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8回目の嘘コクは幼馴染みからでした  作者: 東音
嘘コク二人目
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女子会

「きょ、京先輩が、私の髪を好きと言ってくれてすごく嬉しい…っ!私髪切るのやめます。ずっとこの髪型でいますねっ。」


 涙目で嬉しそうな表情でそう言う私が、うちのリビングのテレビのスクリーンに映っていた。

 マキちゃんに、スマホをテレビに繋げてもらい、今日撮った動画を流したところだった。


「うおぉぉ!何これ?メッチャ可愛ええ!」


「でしょぉ?うちの芽衣子本気出せばすごいんすよ。ま、私の卓越した撮影技術のおかげでもありますが。」


 マキちゃんはドヤ顔で腰に手を当てた。


「しかし、芽衣子ちゃん、こんなに可愛かったら中学では男子達にモテモテだったでしょ?大丈夫だった?」


「ああ、もちろん男子からは、度々告られてたみたいですけど、芽衣子頭の中は昔から矢口先輩でいっぱいでしたからね。次々にバッサリ振ってましたよ。

 中には手荒な奴もいましたけど、芽衣子には武器がありますからね。」


「武器?」


「もー、武器といえる程のものじゃないって。それよりも!あなたには特に名前呼びしてほしいと言った覚えはないのですが?()()()()?」


「あ。私の事は梨沙もしくはリサリサでいいよ?」


 柳沢先輩は気にしないで?っていう感じで私に向かってにっこり笑った。


「そんな事も聞いてませんってば!」


「まぁまぁ、芽衣子。せっかくリサリサ先輩が、矢口先輩を落とす作戦に協力してくれるっていうんだから。」


「それは有り難いと思ってますけど…。」


 放課後、今後の作戦を練るため、マキちゃんと柳沢先輩に自宅に来てもらったのだが…。


 私は京先輩の心を奪った上、嘘コクした柳沢先輩に対してまだ複雑な感情を抱いていた。


「でしょう?今日はお土産にキャレットのポップコーン持ってきたんだよ。シクシク、そんなに嫌わないで?」


「うっ。まぁ、ポップコーンは有り難いですけどね…。」


 私はリビングのテーブルに盛り付けられた色とりどりのポップコーンを横目で見て歯切れの悪い返事をした。


「そうだよぅ!リサリサ様、ポップコーン様々だよぅ!エイっ。いちごミルク味投入っ。」


 既に柳沢先輩のお土産を口いっぱいに頬張っているマキちゃんは、私の口に一粒入れてきた。


「んむっ。んまーい!」


 サクサクの甘いポップコーンについつい笑顔になってしまう。


「喜んで頂けて何より!

 でも、作戦立てるっていうけどさ。

 この動画を見る限りでは、矢口と芽衣子ちゃん、かなりいい雰囲気出してない?特に作戦とか立てなくても、すぐにでも付き合えそうだけどな。」


「その表情が出るまで大変だったんですよ。マキちゃんでトライしたときは、一回ですぐ喜んでいたのに。私のときは何回やってもだめで。私って、京ちゃんにとっては魅力のない女の子なのかなって何だか自信なくしちゃいます…。」


 私はしょぼんとため息をついた。


「ああ、その事なら、芽衣子。全然気にする必要ないと思うよ?」


「えっ。マキちゃん。何で?」


「矢口先輩、明らかに芽衣子の事意識したり、可愛いなと思ってるんだろうなって場面何回かあったから。」


「えっ。本当?」


 だったら凄く嬉しいけど…!


「うん。女の子として見てないわけじゃないんだけど、芽衣子レベルの美少女に自分に好意を向けられてるのが信じられないだけだと思う。」


「そんな、自分で言うのもなんだけど、私なんていつも京ちゃんへの好意だだ漏れなのに…。そんな分かり易すぎる位の好意も信じられないなんて…。」


「「それな」」


 マキちゃんと柳沢先輩は大きく頷いた。


 どうしてそんな風に考えてしまうのか、京ちゃんの心情を考えると胸が痛かった。


「それぐらい、7回の嘘コクが京ちゃんの自尊心を削ってしまったって事なのかな?

 動画とか撮るのも、本当は嘘コクのトラウマがあって嫌だったのかも…。

 京ちゃんは優しいから、引き受けてくれたけど、嘘コクミッションこのまま続けてよいのかな?」


「芽衣子…。」


「京ちゃんの過去のトラウマを思い出させて、傷付けてしまうのなら、やめた方が良いのかも…。」


「違う!それは逆だよ!芽衣子ちゃん!」


 弱気になっていた私に、柳沢先輩が首を横に振り、強く否定した。


「7回の嘘コクが、矢口を傷付けて、恋愛について拗らせてしまったのはその通りだと思う。それは、私にも責任があることで、ぐうの音も出ない事実。

 だけど、芽衣子ちゃんが嘘コクのミッションをすることで、矢口のトラウマだったり、女子に対する不信感だったり、未練だったりを振り払って、矢口の心を癒やしてくれることになると私は思う。

 芽衣子ちゃんの矢口を一途に思う気持ちは

 それだけのパワーがある。

 私なんて、ちょっと芽衣子ちゃんと話しただけで、この子の力になりたいと動かされてしまったんだから!」


「や、柳沢先輩…。」


 知り合ったばかりの私にそんな風に言ってもらえて、私は不覚にも感動してしまった。


「いくら矢口とはいえ、側で、そんな尊い気持ちを自分に向けられ続けていて、響かないわけがないよ。気長に矢口の心を解していこう!芽衣子ちゃん。」


「や、柳沢先輩ぃ…。い、いや、全然うるっとなんてきていないですからね。うっ、うっ。」

 私はハンカチを目に押し当てて、必死に涙を堪えた。


「何で、私にだけツンデレキャラだよ?」

 柳沢先輩は苦笑いしている。


「うう…。ええ話や…。ファイトやで。芽衣子ぉ。」


 マキちゃんはポップコーンをハムスターのように口いっぱいに頬張りながら、涙目でファイティングポーズを向けた。


 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


「今から、嘘コク二人目〜七人目について、私が知る限りの情報を教えるね。

 一番要注意なのが、嘘コク二人目の子なんだけど、この子は矢口が嘘コクされたという噂を学校中に広めた人物なの。」


「噂を意図的に広めた人がいるって事ですか?ひどい事をする人がいるものですね!」


 柳沢先輩の話を聞いて、私は怒りを抑えられなかった。


「うん。自分の目的のためには、他の人を傷付けて、蹴落としても何とも思わない子だから気をつけて!しかも、人を陥れるときには自分の手は汚さず、周りの人を操る狡猾さも持ってる。」


「許せんなぁ!」


 マキちゃんも腕組みをしてプリプリ怒ってしている。


「厄介ですね。一体何という人なんですか?」


「同じクラスの秋川栗珠あきかわくりすって子なんだけど。」


「え?その人…。」


 私は思いがけない名前を聞いて、目を丸くした。


「芽衣子ちゃん、知ってるの?」


「は、はい。その人に明日のお昼、一緒に校内放送のコメント役をしてくれないかと誘われました。」


「「…!」」


 私は、途端に険しい表情になった、柳沢先輩と、マキちゃんと顔を見合わせた。


「「「怪しい…。」」」

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