文化祭編⑨ 風紀委員長の懸念
風紀委員長=白瀬柑菜と、生徒会長=早坂圭三郎が何やら深刻そうに話し合っているところへ行き合ってしまった京太郎&芽衣子。
「白瀬先輩に…生徒会長さん?」
「あの…。何かあったんですか?」
「芽衣子嬢に矢口少年…!あ、いや、気にする程の事ではないんだ。」
様子が気になった芽衣子と京太郎に話しかけられ、彼女は取り繕おうとするが…。
「君達、ちょうどよいところに…!君達も協力してくれるかい?」
「おい。早坂会長!風紀委員でもない彼らに迷惑をかけるのは…!」
圭三郎は、ホッとしたように、二人に話を持ちかけようとし、柑菜は眉を顰めたが、京太郎と芽衣子は、顔を見合わせ頷くと、柑菜に協力を申し出た。
「俺達は構わないですよ?普段から風紀委員にはお世話になってますし…。」
「私達も元臨時委員ですし、何か力になれる事があるなら、協力しますよ?」
「矢口少年…!芽衣子嬢…!デート中に本当にすまないな…。」
柑菜は申し訳なさそうな顔で、心配事について話し始めた…。
「実は、文化祭出し物の人気投票の箱に、こんなものが投函されていたらしくてな…。」
柑菜は、クシャクシャになった投票用紙を二人に見せた。
『きょうのステージ 8ばんめのグループのときにめにものみせてやる…。たのしみにしていろよ…。』
「「…!??」」
そこには、チューリップや、ネコの落書きと共に、子供の書くような下手な字でそんな文章が書かれていて、京太郎と芽衣子は目を見開いた。
「ステージの8番目=最終グループの参加者にも聞いてみたが、そんな文書を書いた覚えもなければ、恨みを買った覚えもないって事だった。
先生方にもご報告したんだけどね?
落書きもあったし、子供のイタズラだろうって結論になって、午後のステージは予定通り開催する予定ではあるんだ。
風紀委員長の白瀬さんにも相談して、ステージには風紀委員の武闘班を警備として配置してもらう事になった。」
早坂会長の説明に、柑菜は神妙な顔で頷いた。
「ああ。もちろん、イタズラの可能性もあるが、この8という数字を何重にも書いて太くいるところに、何か怨念めいたものを感じて、気になってな…。警戒はしておくに越した事はないと思ったのだ。」
「それは心配ですね…。」
「8番目グループの方も不安ですよね…。」
京太郎と芽衣子も、心配気な表情になった。
「うん、幸い、7番目のグループと8番目のグループは、友達同士らしくて、合同で7番目に演奏しようかという話も出ているのだ。
グループの誰かに恨みがあるのでなく、8という数字に意味があるなら、7番目の団体でステージは終了になり、あの文書を書いた犯人は、当てを外すだろう?」
「それはいい考えですね…!今日はクラスの当番ないですし、俺も警備入れますよ?」
「私もです。何なら舞台袖にでも、待機できますよ?」
「矢口少年、芽衣子嬢、助かるよ…!本当にありがとう。」
出来る限りの対策を取る柑菜に、京太郎と芽衣子は、協力を申し出て、柑菜が笑顔で礼を言ったところへ…。
「なるほど、なかなか大変な事態になっているようだねぇ…?少年少女諸君…!」
「「「「!??」」」」
いきなり声をかけられ、一同が振り向くと、ドヤ顔の中年男性、京介がしたり顔でそこに立っていた。
「おじさんにもっとよい考えがあるんだけど、聞くかい…??✧✧」
「いや、あんたまだ近くにいたのかよ?!」
「きょ、京介おじさん…。||||」
途端に怒り心頭の京太郎とげんなりした表情になる芽衣子。
「「??(誰だろう?矢口くん(少年)の親戚か??)」」
呆気にとられている柑菜と圭三郎。
「こっちの事情に勝手に首突っ込んで来んなって!あっち行ってろよっ!!」
「うわ。京太郎、なにすんだよ…?!父に向かって、乱暴はよせ…」
「父じゃない!!親戚のおじだっつったろっ?ホラ、凪叔父さん、この人ちゃんと捕まえといてくれよ。」
無理矢理京介の背中を押し、凪叔父の元へ引き渡す京太郎。
「あ、ああ…|||| 京兄…。あんまり、しつこくすると、本当に嫌われるよ?少しは引かなきゃ…。」
「ま、待てって!本当にいい案があるんだって!俺達が飛び入りで8番目の団体として出演して、犯人の目を引きつけたらどうだっ?!」
「「!!」」
「京介おじさん…!」
「はあっ?何言って…。」
皆が驚く中、文句を言おうとした京太郎だが、柑菜がそれを遮った。
「いや、それはいい案かもしれない…!矢口少年の御親戚の方、こちらも精一杯警護しますのでご協力願えますか?」
「ハハッ。お安い御用よ。お嬢さん!」
「「ええ!!」」
柑菜と京介のやり取りに目を剝く京太郎と芽衣子。
「ホラな?いい案だって言ったろ?」
ドヤる京介に、心配しかない京太郎。
「いや、あんたに任せて大丈夫なのか?俺達って誰だよ?凪叔父さんも参加するのか…?」
「いやいや、俺、音楽関係はさっぱり苦手だよ…。」
凪が首をぶんぶん振って否定する。
「じゃ、誰が…。」
と問いかけた、京太郎に、京介はいい笑顔で、二人を指差した。
「ハハッ!そんなん、京太郎と芽衣子ちゃんに決まってるだろう?」
「はあぁっ?!俺も音楽関係得意じゃねーよっ!」
「ふえぇっ?!私も破壊的音痴&リズム感ですよぅっ!」
二人が焦って叫ぶ中、京介はウインクをした。
「いやいや、歌じゃない。二人共心配するな?小さい頃みっちり練習したろ?コサックダンス…!」
「「あっ…?!」」
京介の言葉に、京太郎と芽衣子は目をパチクリさせ、顔を見合わせたのだった。