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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク二人目
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秋川栗珠 修羅場の後に…。

「梨沙…。ただ私は、梨沙がクラスで孤立してるのを見るのが辛くて。話を聞こうと…。」


「何言ってんのよ!?全部あんたの仕組んだことでしょ?矢口まで、騙して今度は何を企んでるの?」


 いきなり怒り心頭の柳沢からそう言われ、秋川は驚いたように否定した。


「そんな。ひどいよ。企むだなんて。私何もしてないよ。ただ、梨沙の力になりたくて…。」


「そうだよ。柳沢。秋川はお前の事を心配してたんだぞ。」


 柳沢のあまりの剣幕に気圧されつつ、口を出すと、柳沢は必死に訴えかけてきた。


「矢口!騙されないで!もう、こうなったら言うけど、矢口への嘘コクは全部この子が仕組んだ事なのよ!絵里と夏菜子を使って私にけしかけたの。」


「そんな事してないよぉ!梨沙自分のした事を人のせいにするなんてひどいよぉ!」


 秋川は涙目になって叫んだ。


「柳沢、それは流石に誤解じゃないのか?

 秋川はむしろ森下や坂井からお前をかばっていたじゃないか。」


「そこが狡猾だって言ってんのよ!自分は手を汚さずに、私を痛めつけさせて、自分はいい子のフリ。陰で笑ってたの知ってるんだからね!」


「そんな…。なんでそんな風に…。」


 秋川はショックを受けて青褪めている。


「言い過ぎだぞ、柳沢!」


 柳沢は泣きそうな顔で叫んだ。


「お願いだから、この子に関わらないで!矢口にこれ以上ひどい目に遭って欲しくない!バスケ部に栗珠と中学が一緒だった子がいて、話を聞いたら、何人もこの手口で人を陥れているらしいの。」


 感情的になって叫ぶ柳沢は、いつもの奴らしくなかった。

 一体どうしたというのだろう。


「柳沢、とにかく、ちょっと冷静に…。」


「よくもそんなでまかせを!嘘コクした梨沙にそんな事言われても、信じられるワケないでしょう?」


「!!」


 秋川から言い返され、柳沢は目を見開くと、ボロボロ涙を零した。


「ううっ、信じてくれないなら、もういいよ!矢口のバカ!どうなっても知らないからね!」


 そう言うと、凄い勢いで教室から出て行った。


 後には、呆然とした俺たちが残された。


「梨沙にあんな風に思われていたなんて…。ううっ…。」


 秋川は自分の席に崩れるように座り込むと、両手で顔を覆って嗚咽を漏らした。

 俺はそんな秋川を慰めるように傍らに立った。

「秋川…。お前が柳沢の事を心配していたの、俺は分かってるよ。だから、そんなに泣くな…。

 あいつ、どうしたんだろう?ちょっと冷静じゃなかったよな。」


「バスケ部に、中学のときの同級生がいるんだけど、その子が梨沙にあることないこと吹き込んだんだと思う…。私、その子に嫌われてたからさ。何かその子の好きな人が私を好きだったらしくて、逆恨みされちゃって。」


「そうだったのか…。」


 女子の世界の事はよく分からないが、秋川のように可愛い子は知らず嫉妬や恨みを買う事も少なくないのかもしれない。


「私何もしてないのに、女の子にどんどん嫌われていって。どんなに誠意をつくしても、誰も信じてくれない。私ももう誰も信じられないよ。」


「秋川…。」


 傷付いている秋川に、俺はなんて言ってやればいいか分からなかった。


「ねぇ。矢口くん。私の事を支えてくれないかな?」


「え?」


「私と付き合って。矢口くんが、側にいてくれたら、なんとかやっていける気がする。」


 頬に涙の跡が残る秋川に、縋るように言われ、俺は慌てた。


「な、何で俺?陰キャだし、ほとんど接点もなかったろ?秋川なら、リア充の男子と仲がいいし、彼氏選び放題だろうが。」


「ううん。派手な男の子は、女の子と遊んでる人とか、自分の事しか考えてない人しかいなくって。矢口くんみたいにちゃんと私の話を聞いてくれる人いなかった。

 付き合うなら矢口くんみたいな人がいい。

 ちゃんと話をしたのは昨日からだけど、もう好きです。私と付き合って下さい。」


 俺はクラスで孤立する柳沢を心配し、事あるごとに庇う優しい秋川の姿を思い浮かべた。


 そして今、目の前で深く傷付きながら、頬を染めてまごころを俺に伝えてくる秋川に惹かれつつある自分を感じていた。


「ほ、本当に…?こんなに可愛い子から告白されるなんて、嘘みたいだ…。

 すげー嬉しいよ!俺で良かったら、付き合ってくれ。」


「本当?矢口くん。嬉しい…。」


 秋川栗珠は目に涙をためて、笑顔を浮かべ

 …。





「ふっ、クククッ。アハハハッ!」


 お腹を抱えて笑い出した。


「秋川?」


「あー、やっと落ちてくれたかぁ。絵里、夏菜子、もういいよ!」


 秋川が教室の前方に向かって話しかけると、それぞれ、カメラとマイクを持った森下と坂井が教卓の後ろから出てきた。


「ハーイ。綺麗に撮れたよ。」

「音声もバッチリ。」


 ハメられたと気付いたときにはもう遅かった。


「ここからが本題だよ。取引をしようか。矢口くん?」


 森下と坂井を後ろに従えて、秋川はにっこり天使のような笑顔で微笑んだ。


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