や、ヤバいってこれは……
『さぁ始まりました、障害物競争女子の部。何だかよくわからないギミックも存在しますが、そこは気力でカバーしてくださいね!』
実況、真面目に実況しろや。
それじゃあ何が何だかよくわからないだろうが。
そんなことを考えている内に、参加者達は第一ギミックにさしかかっていた。
細い道を、バランスよく通って行く。
これは軽々クリア。
続いて、跳び箱。
これも軽々クリア。
「なかなかやるじゃない」
「あ、はい……」
ライバル意識をむき出しにして、一之瀬の隣で走る女子生徒は言う。
……そこまでして『最強』の名前を欲しがるのか。
いや、一之瀬自身はそんなこと考えたこともないんだろうけど。
『ここまで順調に進んでおります!しかし、ここからが勝負の決まりどころ……続きましては、コース上に置かれている服に着替えていただきます!あ、更衣室はありますから、そこで着替えてくださいね』
「いやぁ見れなくて残ね……んぐぁっ!」
「変態は黙ってろ」
何やら不穏な言葉を言いかけた晴信を黙らせた後、俺は競技場の方を見る。
まぁご丁寧に畳まれている服は……。
なぁ、これってもしかして……。
「一之瀬の前に置かれているのって、あの噂の……」
「……だよね、多分」
俺と葵の顔が引きつる。
それはどうしてかと言われると、置かれている服と言うのがちっとばっかし問題があってだな……。
「な、何よこれ!?」
一之瀬の隣の女子なんか、叫んでしまっていた。
みんな、目の前に置かれている服を見て、愕然としていた。
……誰の趣味で選ばれたんだ、あの服は。
つか、この体育祭、かなり真剣に遊んでる奴らばっかしだな、おい!
「こ、これを着ていかなくてはならないんですか?」
『さぁ戸惑っています参加者達ですが……おっと!早くも第一コースの選手が着替えはじめている!』
なんと……更衣室に入っていく一人の女子生徒がいるではあ~りませんか!(ネタ古い)。
「……」
『おっと!第四コースの人も更衣室の中に入った!やや遅れて第五コースの人も中に入った!』
一之瀬が決意を秘めた表情で更衣室の中に入り、それを見た隣の女子が、後から慌てて入っていく。
他の女子の中には、辞退する人が約半分いた。
これで残り走者は後四人。
お?一番最初に入っていった人が出てきたな。
「……ふっ。この服は私にはピッタリ過ぎたようだな」
髪を右手でかき分けた後に、そんなことを言っていた。
……本人の言う通り、あれは似合い過ぎだ。
つか、女子の制服着てるよりも似合っている。
『第一コースの選手が着てきたのは、何と我が校の男子指定制服だ!』
……そう。
あの人が着ているのは、男子の制服なのだ。
あの……普通にカッコいいんだけど、違和感なさすぎ。
『おおっと!!第四コースの選手も少し遅れて更衣室から出てきた!』
第四コースって言うと……一之瀬か。
なんか、どんな服を着させられているのか少し気になる所ではあるが……あれは、もしかして……。
「さ、流石にこの服は恥ずかしいです……」
『ああっと!!出てきたのはなんと、お姫様スタイルに進化した女子生徒だ!!』
……本当に、このチョイスは誰の仕業だよ。
不意にもときめいちまったじゃないか……晴信が。
「さ、最高だぜ!!……ハァハァ」
「……」
最早他人の振りを貫き通そう、そうしよう。
そうしている内にも、残りの二人も出てくる。
片方は一之瀬の隣で走っている女子で、もう片方は背が小さめの女子である。
隣で走っている方は……あれは、チャイナ服か?
もう片方は……ブカブカのジャージだった。
あれ、一人だけまともなのが……。
「え……エクスタシィイイイイイイイイイイ!!!!」
……うるせぇな、晴信。
とにかく、四人が出揃った所で、さて次のギミックだ。