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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク二人目
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秋川栗珠 嘘コク後の所業

 

 森下と坂井を後ろに従えて、秋川は今までに見せたことのない邪悪な笑みを浮かべていた。


「お前達、グルだったのか…。」


 俺は呆然と呟いた。


「そ。私がこの子たちに頼んで、梨沙に嘘コクを持ちかけてもらったの。

 だって、梨沙は美人で性格も良くって、クラスのカッコイイ男の子達ともすぐ、仲良くなっちゃうから、ちょっと邪魔かなと思って。

 悪いけど、評判下げて、クラスで孤立させてやった。

 バスケ部に中学の時の同級生がいたのは予想外だったけど。以前あいつも大分痛めつけやったのに、まだ吠えるとはね。今度、また黙らせてやらなきゃ。

 あ。君との取引の話だったね。

 これから梨沙の矢口くんへの嘘コクが、実はマジ告で、君とも二股で付き合ってるって噂を流すから口裏を合わせてくれないかな?


 梨沙の奴、せっかく痛めつけてやったのに、今度はバスケ部の柏木くんと付き合って楽しそうにしてるとか癪に障るんだよね。


 本当は、上手くすれば、梨沙と付き合えるかもって煽って交渉しようと思ってたんだけど、君、恋敵との仲を取り持ってあげちゃうくらいいい人だからさ。君の弱みを握ることにしたの。


 この動画拡散されたくないでしょ?絵里、スマホ貸して。」


 秋川は森下からスマホを受け取り、受け取ったスマホを俺に見えるように再生した。


『ちゃんと話をしたのは昨日からだけど、もう好きです。私と付き合って下さい。』


『ほ、本当に…?こんなに可愛い子から告白されるなんて、嘘みたいだ…。

 すげー嬉しいよ!俺で良かったら、付き合ってくれ。』


『本当?矢口くん。嬉しい…。』


「わぁ。ホラ見てぇ?動画、上手に撮れてるでしょ?」


 秋川はにっこりと微笑んだ。

 その笑顔はまさに天使そのものだが、今ではその笑顔が、邪悪なものを孕んでいる事が分かる。


「男の子ってバカだねぇ?可愛くニコニコしてたら、コロッと騙されちゃうんだから。

 矢口くん、いい人だからさ、友達思いの儚げな美少女とか好きかな?と思って演じてみたの。ど?満足してもらえた?」


「秋川ぁ!」


 思わず、声を荒げた俺に、秋川はニヤニヤしながらスマホを見せてきた。


「怖い顔しないでよ。今、私達に何かしようとしたら、動画にとって、学校に訴えるからね。私達とあなた、皆がどちらを信用するかは分かるよね?」


 秋川の後ろで、森下と坂井がクスクス笑っている。


 しくじった…。

 柳沢が俺に忠告してくれていたのに!

 まんまと嵌ってしまった。

 しかし、俺は努めて冷静に対応しようとした。


「その動画がなんだって言うんだ?それを、バカにする目的で、他の奴に見せたとして、俺は今更痛くもかゆくもないし、嘘コクしたお前も、評判落とすことになるんだぞ。」


「そんなのは、如何様にも加工できるんだよ。本当に痛くも痒くもないかはやってみないと分からない。後悔しても遅いんだよ。

 矢口くん?もう一度聞くよ。私に協力して?」


 俺は大きく息を吐いて言った。


「さっきまで、秋川を綺麗だと思ってた俺の目は節穴だったな。よもや、こんなに醜い女だったとは…。俺は美人としか取り引きしないので、どうぞお引取り下さい。」


 俺は芝居がかったら様子でペコリとお辞儀をした。


「!!」


 ぎっと目を釣り上げてこちらを睨みつけると、秋川はガタっと音を立てて、席を立った。


「矢口くん、バカだね!絶対後悔させてやるからね!」


「陰キャのくせに生意気!」


「カッコつけてんじゃねーよ!」


 秋川、森下、坂井は口々に俺に悪態をつきながら。教室を去って行った。


 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


 翌日、クラスL○NEに動画が送信されていた。

『ほ、本当に…?こんなに可愛い子から告白されるなんて、嘘みたいだ…。

 すげー嬉しいよ!俺で良かったら、付き合ってくれ。』


 加工され、俺だけが写った動画と共にこんなテロップがついていた。


【1-D 矢口京太郎(15)ただいま、絶賛嘘コク受付中!全校生徒の皆。よろ!】


「うーわ、こう来たか…。」


 俺はスマホの画面を眺めて、顔を顰めた。


 送り主は今日欠席している、蒲田。


 俺とは別のグループの陰キャで、おそらく、

 秋川の手駒にされたのだろう。


「矢口…。」


 柳沢は青い顔をしていた。


「もしかして、また、私のせい?」


 唇を震わせた柳沢だったが、俺は否定した。


「いや。俺のせいだ。

 柳沢の忠告を信じてやれなかった。すまなかったな。」


「ううん。しょうがないよ。栗珠、人の懐に入るの上手いもん。誰だって信じちゃうよ。」


 俺達は秋川の方を見た。


「蒲田くん、どうしてこんな事…。事情があったにしてもちょっとひどいよね。」


 悲しそうな顔で、サッカー部のイケメン、木村と話していた。


「秋川、お前どの面下げて…!」

「栗珠、あんたいい加減に…!」


 俺達が詰め寄ると、木村が秋川のまえに立ちはだかった。


「ちょっとお前ら、栗珠は矢口のことを心配してるんだぞ?なんで責めるんだ?」


 秋川は聖女のように、全てを赦し、慈しむような笑みを浮かべた。


「いいの。木村くん。こんな事があったんだもん。気が立ってるんだよ。気に障ることあったらごめんね。二人とも。」


「栗珠は優しいな。」


「「…!」」


 なるほど、こうなるのか…。


 こんな風に優しい微笑みを浮かべる少女を、動画を送らせた張本人だと誰が思うだろうか?

 木村と秋川が、何か話しながら、窓際の席に移動していくのを、悔しそうに見送るしかできなかった。


「と、とにかく、皆、スマホ出して!動画を消して!」


 柳沢が動画を消した奴の名前を一人一人チェックしていった。


 それはありがたいが…。動画というものは、一つあれば、あっという間に拡散する。


 そもそも、送り主の蒲田が、この場にいないという事は…。今頃は学校中に広がっている可能性も…。


 これからの行く末を思って俺は天を仰いだ。


 ま、何とか対策考えて、やってくしかないか…。

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