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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク二人目
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放送企画の陰謀

「何で?さっき確認したときにはあった筈だろ?」


 田橋は、慌てて機材の近くへ飛んで行き、USBの入った保管箱を確認するも、目当てのものは見つけられないようだった。


 放送委員同士で対応を話し合い始めた。


「どうする?今日は今映している動画で終わりにするか?」


「困ったな…。ラストにはいつも一番メインになるような動画を用意していたのに。今回は盛り上がらないな…。」


「どうする?過去に人気だった動画をアンコール放送するか?」


「新入生入ったばかりだし、出来るだけ新しいの流したかったけどな。」


 秋川と芽衣子ちゃんも心配そうにその様子を見守っている。(秋川はフリかもしれないが。)


「困ったね。ここに有名人がいてくれてたら、その場で撮って、中継で流してもいいのにね。」


 よく通る声で秋川がそう言うと…、放送委員の間の空気が、変わった。

「有名人…?」


「そうだ!ここにいるじゃん。有名人。」

 田橋は明るい表情になり、今まで見向きもしなかった俺の方に進み出てきた。


「今まで、7回も嘘コクを受けた矢口くん。俺達を助けると思って、もう一度、嘘コクされてくれないか。頼むよ。この通りだ。」


 田橋から頭を下げられ、俺は仰天した。


「いや、嘘コク、特技でも何でもねーし!

 そんな企画誰が楽しいんだよ!」


「いや、あくまでやらせって事にするから。

 コメディ調に撮って、ラストに、“頑張れ矢口くん。春…、勉強も、部活も、そして恋もしようぜ…“みたいなナレーション入れれば、皆に受けると思うんだ。」


「どんなノリだよ!?」


 頑張れ矢口くんって、俺やっぱ振られる事

 前提じゃないか!


「相手役は…、うん。今、旬な話題の人がいいな。氷川さんお願いできないかな?」


「わっ、私?」

 芽衣子ちゃんは驚いて声を上げた。


「私が放送企画で、京先輩に嘘コクを…?」


 途端に頬が紅潮し、目がキラキラし始めた。


 コラコラ。喜んでんじゃねーよ!


 嘘コク大好きな君にとってこの企画は垂涎ものかもしれないが、それを悪用しようとする奴がいるの忘れるなよ?


 今だけはその欲望控えてくれ!


 俺は芽衣子ちゃんにアイコンタクトをとり、駄目だと言う意味を込めて首を横に振ると、芽衣子ちゃんは眉毛を八の字に下げ、お預けを食らった犬のような表情になった。


「あうぅ…。」


「えーでも、氷川さん、恥ずかしがりやさんなのに、そんな役、可哀想じゃない?

 矢口くんはクラスでもいつも体を張ったエンターテイナー役を買って出てくれるから大丈夫かもだけど。」


 そんな役買って出た覚えねーよ!

 余計な事を言う秋川を睨みつけると、本人は知らん顔でニコニコしていた。


 秋川の発言に、田橋は、またいらぬ事を思い付いたらしく、


「あ。じゃあ、うちの放送委員の女子に嘘告白してもらって、8回目の嘘コク記念に矢口くんが頭剃るって企画は…?」


「はあ?」

「!!」


「いや、田橋、それは流石に…。」

 他の放送委員が引いていた。


「私、嫌っす。」

 音響機器をいじっていた放送委員唯一の女子が、鼻に皺をよせて、俺への嫌悪感を露わにしていた。


 俺も嫌だけど、傷付くな。その態度と思ったとき、


「わ、私、嘘コク動画のデータ持ってます!!」


 芽衣子ちゃんが大声で叫んだ。


「なっ!」


「えっ。本当!?」



「はい!私嘘コクが趣味で、京先輩に協力してもらって、嘘コク動画撮らしてもらったんです。これ、そのデータなんで、よかったら使って下さい。」


 芽衣子ちゃんはポケットから取り出したUSBを田橋に差し出した。


「う、嘘コクが趣味なんだ…。これ、使っていいの?」


「は、はい。だからその頭剃る企画やめて下さい!」


「ああ。動画があるならそれに越したことはないよ。ありがとう!ぜひ使わせてくれ。」


 田橋は嬉しそうにそれを受け取ると、パソコンなどの機材を扱っている山下という放送委員に渡してチェックし始めた。


「ちょ、ちょっと待てよ!俺了承してねーよ!止めろっつの!!」


 呆気にとられていた俺が、我に返り、放送委員達を止めようとすると、芽衣子ちゃんに強く腕を引かれた。

「京先輩!いいの。大丈夫なんです。」

「何が大丈夫なんだよ?」

 諦めたような笑顔を浮かべる芽衣子ちゃんに俺は噛み付くように言った。

「お願い。私の話を聞いて下さい…。」


「あと、2分で、今の動画終わります。」


 放送委員の山下から声がかかる。

 そろそろ、秋川と芽衣子ちゃんが今流れていた動画について、コメントしなければいけない時間だったが…。


「氷川さん、今回の動画は私だけでコメントするから、矢口くん、説得してくれないかな。放送室の外で。私、出来るだけ時間を稼いどくからさ。」


 秋川はそう声をかけてくると、にっこり笑って親指を立てた。

 その姿が誰から見ても、いいやつに見えるのが、本当に腹が立つ。

 いらぬ気遣いしやがって!


「ありがとうございます。」

 芽衣子ちゃんは秋川にペコリと一礼すると、俺を放送室の外へと誘った。


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