あなたはそうしますか
さてさて、化粧は簡単に済ませて、続いてはクリ○ーを倒す時が来た。
一之瀬はどうクリ○ーを倒すのだろうか……。
「……これって、倒さずに行くのも可能ですか?」
『もちろんです!要はここを抜け出せればそれでいいんですから』
……へぇ、そんなルールだったんだ。
にしても、コース中に埋まっているクリ○ーを避けて進むのは、まず不可能なんじゃ……。
「……我が足を極限までに強化せよ」
一之瀬はポケットより携帯を取り出して、詠唱する。
……ここで足を強化する方法に出たか。
そして、少し後ろに下がり、思い切り飛んだ。
「うぉ……」
傍から見れば、空飛ぶお姫様って感じ。
……幻想的(?)な光景である。
「なるほど……そういう方法もあったか。だけど、私は敢えてクリ○ーを踏んで行くわ!」
一之瀬の隣のコースで走る女子は、クリ○ーを一匹一匹踏みつぶしながら進んでいく。
踏まれる度に、『ふぎゃっ!』とか『ぴぎっ!』とか聞こえるのが……地味に嫌だ。
他の二人もそうして進んでいる。
だが、クリ○ーを飛び越えた一之瀬の方が、遥かにスピードは上だった。
気づけば、お茶をコップの中に入れ終えているのだから。
「このままいけば、一之瀬がトップでゴール出来る!」
「けど、最後には問題の変態が……」
「……こっちにも変態がいるけどな」
俺は隣を指さしながら、そう言う。
そこには……コース上にいるやつと同じような目をした晴信がいた。
なんか、『ハァハァ』と荒い息遣いをしながら競技場を見ている。
……正直、他人のふりをしたくなる光景だ。
「……医務室に運んでこようかな」
「ショック療法って手もあるよ」
「だな……一発殴って気絶させるのもいいか……」
とりあえず俺は晴信の脳天をチョップする。
「ぐわっ!」
喰らった晴信は、バタッとその場に崩れ落ちた。
……よし、これで変態の処理は完了したな。
ま、一之瀬の方はどう処理するのかは知らないけど。
「お嬢ちゃん……俺と一緒に、やらないか?」
……ダイレクト攻撃だ。
こいつ、目が狂ってるだけじゃなくて、脳内も狂ってやがる。
ていうか、ピンク色だろ、間違いなく。
「やりません」
「!!」
一之瀬は軽くそう男に言い放つ。
瞬間……男は白くなり、化石化する。
ああ……ああいう逃げ方もありなんだ。
間髪いれずに言葉を挟むって言い方もありなのね。
しかも、一之瀬のような、一見静かそう(実際に静かな方なのだが)少女に言われる程、きついものはないものね。
「……失礼しますね」
一之瀬はすっと横を通りすぎる。
すげぇ……たった6秒で決着つけちまったぞ。
遅れてきたやつらの方は、
「い、いやよ!」
「そんなこと言わないでさぁ~、おじさんとエクスタシー感じちゃおう?」
「は、離しなさいよ!」
などと、捕まっていたり、
「ふむ。男には興味はないのだがな……」
「まぁ、そんなこと言って……男装してるんだから興味はあるんじゃないの?」
「男に興味があって男装してるわけじゃないからな。それよりも、私は美しい者に惚れるタイプなのでな……」
などと、勝手に自らの価値観を説明していたり、
「あ、あの……」
「や、ヤバいっす……僕もう耐えられないっす!」
言葉の圧力に耐え切れなくなって泣きそうになっていたり。
色々とカオスな状況に置かれているようだ。
そんな中で、
『おっと!他の選手三名が悪戦苦闘している中、第四コースの選手が何と一位でゴールイン!!』
……一之瀬が一位でゴールインしていた。
これで、俺達赤組に点数が入ったことになる。
……ちなみに、他三名は、男達の所で戦線離脱した。