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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク七人目
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嘘コク7人目 上月彩梅 


風紀委員を臨時で手伝った一週間の後、俺は

自分自身についてよく考えるようになった。


与えられた仕事をこなし、納得できる対価を得たという体験は、珍しく俺を前向きにさせていて、将来何がやりたいか考えるきっかけになった。

自分の趣向、特性を鑑みて、自分は何に向いているのか?何がしたいのか?


ネットの情報を検索したり、適正検査を受けたりするうち、やはり自分は、凪おじさんの影響で割と本を読むのが好きだった為、本に関する仕事がしたいのではないかと思い当たった。


一瞬のマジ告で苦い思い出となった神条さんも、本に関する仕事をしたいと考えていたようだったが、彼女は、膨大な本の知識から、他の人に本を勧めたり、本そのものを管理したりする事に興味があるようだった。


俺はどちらかというと、本そのものというよりは、作品作りに深く関わる仕事に興味があった。


その事に気付いた俺は、読書に勤しむと同時に自ら小説を書くという、もう、今から考えれば厨ニ病だった中学時代の上を行く黒歴史でしかない試みをしていた。


勢いのまま、SF、推理ものなど何作か、短編を作った後、新たなジャンルの中編小説を作ろうと意欲に燃えていた俺は、

その日も俺は、昼休み、屋上前の階段に腰掛け、小説の原案を考えていた。


微妙に屋上の扉の下のほうに隙間が空いているせいか、風が吹き込んで来て、まだ暑さの残る9月半ばでも、ここは涼しく快適だった。

自然と興が乗り、思い付いたアイディアをペンでA5ノートに次々と書き込んでいった。



《ジャンル:異世界もの》

【タイトル未定】

『主人公は、領主の娘に憧れて日夜剣の研鑽に励んでいたが、15才になった日、教会の神官に特性を見てもらうと何の才能もない事が分かった。領主の娘は、剣士になった親友と恋仲になり、やさぐれる主人公と、それを励ます一つ下の妹。

やがて、妹が15才になった時、同じに特性を見てもらうと、なんと、1000年に一度の剣聖だという事が判明した。

そして、それと同時に、何の才能もないと思われていた主人公にも、1000年に一度の聖人(聖女の男バージョン)の力が覚醒し始め、二人は、魔王討伐の為、旅に…』


キンコーン! カンコーン! 


そこまで書いたところで、予鈴が鳴り始めた。


ガチャリ!!

!?


「いけない!次、体育だったわっ!!」

「うわっ!??」


その時突然扉が開き、胸に原稿用紙を抱えた小柄なショートボブの女子生徒が、屋上からこちらに飛び出して来た。


すんでのところで躱したものの、もう少しでぶつかるところだった。


「わっ!あなた、そんなところにいたら危ないでしょうっ?!」


「ご、ごめん…!」


あどけない顔立ちを真っ赤にして怒る女生徒に俺は咄嗟に背中の方にノートを隠し、壁に張り付きながら謝った。


「もうっ。気をつけてよねっ?」


彼女はふいっと俺から顔を背けると、大急ぎで階段を駆け下りていった。


俺はその様子を呆気にとられて見送っていたが、彼女の去った後、階段の途中に1枚の紙きれが残されているのに気付いた。


「ノートの切れ端…?」


それを手に取った時、思わず記載してある文字が目に入ってしまった。


《ジャンル:異世界もの》


【翼族の兄弟】


『自分の意思で翼を出し、空を飛ぶ事ができる翼族の兄弟の話。孤児だった二人は年配の元冒険者に引き取られ、冒険者の孫娘と共に故郷の村で育てられる事になる。

それから15年後ー……。』


これは、何というか…小説の原案みたいじゃないか?


今しがた俺がノートに書きつけていたものとそれを見比べて俺はたらりと汗を掻いた。


思わず拾ってしまったけど、これ…、どうしよう…??


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