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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク八人目
237/255

文化祭編⑤ アオハル高校演劇部版「シンデレラ」《後編》

 

 一瞬の暗転の後ー。


 突然、次のように記入されたホワイトボードが現れる。


 王子様殺人未遂事件


 被害者:王子様

 加害者:シンデレラ

 場所: お城の階段の途中

 凶器:ガラスの靴 

 動機:0時になって、早く帰りたかった為



 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽



 二幕の途中での衝撃的なシーンを目の当たりにした芽衣子の母達以外の観客もざわめいていた。

「王子倒れちゃったよ?どうすんの、コレ…!」

「シンデレラ、加害者じゃん…。」


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 また一瞬の暗転の末、ホワイトボードは回収され、ナレーションが流れる。


『自分のやってしまった事に慄き、青褪めるシンデレラでしたが…』


「王子様ー。どこにいるのですかー?」


「…!!||||||||(誰か来る!)ううっ、ごめんなさいっ…!!」


 突然舞踏会場を抜け出した王子様を探す大臣の声が近付いて来て、動転したシンデレラ(芽衣子)は、現場を逃げるように立ち去る。


「シ、シンデレラ!なんて事…!!||||||||」


 物陰から、一部始終を見ていたシンデレラの義姉(彩梅)は、王子様(柑菜)に急いで駆け寄ると…。


「ううん…。」

「ホッ。取り敢えずは、生きているみたいね…。証拠品があると、シンデレラが危険だわ。私が持っていましょう。」


 最悪の事態にはならなかった事に安心すると、その場にあった凶器=ガラスの靴を回収すると、義姉もそっと現場を立ち去る。


 その後すぐに駆け付けた大臣が、王子様の倒れている姿を見付け、驚き、助け起こす。


「お、王子様!|||||||| 大丈夫ですか?

 ど、どうしてこんな事に…!」

「うっ。ガ、ガラスの靴に…やら…れた…。ガクッ。」


「王子様っ!王子様っ!!」


『王子様は、再び意識を失い、城中は大騒ぎになりました。』


 暗転


 《第三幕》


『それから、しばらく王子様は床に伏せってしまい、王様は大激怒しました。

 王子様をこんな目に遭わせたガラスの靴の持ち主を探し出すよう国中にお触れを出しました。』


 シンデレラの家と庭をバックに、義母、義姉(彩梅)、一匹の犬(芽衣子)が現れる。


 家の壁にはこんな張り紙も貼られていた。

 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 WANTED!!


 先日の舞踏会に来ていたガラスの靴を履いていた女を探しています!


 懸賞金100万$


 王様より


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


「くううぅん…。きゃふん…?!(あわわわ…。どうしよう…?!|||||||| )」

「シンデレラ、大丈夫。今の姿では絶対に捕まる事はないよ。」


 張り紙(ドレス姿のシンデレラの人相書き入り)を見て、青褪める犬(芽衣子)と、優しく宥める魔法使い(京太郎)。


『実は、あの後シンデレラは魔法使いに泣きつき、事情を全て話し、ほとぼりが覚めるまで、バレないように犬に姿を変えてもらっていたのでした。(※ちなみに、魔法使いの姿は、他の人には見えません。)


 義母と義姉は、シンデレラが舞踏会以来姿を消した為、全ての家事を自分達でやらなければならなくなりました。』


「はあっ…。草取りで腰が痛いわ!

 あの恩知らずのシンデレラめ!私達が舞踏会に行っている間に、家を抜け出すなんて!!

 おかげで、私まで家事をしなくてはならないじゃないの…!今ごろどこをほっつき歩いているのやら!!」


「キャッ…。キャフン…!(ひっ…。お義母様怖い…!)」


 庭で草取りをしている義母の怒りのオーラにビクッとする犬(芽衣子)。


 庭で掃き掃除をしている義姉(彩梅)もため息をついて同意した。


「シンデレラ、本当にどこへ行ったのかしら…。(心配だわ…。)ね?シンデレラ?」


「キャ…。キャフフン…!(ひっ…。お義姉様、本当は気付いているんじゃ…!)」


 義姉(彩梅)に撫でられ、更にビビる犬(芽衣子)。


『義姉は、義妹のいない寂しさに、近くにいた犬=(芽衣子)に、妹の名をつけて飼い始めただけだったのですが、自分の正体がバレているのではないかと生きた心地がしないシンデレラでした。』


