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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク二人目
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いざ放送室へ

 

 翌日、四時限目の授業が終わった後、俺はすぐに芽衣子ちゃんのクラス、1-Dの教室へ向かった。

 廊下に緊張した様子でキョロキョロしている芽衣子ちゃんと、友達の笠原さんがいた。


「あっ。京先輩ー!」


 芽衣子ちゃんは手を振りながら、嬉しそうに近寄って来た。


「芽衣子ちゃん。大変な事になっちゃったけど、今日はなんとか乗り切ろうね。」


「はいっ。いざとなったら、鼻血出したことにして、保健室に逃げます!」


 芽衣子ちゃんは血糊で先を染めた鼻ポンを俺に見せてにっこり笑った。


「すごいな、そんなもの用意してたのか。」


「はい。マキちゃんに作ってもらいました。」


「へぇー。笠原さん、器用なんだな。」


「えへへ。こーゆーこまいのつくるの、結構好きなんすよ。矢口先輩。今日は芽衣子の事よろしくお願いしますね。」


「ああ。」

 俺は神妙な顔で頷いた。


「いざとなったら、芽衣子を止めてやって下さい。」


「ええ?」

 驚いて目を剥いた。止めてやって?

 守ってあげてとかじゃないの?


 しかし、言い間違いとかではなかったらしく、笠原さんは芽衣子ちゃんに向き合って言い聞かせるように言った。


「芽衣子。分かってると思うけど、

 あわてない、あばれない、あしはふういん

 の3Aを守ってね。マキちゃんとのお約束だよ?お昼の放送で、皆見てるんだからね?」


「わ、分かってるよ。マキちゃん。今回はどんな状況になっても冷静な対応を心がけるよ。」


「もしかして、芽衣子ちゃん、意外と喧嘩っ早いの?」


「まぁ、中学の時は結構すご…、イタタ!芽衣子、痛いって。」


 芽衣子ちゃんは笠原さんをポカポカ○ンパンチ殴りしていた。


「もう、マキちゃん。やめてよ!京先輩の前で…。」


「ははっ。でも、今日の状況だったらそのぐらいの方が頼もしいかもな…。」


 こんな状況にも関わらず、俺は芽衣子ちゃんが手足をジタバタさせてぷんぷん怒っている様子が思い浮かんで、少し笑ってしまった。


「芽衣子ちゃんが怒ってる姿、俺もちょっと見てみたいかも。」


 笠原さんと、芽衣子ちゃんは顔を見合わせて苦笑いした。


 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


 待ちあわせの時間ピッタリに放送室の前に行くと、お揃いの黒いTシャツを着た、放送委員の生徒5、6人ぐらいと秋川が既に集まっていた。


「わあぁ。氷川さん来てくれてありがとう。

 矢口君も来てくれたんだぁ。嬉しい。」


 秋川は、満面の笑みを浮かべていた。

 その裏に腹黒い計略を企てているとは思えない完璧な笑顔だ。


 俺も偽りの笑顔を纏って声をかける。


「おう。結局来ることにしたわ。よろしくな。秋川。」


「よ、呼んで頂いてありがとうございます。秋川先輩。」


 芽衣子ちゃんは困ったような笑顔を浮かべていた。


 放送委員のまとめ役らしい、田橋と名札を付けたイケメンメガネ男子が芽衣子ちゃんの前に立つと、目を見張ってその容姿を称賛した。


「ああ。君が、氷川さん?なるほど、噂通り、すごく可愛い子だね!

 今日はコメント役お願いね。」


「い、いえ、そんな。今日はよろしくお願いします。」


 芽衣子ちゃんが、緊張ぎみに挨拶した。


 そして、俺を見て困惑したような表情になった。


「ええっと…、君は…?」


「見学者の矢口です。よろしくお願いします。」

 俺は、田橋という奴に軽く頭を下げた。


「ホラ、田橋くん。私のクラスメートで見学者が、来るかもって言ってたでしょ?」


 秋川は、田橋に寄り添うようにして何やら耳打ちした。


「ああ、例の嘘コ…!」


 田橋は俺を指差してそう言いかけると、

 取り繕ったような笑みを浮かべた。


「あ、まぁ、ゆっくり見学してってくれ。」


 そして、すぐに俺に背を向けると、他の放送委員に呼びかけた。


「そしたら、皆、集まってー。軽く打ち合わせして、すぐ本番いくぞー。」


 まぁ、俺の扱いなんていつもそんなもんだ。


 今更腹も立てることもない。


 俺は、放送委員と、秋川、芽衣子ちゃんが口頭で打ち合わせしているのを、少し離れた場所から眺めていた。


 途中、芽衣子ちゃんが不安そうにこちらを振り帰って来たが、安心させるように頷いてやると、芽衣子ちゃんも真剣な顔で何度も頷き返し、また前を向いて放送委員の話に聞き入っていた。



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