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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク八人目
229/255

おまけ話 風邪っぴきめーこ

 

「ふふっ。土曜日は、京ちゃんとデート♡楽しみだなぁ♪」


 京太郎とデートの約束をした芽衣子。幼馴染みの「めーこ」としての、初めてのデートに心躍らせていた。


「京ちゃんが水色似合いそうって言ってくれたから、最近買った水色のスカートと、トップスは白いレースの奴で…。あっ。」


 自室で、鏡に向かって、服を合わせていると、ふと、前髪が目の辺りまで掛かっているのに気付く。


「ん〜。大分伸びて来たな。よし!デートの前に切りに行こう!」


 鏡を覗き込んで前髪を指で摘んで持ち上げて、美容室へ行く事を決意した芽衣子だったが…。



 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


 待ちに待った土曜日。


 本来なら、京太郎と待ち合わせ場所に行っている時間に、熱冷ま◯ートを額に貼り、ベッドに横になりながら、さめざめと泣いている芽衣子の姿があった。


「うっうっ!私のバカァ!1年に一回くらいしか風邪引かないのになぜこのタイミングで…!?」


 昨日から熱が下がらず、泣く泣く京太郎にデートを延期してもらった芽衣子。

 結局美容院も行けないままであった。


 両親は仕事。静は美湖とデート。

 食事は母に作り置いてもらっているが、家にたった一人で、ベッドに寝ていると、体調の悪さからメンタルもやられ、不安な気持ちが湧いてきてしまう。


「今頃、京ちゃん何してるかなぁ…?他の女の子にアプローチされてたらどうしよう…!


 隣りに越してきた美人の大学生のお姉さんが、『作り過ぎてしまったので、よかったら…。』とか、男心くすぐる肉じゃがのお裾分けされてたりして…!

 ううっ!知り合ったばかりで手料理食べさせようとするなんて、あざとすぎる!!


 もしくは、道で食パンを咥えながら走って来た無邪気でドジっ子の女の子とぶつかってるかも…!

 そういう女の子程、パンチラしたり、胸を押し付けてきたり、女の武器最大限に利用してアプローチしてくるんだよな。許せない!!」


 妄想の中の女子達に、自分が今までやって来た事を棚に上げて、ぷりぷり怒っている芽衣子。


「あ…。頭に血が上ったら、余計に頭痛くなって来た…。」


 ガンガンする頭を押さえて涙目になっていると…。


 ピンポーン!


 玄関のチャイムが鳴り、よろけながら、インターホンへ向かうと、そこには京太郎の姿が写っていた。


「きょ、きょ、京ちゃん…✧✧!?」

「あ、めーこ!風邪大丈夫か?お見舞いに来たんだけど…。入れてもらえる…かな?」

「あっ。う、うん!ちょっと待ってね?」


 すぐにマンション入口のロックを解除して

 ゼーハーして四つん這いになりながら、玄関に待機する芽衣子。


(ダ、ダメだ!京ちゃんに風邪を移しちゃう。来てくれたのは有難いけど、お顔だけ見たら、すぐに帰ってもらおう。)

 と、固く決意する。


 ピンポーン!


 再びチャイムが鳴り、ドアを開けると…。


「めーこ。大丈夫…わっ!!////」


 京太郎の顔を見るなり、京太郎の胸に飛び込みながら、芽衣子は捲し立てるように言い渡す。


「ゼエゼエ…。京ちゃん、お見舞いに来てくれて嬉しいけどっ!だけどっ!ハァハァ…。京ちゃんに風邪を移しちゃいけないから、すぐに帰ってちょうだいっ!!」


 ぎゅぎゅぎゅ~!!フニュフニュン♡

「うわっ♡」

 抱き着きながら、さり気に腕を抱え込みおっぱいを押し付けてくる芽衣子に、悲鳴を上げる京太郎。


「めーこ!ちょっと離してって!!言ってる事とやってる事違うだろ!?

 帰って欲しいのか、帰って欲しくないのかどっちなんだよぉ!!」


「うわああぁっ…!!ごめん、帰っでほじぐないよぉ〜!!」

「なら、最初からそう言えよ…。」


 呆れながらも、号泣する芽衣子の頭をヨシヨシ撫でる京太郎。


「一応、レトルトのおかゆと、プリン買ってきたけど、食べれそうか?」


「うんっ。うんっ。」


 決意はもろくも崩れ去り、芽衣子は、京太郎に付き添われ、自室に戻る事になった…。


 *

 *


「フーフー。めーこ、口開けて?」


「あーん♡あむあむ…。んふっ。(京ちゃんがフーフーして冷ましてくれたお粥)美味しい♡♡京ちゃん、ありがと!」


 ベッドサイドで、温めたおかゆを京太郎に食べさせてもらい、ご満悦の芽衣子。


「い、いや、//なら、よかった。(めーこ、今日は輪をかけて甘えん坊だなぁ…。風邪を引いて心細かったのかな。お見舞い来てよかった。しかし、こんな事考えちゃいけないんだけど、めーこ目も潤んで息も荒いしどことなく色っぽいんだよな…。それに、パジャマの下、多分、ノーブラ…。あーもう!俺って奴はめーこが辛い時に何を考えてるんだ!)」