 そこへ…。


「失礼!先日の舞踏会の日、王子様に暴行を加えた女について、調べております。この家に年頃の娘はいますか?」


「「「「!!」」」」


 お城からの使者が家へやって来て、険しい顔で聞かれ、義母は慌てて、義姉の疑いを晴らそうとする。


「え、ええ。ここにいるのが私の娘で、舞踏会にも出席していますが、

 うちの娘は、当日ガラスの靴など履いておりませんし、髪型も人相書きのものとは違っております。」

「ふ〜む。確かにそうですな…。」


 人相書きと、義姉を見比べて、お城の使者が納得しかかった時…。


「私にも一応確認させてくれ…。」


 使者の後ろから、王子様(柑菜)がふらつきながら登場した。


「王子様…!まだお体が本調子ではありませんのに、ご無理をなさらないで馬車で休んでいらして下さい!」


 王子様は心配する使者に、首を横に振った。


「いや、自分の身に何が起こったのか、自分の目で確かめたいんだ。年頃の娘とは、その娘か…?」


「は、はいっ。」


 義母に確認すると、義姉(彩梅)に対峙する王子様(柑菜)。


「ふむ…。そなた、確かにあの日舞踏会場にいた気がするが、ガラスの靴の女性ではないな…。」

「そ、そうでございましょう?(納屋にガラスの靴を隠しているの、見つかったらマズイわ!)さ、さぁ、王子様、ご体調よくないのでしたら、早く馬車でお休みになって?」


「あ、ああ…。あっ!」


 義姉に勧められ、馬車に戻ろうとしたところ、王子様はよろけて…。


 ギュムッ!!


 近くにいた犬(芽衣子)のしっぽを踏んでしまう。


「ギャフ〜ンッ!!(痛〜いっ!!)」

「シンデレラ…!!」


 飛び上がる犬(芽衣子)に、心配する義姉。


「シンデレラ…!待ってな。今、魔法を…あっ。しまった!」


 ボワンッ!!


『魔法使いは、咄嗟に痛み緩和の魔法をかけようとして、間違えて、シンデレラの変身を解いてしまいました。』


 不思議な煙が立ち上った後、ボロ服姿のシンデレラが現れる。


「「シンデレラ…!!」」

「き、君は…??」


「あわわわ…!!||||||||」


 最悪のタイミングで、義母、義姉、王子様の前に姿を現してしまい、立ち竦むシンデレラ(芽衣子)。


「君は、どこかで見たような気が…。もしかしてあの、ガラスの靴を履いていた…!」

「…!!|||| (も、もう、おしまいだ…!)」


 ハッとする被害者=王子様(柑菜)の様子に観念するように首を項垂れる容疑者=シンデレラ(芽衣子)。


「シンデレラ!え〜と。え〜と。あの魔法は確か…。」

「シンデレラ、待ってて!」


『魔法使いが、シンデレラを守る為、その場の全員の意識を奪う魔法(うろ覚え)を思い出そうとしている間…。


 義姉は、急いで納屋へ向かいました。』


「王子様!これを見て下さい!!」


「「「「…!!」」」」


 義姉(彩梅)が王子様(柑菜)に凶器のガラスの靴を差し出した事に、その場の全員が息を飲む。


「ガラスの靴を履いて王子様と踊っていたのは、確かにその娘、シンデレラですが、あなたに危害を加えたのは、この私です!」


「何だって?」

「「なっ!我が娘(お姉様)、何を…?!」」


 衝撃の義姉の告白に、目を剥く王子様、義母、シンデレラ。


「以前から王子様をお慕いしていた私は、舞踏会で王子様に気に入られてずっと一緒に踊る義妹に強く嫉妬しました。

 だから、義妹を陥れるため、王子様と義妹が揉めている隙に、彼女から奪い取ったガラスの靴で王子様に一撃を食らわしたのです。」


「…!!そ、そうだったのか…。」


 衝撃を受ける王子様に、覚悟を決めた義姉は頭を下げる。


「申し訳ありませんでした。今は、大変な事をしてしまったと後悔しております。どうか、私に相応の罰をお与え下さい。」


「なっ。違います!お姉様は、私を庇って…。」


 シンデレラが王子様に否定しようとしたところ…。


「正直に言ってくれて、ありがとう!君は何て「面白い女」なんだ!!」


「へ?」

「?!」

 目をキラキラさせた王子様(柑菜)に、手を取られ呆気に取られる義姉(彩梅)と驚いて口に手を当てるシンデレラ。


「ツンデレ×ヤンデレとか、最高じゃないか…!君、ぜひ、私と結婚してくれ!!」


「へええっ!??」


 突然王子様(柑菜)にプロポーズを申し込まれ、大声を上げる義姉。


「いや、だって私は、王子様に危害を加え…!」


「ハハッ!私を想うあまりに、やってしまった事は君の可愛らしい愛情表現と思って不問にするよ。

 実は、あれからМに目覚めてしまったらしくてね。君の一撃を思い出して、恋煩いのあまり、床に伏せっていたんだよ。

 結婚したら、私に沢山愛ある一撃を食らわせてくれよ?」


「は、はああっ?!」


 爽やかにМ宣言をする王子様(柑菜)に、開いた口が塞がらない義姉。

 パチパチパチパチ…!


