文化祭編⑬ 8番目の団体
文化祭のステージイベントの8番目の団体を狙っている不審者がいるかもしれず、風紀委員に協力する為、京介おじの突然の提案でステージに参加する事になった京太郎と芽衣子。
ステージ衣装に身を包み、出し物の打ち合わせ&練習をするため、京介と共に移動していた。
(ちなみに、凪叔父は、自分の持っていたギターを京介おじに貸すため、自宅に取りに行ってくれていた。)
『はあっ?!今から文化祭のステージに飛び入り参加する事になったぁ?
あなた達、午後も部活の方に参加できないってどういう事ぉっっ?
劇の参加といい、あなた達部活を軽んじ過ぎじゃないっ?』
「す、すまん!上月。放ってはおけない深刻な事情が出来てしまって…。」
「ご、ごめんなさい!上月先輩…。」
読書同好会部長上月彩梅に電話報告し
たところ、上月に怒鳴られ、縮こまる京太郎と、芽衣子。
「ステージ終了の、3時にはそっちに戻れると思うから…。」
『もうっ。しょうがないわねっ!3時には必ず戻りなさいよねっ。あと、どうせ出るなら部誌の宣伝よろしくねっ!』
「「は、はいっ!」」
声を揃えて返事をしたところで、上月への通話は途切れていた。
「今の、部活の部長さんかい?なんだか
えらく厳しい子なんだなぁ…?」
上月の怒鳴り声は、電話から離れた京介の方まで聞こえており、苦笑いしながら、京太郎と芽衣子に話しけるも…。
「勝手にあんな事提案するおじさんのせいだろ?しかも、練習する時間なくってほとんどぶっつけ本番じゃねーか!ステージで大コケしても知らねーからな!」
「衣装は、演劇部の人に借りられたからよかったけど、肝心のダンスの方がね…。リズムに合わせて動くの不得意なんだよな…。」
文句を言う京太郎と不安げな芽衣子に京介は、ニッと笑い親指を立てた。
「大丈夫!文化祭の出し物なんだから、基本笑顔とノリでなんとかなるって!二人に、俺が心配なくなるおまじないの呪文を唱えてやろう!」
「はあぁ?」
怪訝な顔をする京太郎に構わず、京介は、芽衣子に近付いていく。
「まずは、芽衣子ちゃんに…。」
「…!」
「あっ。コラ!!」
「(ヒソヒソ…。)」
「…!!!え、えぇ〜っ…!!////」
京介にひそひそ話をされ、真っ赤になり、顔を手で覆う芽衣子に心配になる京太郎。
「お、おい!何言ったんだよ!めーこ、セクハラな事言われてねーか?」
「う、ううん…。それは大丈夫…だけど…。きょ、京ちゃんが嫌じゃなきゃ…. 頑張っちゃおうかなっ…?///」
「ん??」
赤い顔で、チラチラッとこちらを見てくる芽衣子に首を傾げていると…。
「次は京太郎だっ。」
「な、何だよっ!」
京介が今度は京太郎へ近付き…。
「(京太郎、安心しろ。舞台の上では俺が、お前達を守る!
不審者が出たら、俺が立ち向かうから、お前は芽衣子ちゃんと逃げろ!いいな?)」
「…!!」
驚いて目を見開く京太郎に、京介は更に真剣な表情を向けて来た。
「今まで、お前には何もしてやれなかった。一度でいいから、親らしい事にさせてくれ!なっ?頼むよっ。」
「おじ…さん…。」
京太郎は、そんなおじに何と言っていいか分からず、芽衣子はそんな二人を見守り、更に決意を固める。
(よく分からないけど、二人共、少しだけ関係改善できそうかな?
よぉし!ステージ上では、私が二人を守る!!)
✽
その後、間もなく文化祭のステージが始まり、何かあった時の為に、風紀委員と共に袖に待機する芽衣子と京太郎。
「みんなぁぁーっっ!!今日はどうもありがと〜っっ!!」
わああぁっ!!