 さっき腕に押し当てられた柔らかい感触を思い出し、思わず芽衣子の少し開いたパジャマの胸元を見てしまい、京太郎は慌てて目を逸らした。


「京ちゃん…。頼っちゃってごめんね?」


「めーこ。気にするなよ。めーこには、いつも助けてもらってるんだから、弱ってるときぐらいは俺に頼ってくれよ。」


「京ちゃん…。ありがと…。もし、風邪、移しちゃったら、今度は私が看病するからね?」


「ああ。その時はぜひお願いするよ。」


 申し訳なさそうに申し出る芽衣子を安心させるように、京太郎はにっこり微笑んだ。


「きゅん…♡♡(その笑顔、ずるい…!)」


 瞬間、胸を射抜かれる芽衣子。


「きょ、京ちゃん、私、もう、胸もお腹もいっぱいで…。少し横になっていいかな?」


「(胸も?むむ、確かに豊な…って、そうじゃない!//)あ、ああ!どうぞどうぞ無理しないで休んでくれ。」


 また芽衣子の胸をチラリと見て、慌てて横になるように勧める京太郎だった。


 *


「京ちゃん…。寝てる時、手ぇ握っててくれる…?」

「いいよ…。」


 芽衣子がベッドに横になっている傍らで、椅子に座っていた京太郎は、芽衣子の手をぎゅっと握ってやった。


「ふふ。京ちゃんの手、大っきくてあったかいね…。」


「そ、そうか?めーこの手の方が熱い気がするけど熱あるんじゃないか?辛くないか?」


「うん。ちょっと怠いけど、京ちゃんがいるから、幸せ…♡♡」


「なんだよ、ソレ…。///」


 愛情表現がどストレートな芽衣子に思わず赤面してしまう京太郎。


「本当に辛くなったら、言うんだぞ?」

「クゥン…♡(はぁい♡)」


「ヨシヨシ…ん?」


 京太郎は手を握っていない方の手で、芽衣子の髪を撫でようとして、ふと、芽衣子の前髪が長く伸びている事に気づく。


「めーこ、随分前髪長くなったな。」

「あっ。そうなの…。美容院で切ってもらおうと思っていたんだけど、体調崩しちゃったから、行けなくて…。」


 恥ずかしそうに前髪を隠そうとする芽衣子の手を止める京太郎。


「待って、めーこ、ちょっと前髪見せてもらっていいか?」

「??京ちゃん?」


 京太郎は、戸惑う芽衣子の前髪を下に真っ直ぐに下ろすと、大きな瞳が隠れてしまった。


「お、おおっ!✧✧まさしく“めーこ”だっ!!」


 今の芽衣子の姿に、髪でいつも顔の上半分が隠れていた、小さい頃のめーこの面影を見出し、感動する京太郎に、慌ててワタワタする芽衣子。


「わあぁ…!何するの、京ちゃぁん。目が見えないよぉ。」


「あっ。ごめんごめん。」


 病人に無体を働いてしまった事を謝り、前髪を戻す京太郎。


「いや、「芽衣子ちゃん」が「めーこ」だって今、すごく実感しちゃってさ。」


「そんなの、前から分かってるでしょ?」


「頭では分かっていたんだけど、実際に見てストンと腑に落ちたのは今が始めてで、

 何だか、嬉しくてさ…。めーこは昔から可愛いかったよな。」


 京太郎にニコニコの笑顔と共にそんなセリフを言われ、またもドギュン♡と心臓を撃ち抜かれる芽衣子。


「も、もう、京ちゃんったらっ…。///

 病人の心拍数を上げるなんて、ギルティだよ?罰として、私が眠るまで手をつないでてね♡?」


「(そんなの罰でもなんでもないけど…///)分かったよ。芽衣子。」


 差し出した手を、再びしっかり握ってくれる京太郎をじーっと見て、芽衣子はふふっと嬉しそうに笑う。


「京ちゃんは、昔からイケメンだよね…。」


「な、何言ってんだよ。俺は昔からフツメンだよ。そんなの、言ってくれるのめーこだけだよ。」


「ふふっ。分かってないんだから…。「京せんぱい」は…しょう…がない…なぁ…。すう…すう…。」


 照れたような顔で訂正する京太郎にそう言い残して、芽衣子は幸せそうに微笑み、眠りについた。


「急に「芽衣子ちゃん」になるの、やめろよ。ドキッとするだろうが…!///」 


 京太郎は、芽衣子の安らかな寝顔に文句を言いつつ、しばらくずっと手を繋いでいたのだった。     



 京太郎の看病の甲斐あって、その後数日で全回復した芽衣子だったが、次の週末、お約束のように今度は京太郎が風邪を引き、デートは延期に。


 実際にデートへ行けたのは更にその1週間後だったとか…。

*あとがき*


風邪っぴきの甘えん坊めーこちゃんでした。


「8回目の嘘コク」いつも読んで下さり、ブックマーク、いいね、評価下さりありがとうございます!


高校時代のおまけ話、文化祭編をこれからしばらく毎日投稿させて頂きますので、またよろしくお願いします。m(__)m



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