文化祭編⑪ 馬娘、読書同好会メンバーとの対面
女子トイレで不審な女子とぶつかり、変装用のサングラスが彼女のものと入れ替わってしまった栗珠。
困っているところを、生徒の父兄らしき女性から馬のマスクを渡され、しばらく呆然としていたが、仕方なく馬のマスクを被り、外へ出てみるも…。
「あれ?スミレちゃん?どこにいるの?」
廊下で自分を待っていてくれてる筈の星川スミレの姿がなく、焦る栗珠。
実は、スミレはさっき先にトイレを飛び出して行った不審な女子が栗珠と似た背格好で、紺のセーラー服にサングラスと同じようないでたちだった為、栗珠本人と勘違いして追いかけて行ってしまったのだった。
「(あれ、馬?劇の扮装か何か?)」
「(下セーラー服とかシュールじゃない?)」
周りの人は栗珠の格好を見てザワつく。そこへ、風紀委員の小谷潮、大山雅が、通りがかった。
「雅、あの、馬マスク、怪しい奴だな…!」
「うん。潮。変な手紙の件もあるし、事情聴取してみよう…!」
「ちょっと、あなた!校内では、顔の見えない扮装は禁止となってますよ?」
「君、そのマスクとってもらってお話聞かせてもらっていいですか?」
雅と潮が、警戒しながら、馬マスク&セーラー服の人物に近付いていくと…。
「…!! 大山様と、小谷様…!」
ガバッ!
「「!??」」
雅と潮に気付き、馬のマスクを取ると栗珠は二人の前に土下座をする。
「ふええっ!申し訳ありませ〜んっ!!うわあぁっ…!!」
「え、ええっ?!秋川さんっ?」
「なんで、秋川が馬にっ?」
目の前でわんわん泣いている栗珠に、驚くばかりの雅と潮だった…。
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「はあ…。矢口くんと氷川さんのいる読書同好会の部誌購入に協力したくて、星川さんと一緒に来たものの、はぐれてしまったと…。」
「罪人の自分がいたら周りの人に嫌な思いをさせてしまうかもしれないから、サングラスをしていたが、他の人のとすり変わってしまって、仕方なく通りすがりの女性にもらった変装用の馬のマスクをしていたと…。」
「はいっ…。そうですっ。あふうぅっ。」
事情を話しながら、涙を流す栗珠を困ったように見遣り、顔を見合わせ、ヒソヒソと話し合う潮&雅。
「(雅。秋川の話、怪し過ぎないか?また、何か変なこと企んでるんじゃないだろうな…。)」
「(いや、けど、秋川さん、今は氷川さん達によって無毒化されてるはずだよ?)」
とにかく、保護者の星川スミレに引き渡すまでは、風紀委員で身柄を預かろうという結論になり、生徒指導室へ連れて行く事になったが、栗珠にその前に、読書同好会で目的を遂げてからにしたいと懇願され…。
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ガラガラッ!
「「「「こんにちはー。…!??||||」」」」
「「「お、お邪魔しまーす…!」」」
展示室の戸が開けられ、お客さんかとにっこり挨拶をする読書同好会の面々、上月、神条、紅、碧だったが、入って来たメンバーを見て、頬を引き攣らせた。
馬のマスクを被ったセーラー服の不審な人物の両脇を風紀委員の雅と潮が抱え、刑事が犯人を護送している途中のような雰囲気の三人がそこに立っていたのであった。
「え、えーと、風紀委員の大山さん、小谷くん、その(馬の)方は一体……??」
「こ、上月さん、この人恥ずかしがり屋さんらしくて、こんなの被っているけど、悪意はないので、心配しないでね…?」
「…!!(上月様に神条様も…!昔の私の悪行を思い出すと申し訳なさに、胸が痛みます…。)ペコリ。」
「そそ、そうなのね…。(どう考えても馬の面を被る方が恥ずかしいと思うんだけど…。)」
「あ、ああ。迷惑かけないようにするから、俺達も一緒に回らせてもらせてもらっていいかな?」
「…。ペコリ。」
「「「ど、どうぞ、どうぞ…。(心配ないのに、風紀委員の二人がガッチリ両脇を抱えているのは何でなんだろう(でしょう)。)」」」
雅と潮の説明に疑問を感じながらも、蕭然と頭を垂れている馬に、害意は感じられず、読書同好会一同は、風紀委員と馬娘をお客さんとして迎える事になった。
「新聞部で取材で発表していた氷川さんの詩も載っているんだよね。」
「ああ。矢口くんの小説も載っているらしいぞ?」
「わあっ…。小倉さん達の詩やイラストも素敵…!」
「上月さんの短編小説面白いなぁ…!神条さんの本屋巡りレポも、為になるし。このカフェと一体型の本屋、行ってみたいな。」
「(組長様と姉御様の部誌…!)」
今年の部誌の見本を見せてもらい、盛り上がる雅と潮、そして、栗珠は、上月に向かって静かに300円を差し出し、ペコリと頭を下げる。
「えっ。部誌を買って下さるって事ですか?」
コクコクッ。
戸惑いながら彩梅が問うと、馬は大きく頷いた。
「あ、ありがとうこざいます!」
「「「ありがとうございます!」」」
ペコリ。ペコリ。
馬は何度もお辞儀をし、彩梅から渡された部誌を大事そうに胸に抱えた。
「あっ。俺も一部下さい!」
「私もお願いします!」
「「「「お買い上げありがとうございます!」」」」
雅と潮も栗珠に続き、部誌を購入する事となった。
「では、私達はこの辺で…。」
「うん。お邪魔しました。」
「あっ。ちょっと待って!」
読書同好会の緊張も緩んだ頃、目的を達成した三人が、展示室を去ろうとすると、彩梅に呼び止められた。
「あの…。よかったら、今年、ストーリーテーリングの企画をやっていて、ちょうど午前中の部を始める時間なのだけど、よかったらあなた達聞いていかない?」
「ストーリーテーリング?」
「何だか楽しそうだね?」
「…!✧✧」
コクコクッ!
三人が興味を持ったところへ、神条桃羽がニッコリと笑いかけた。
「一応テーマは怖い話…なんですけど、そんなに怖くないですよ?最初の話は氷川さんが作ったものなんです。」
「…!!!(ひ、ひいぃ〜っ!!☠ ||||)」
その瞬間、馬のマスクの下で、栗珠は声にならない悲鳴を上げたのだった。
読んで下さりありがとうございます!来週も文化祭編後半の続きを投稿出来ればと思います。
秋川さんの迷走の行く末を見守って下さると嬉しいです。
今後ともどうか宜しくお願いしますm(__)m
※なお、京太郎くん芽衣子ちゃんがステージに出る事から連想して、読書同好会がアイドルになったらという設定でみてみんにAIイラストを投稿していきたいと思います。
現在、神条さん上月さんを投稿していますので、よければご覧下さいね。