「うわぁ…!皆すごい盛り上がってる…!!ううっ。なんか、緊張するねっ。京ちゃんっ。」
「ああ。こんな事でもなければ、ステージに上がることなんてまずないからな…。」
袖から覗く団体のパフォーマンスと、会場の熱気に圧倒されて固まっている二人の隣で、風紀委員長の白瀬柑菜がインカムで風紀委員らしき誰かと会話をしていた。
「ああ。どうし…。え、彼女が…!?馬??うん…、うん…分かった。情報ありがとう!」
会話を終えると、柑菜は深刻な表情で、二人に話しかけて来た。
「矢口少年、芽衣子嬢。
今、姫華から連絡があってな。例の手紙を出した奴と関係のありそうな不審者が目撃されているようなんだ。サングラスをかけた、ツインテールに紺のセーラー服の、秋川…。」
「「秋川(先輩)っ!?」」
目を剥く二人に、ふるふると首を振る柑菜。
「いや。秋川ではないんだが、不審者は彼女とすごくよく似た背格好の奴らしい。
秋川自身も今、文化祭に来ているらしいんだが、(言っている意味はよく分からないが)馬として、友達と共に生徒指導室へ捕獲されている。
秋川とその友達の証言を統合すると、
「8回目の恨みを忘れるな!」と女子トイレで呟いている不審者と秋川がぶつかり、サングラスが彼女のものとすり替わったまま、秋川の友達が秋川と勘違いして不審者を追いかけると、裏庭当たりで見失ってしまったらしい。」
「??え、えっと、何て…??途中、秋川先輩が馬として捕獲され…のあたりから、意味が分からなくてついて行けなくなってしまったんですが…。京ちゃん、分かる?」
「ま、まぁ、その辺はよく分からないが、秋川は相変わらずお騒がせな奴だけど、今回の件には関係ない。けど、不審者は、秋川とよく似たツインテールにセーラー服、サングラスをかけた奴という事かな?」
「その通りだよ、矢口少年!私でも混乱する状況を分かり易く説明してくれて感謝する!」
「な、なるほど、京ちゃん、すごい!
不審者は、秋川先輩じゃないけど、秋川先輩によく似た人なんだね?
サングラスにセーラー服の秋川先輩っぽい人に注意すればいいって事かな?」
「ああ。まぁ、相手も他の人に姿を見られているから、警戒して服装等を変えて来るかもしれないが、一つこちらに有利な事がある。
彼女は近眼で、強い度の入った自分のサングラスを度の入っていない秋川のものとすり替えてしまっている。
つまり、何か仕出かすにしても、よく見えない状態で成さなければならないという事だ。」
「それなら、動きも鈍いでしょうし、確かにこちらに有利ですね。」
「分かりました!秋川さんぽい動きの鈍い人がいて、危険な事をして来そうだったら、すぐにぶっ飛ばせばいいんですねっ?」
柑菜と京太郎の発言を受けて、明るい笑顔でそう言う芽衣子。
「ま、まぁ、風紀委員も全員配置しているが、いざという時は、殺さない程度にな…?」
苦笑いで芽衣子に窘める柑菜であった…。
✽
そして、いよいよ、京介&京太郎&芽衣子がステージに上がる時がやっで来た。
「ミックスキャラメルナッツさん&推しノッコさんの合同ライブありがとうございましたぁっ!
では、最後、8番目!!8番目の団体はぁっ!
「ダブル京ちゃんLOVE→めーこ☆彡」さんです!
「キャー!LOVE→めーこなんて照れちゃう!///」
「おい…!もう少し、団体名なんとかならなかったのか?」
団体登録の手続きは京介が行った為、団体名をこの時始めて知り、恥ずかしそうな芽衣子と、怒る京太郎。
「いいじゃねーか。分かりやすいし、インパクトあるし!どうせお前ら、有名人だろ?
いやぁ…。この年になって文化祭ステージに上がれるなんて照れちまうな!
あっ。凪〜!!ギターありがとな!
あれ?向こうに見えるの、麻衣子さんじゃねーか?どうも〜!」
「凪叔父さんにも、迷惑かけ…って、げっ!近くにいるの、新谷先生(京太郎の担任)じゃねーか!||||」
「あっ。そう言えば、お母さん、PTAの広報担当で今日も学校に来てたんだった!」
ステージの上でもマイペースに観客席、PTA席にいる凪や麻衣子に手を振る京介に、凪と担任の接近にショックを受ける京太郎、母の麻衣子が驚いたように自分を見ているのに気付く芽衣子。
三者三様の状態で、ともかくもステージに上がったのだった。
読んで下さり、ありがとうございます。
京太郎くん&芽衣子ちゃん&京介おじさん大活躍のステージを見守って下さると嬉しいです。
また、他作品になりますが、本日(11/21)から、カクヨムサイトで投稿していました現代ファンタジーの作品、
「紅糸島の奇祭〜カースト底辺の俺を嫌って、イケメンに擦り寄る許嫁よ、さようなら!これから俺は、島の生き神様に贄として愛されひたすら甘々の日々を送ります〜」
を毎日12:00、17:002話ずつ投稿させて頂く予定です。
ご興味ある方がいらっしゃいましたら、こちらもぜひお願いします。
各作品共どうかよろしくお願いしますm(_ _)m