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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク八人目
228/255

最強のヒロイン

※妊婦さんは出産前、痛みやら命を産み落とす緊張やらで極限状態です。多少情緒不安定な言動があっても大目に見てあげて下さい…(;_;)


「ひぃっ…!ひぃっ…!ふぐううっ…!」

「矢口さん、苦しいね?大分進んできてるから。あと少しだよ?」


「は、はいいっ…!!ふぐぐっ…!ううっ…!鼻っ…!からっ…!すいかぁっ…!」


「め、めーこっ…!」


自販機で買った飲み物を手に、急いで部屋に戻ると、めーこが脂汗をながし、痛みに呻きながら、看護婦さんに背中をさすられ、声をかけられていた。


めーこは妊娠してから、一時期つわりはひどかったものの、幸い後期まで特に何のトラブルもなく小さな命を育ててくれていて、いつ産まれてもいいようにと準備をしていたが、

夜中に破水してしまった時は、二人共慌ててしまった。


予め登録していたタクシーで病院に駆け付けると、既にお産はかなりすすんでいる状態で、めーこは5分間隔の陣痛に悶えていた。

出迎えてくれた年配の看護婦さんがめーこに優しく声掛け、呼吸法を指示したり、痛みの合間に陣痛が楽になるマッサージをしたりと適切な処置をしてくれる中、俺にできるのは、オロオロめーこを見守り、飲み物を差し入れする事ぐらいだった。


「ふうっ…。痛みが引いた…。あ。京ちゃん…。」


陣痛がいったん引き、周りを見る余裕ができためーこは俺を見つけると弱々しく微笑んだ。


「めーこ…。大丈夫か?お茶、飲めるか?」

「ん…。ありがとう、京ちゃん。」


ストローを挿したパックのお茶を差し出すと、めーこは嬉しそうに受け取った。


「旦那さん、飲み物買ってきてくれてよかったですね。」


看護婦さんはにっこり笑った。


「今、先生が病院に到着されたようです。少し席を外しますね。何かあったら、ナースコールして下さい。」


「「はい。」」


そう看護婦さんに言い残され、俺とめーこは部屋に残された。


「お茶、おいしー。生き返る〜。」


ベッドの上にぐったり横たわりながら、チューチューお茶を飲んでいるめーこをその脇に座って見守りながら、苦しんでいるめーこにそれぐらいしかしてやれない自分を歯がゆく思っていた。


「へばっててごめんね。でも、私がどうなったとしても、京ちゃんとの子供を無事産んでみせるからね?まっててね?」


悲壮な覚悟を込めてそんな事を言ってくるめーこに俺は思わず叫んでしまった。


「めーこ!どうなったとしてもとか言わないでくれよ。君も必ず無事でいてくれ!」


「あ。うん。もちろんそのつもりだけど、

ごめん。あんまり苦しいからつい…。」


「あっ。いや、めーこが苦しい時に怒鳴ってごめん。」


お腹をさすりながら苦笑いするめーこに俺もはっとしてすぐ謝った。


「子供を産むってこんなに大変な事なんだな…。ごめん。めーこ、()()()()()()()()()ここまでさせてしまって…。」


バゴッ!


!??


そこまで言った時、めーこは、飲み終わった緑茶のパックを握り潰し、

俯いたまま、今まで聞いたこともないような低い声を出した。


「ここまで引っ張った私も私だけどさぁ…!

京ちゃん、流石にそれはないんじゃない…?」


「めめ、めーこ…?」


慄く俺をめーこはギンッと睨み付けた。


「反嘘コク同盟とか、いつまでもぬるい事言ってんじゃないよぉっ!!!


()()()()()()()()()()()()()

!!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!


それぐらい、分かってよおっ!!!」


目から火を吹く勢いで怒鳴られ、俺は病室の壁際まで後退り、しどろもどろで答えるしかなかった。


「すすす、すまん。め、めーこ。||||||||

めーこの気持ちは流石に気付いていたし…、

な、何度も反嘘コク同盟を解消して、本当の気持ちを、伝えようと思ったんだけど…。


ここまで来てしまうと、気持ちを伝えた瞬間に、この幸せがなくなってしまってしまうんじゃないかと今度は逆に怖くなってきて…。」


「そんなワケないでしょっ!!京ちゃん。もう、お父さんになるんだから、もっとしっかりしてくださいっ!!!」


顔を真っ赤にしためーこに尤もなことを叫ばれ、俺はその場に直立して、大声で叫び返した。



「は、はい!めーこ。俺は世界で一番君が好きですっっ!!君と君のお腹の子供が何より大事ですっっ!!!!」



めーこはそれを聞いて、大きく目を見開き…。








「遅いんだよぉっっ!!!」


ボグッ!!


!!! ||||||||


めーこは右足で、ベッドサイドに置いてあったハート型のクッションを破壊し、中に入っていた羽毛が辺り一面に飛び散った。


めーこはゆらぁっと起き上がって、こちらに身を乗り出してくる。


俺は手を組み合わせてガクブルしながら謝る事しかできなかった。


「ごごっ、ごめんなさい。めーこさん…|||||||

そ、その右足はいけませんっ…。」


しかし、めーこは俺の元までは辿り着かず…。


「ち、違うの…。も…。マックスでお腹が痛くって…。堪えられないっ…!うっ。うううっ…!!!」


めーこは苦悶の表情を浮かべてその場に崩れ落ちた。


「め、めーこ!!!!看護婦さん、来てください!!めーこが…!!」


俺はめーこを抱え込むと、必死の思いでナースコールのボタンを押し続けた。



         *

         *

         *



それから三十分後ー。


「おめでとうございます。可愛い女のお子さん、生まれましたよ?」

「!!!!」


分娩室の外で、母子の無事を願いながらソワソワ待っていた俺に、看護婦さんから朗報がもたらされた。


俺が駆けつけたとき、めーこは、ベッドに横たわり、その胸にとても小さな生き物を抱っこしていた。


「めーこ!」

「京ちゃん…!」


めーこは疲れている様子だったが、俺を見ると幸せそうな笑顔を浮かべ、胸の上の小さな生き物に呼びかけた。


結実ゆみちゃん。パパだよ?」


めーこの胸に抱かれている、その生き物=俺達の赤ん坊は、全身ピンク色で、少し腫れぼったいものの、綺麗な顔だちをしていて、将来めーこのように美人になりそうだった。


俺達の赤ん坊=結実は、めーこの言葉に反応したのか、ピクッと動いてぼんやりした視線をこちらに向けてきた。


その小さな手にそっと触れてみると、ギュッとびっくりするぐらい強い力で握り返され、俺は感動して涙を落とした。


「かっ。可愛いなぁ…。」


「ふふっ。可愛いでしょう?」


小さな結実を抱いて、綺麗な茶髪を揺らし、得意げな満面の笑みを向けてきたのはー。


俺の幼馴染みで、俺の最愛の妻で、大仕事を終えたばかりの結実の母親でー。


この物語における主人公おれの最強ヒロインだった…。



               


               (完)


*あとがき*


この話をもって、一度完結とさせて頂きます。

今まで京太郎くん、芽衣子ちゃんを見守って下さり本当にありがとうございました✨(;_;)✨


今後についてですが、時系列で、最終話以降の高校時代のお話が、文化祭編、クリスマス編、誕生日編とありまして、それぞれふさわしい時期に投稿させて頂こうと思います。


その時はまたどうかよろしくお願いします。m(_ _)m


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