 そこへ、拍手をして涙を浮かべ、祝福の言葉を口にするシンデレラ(芽衣子)。


「王子様、お姉様、ご結婚おめでとうございます!

 ううっ。お義姉様、想いが叶って本当によかったですね✧✧


 私も、実は私を側で支えてくれていた人(魔法使いさん)を好きになってしまったんです。」

「うわっ…。シンデレラッ!//」


 そう言いがてら、シンデレラ(芽衣子)は戸惑う魔法使い(京太郎)に飛び付き、義姉(彩梅)に満面の笑みを向ける。


「二人共幸せになりましょうね?」


「ええっ?!シンデレラッ?」


「流石、私の娘!玉の輿よ!」


「お母様?!」


「王子様、おめでとうございます!」

「ハッハッハッ!ありがとう、皆!」


「えっ。ちょっと待っ…!なんでこうなるのよ〜〜〜っっ!!!!」


 その場全員が祝福する中、王子様(柑菜)に肩を抱かれながら、絶叫する義姉(彩梅)。



 暗転



 城の背景とシンデレラの家の背景が半々で出され、それぞれの背景の近くに、義姉(彩梅)&王子様(柑菜)、シンデレラ(芽衣子)&魔法使い(京太郎)が立つ。


「私、窮屈なお城での生活なんて、嫌よぉっ!!」

「愛しの君〜♡待って下さい!」


 逃げ回る義姉(彩梅)を追いかけ回す王子様(柑菜)。



「それじゃ、私も結婚するんで、出て行きます。

 お母様、これからは自分で家事、頑張って下さいね?さようなら!」


「え。」


 義母に呼びかけると、魔法使い(京太郎)のホウキの後ろに飛び乗り、どこかへ飛び去って行くシンデレラ(芽衣子)。


「魔法使いさん、幸せだね?」

「そうだね。シンデレラ!」


 空の上で笑顔を浮かべる二人。


『こうして、シンデレラは、魔法使いと、

 シンデレラ姉は王子様と結婚し、それぞれ幸せに暮らしたのでした…。』


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

 ナレーションの後、一瞬の暗転の後、役者全員が現れる。


「これにて、アオハル高校演劇部&有志による「シンデレラ」は閉演となります。ご観覧頂きましてありがとうございました!」


 部長の挨拶と共に、京太郎、芽衣子、彩梅、柑菜を含む役者は全員ペコリと頭を下げた。


 会場は割れんばかりの拍手がさざめいていた。 


「潮、面白かったね?」

「そうだね、雅!」

「「「「委員長のМ王子様、最高!!」」」」


「「面白かったですぅ!ねっ。神条さ…。」」

「ブツブツ…。(あの、SM設定はもしかして、矢口くん、氷川さんの実体験を元にしたもの…?)」

「「か、神条さん…?」」


「ううっ。芽衣子が誰も殺してなくて、よかった。わあぁっ…!」

「ううっ。麻衣ちゃん、よかった、よかったね!」



「お客さん、喜んでくれてる!よかったね、京ちゃん!!」

「ああ。一時はどうなるかと思ったけど、やってよかったな?めーこ!!」



 それぞれ、知った面々を含む観客が拍手してくれているのを見て、笑顔を見合わせる芽衣子と京太郎であった。






 *あとがき*


 読んで頂きましてありがとうございます✧✧

 文化祭編、劇パートの最終話でした。

 次話、その次の話はそれぞれ芽衣子のクラス、京太郎のクラスの出し物を回る話になります。

 今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m


 なお、芽衣子ちゃんのシンデレラ姿のAIイラスト(指名手配の張り紙)(観覧お礼のメッセージつき)をみてみんに投稿する予定です。よければぜひご覧下さいね。


追記:AIイラスト投稿しました。


https://42432.mitemin.net/i904139/

https://42432.mitemin.net/i904140/

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