりゃ…。」
「これは、大分自信がないみたいだね…。」
※以前、ギャルゲー「どきどきメモリアル」のヒロインキャラに、ダサイ星型のネックレスを贈って、好感度を下げてしまった事のある京太郎は、女性にアクセサリーを贈る事がトラウマになってしまっていたのだった。
「う〜ん。じゃあ、一応私の知る限りの芽衣子の好みをお伝えしますね?
普段の私服は、特にブランドとかこだわりなく、そこそこプチプラのシンプルで女の子らしいカッコが多いかな?色は白とか青、ピンクとかパステルカラー系が多いですね。
アクセサリーはあんまり着けてるの見た事ないけど、たまにお母さんの銀の鎖だけのネックレス借りてるって言ってたかな?
インパクトの強すぎるものはあんまり好みじゃないと思いますよ?」
「そうだね。芽衣子ちゃんのイメージから言って、シンプルで可愛くてどんな服にも合いそうなアクセサリーがいいんじゃないかな?」
「ふむふむ…。ブランドにこだわりなし。白、青、パステル系の色に合うもので、シンプルで可愛い。」
真希子と梨沙の意見を一生懸命手帳に書き留める京太郎。
「けど、この条件に合うアクセサリー無限にありそうじゃないかな?」
「「確かに…。」」
京太郎に言われ、苦笑いする二人。
「私達が芽衣子のプレゼント選ぶのに、付き合ってあげてもいいんですが…。||||」
「なんか、いらぬ誤解を招くといけないよね…。||||」
慌てん坊のサンタクロース(サンタ姿の芽衣子)に浮気と誤解されて、辺り一面血の海になる光景を思い浮かべ、身震いする真希子と梨沙…。
「あっ。じゃあ、こういうのはどうかな…?」
梨沙は他の二人にヒソヒソとある事を提案し…。
「リサリサ先輩、ナイス!それ、いいんじゃないですか?」
「ああ…。いい案だと思う!」
真希子も京太郎も笑顔で親指を立てたのだった…。
✽あとがき✽
読んで下さり、ありがとうございます!
明日投稿予定の後編もよろしくお願いしますm(_ _)m