ある意味カオスな競技
続いては障害物競争女子の部。
……さすがに男子の奴よりも自重しているらしいが、それでも十分すぎる程の金のかけようだ。
まずは細い道をバランスよく通って、その後は何故か置いてある跳び箱を飛ぶ。
その後からが金のかかっている点ともいえよう。
コース上に畳まれている服があるのでそれを着てから、しばらく走ると今度は化粧道具と鏡が置いてある。
そこで着替えをした後、今度は何やら顔に足がくっついたような形の……茶色い栗みたいな生物を避けた挙句の、お茶をコップの中に入れ、そして最後に何だかよくわからないが、男がいるからそいつからの誘いを、ビンタするなり無言で逃げるなりして、逃げ切れ、だそうだ。
……訂正、そこまで金かかってない。
て言うか、一部障害物とは言えない物もあるし、茶色い栗みたいな生物って……最早クリ○ーじゃねぇか!
それに、最後の男からの誘いとか、何それ!?
なんか女に飢えた獣のような目つきしてるけど、放っておいていいのか!?
「……あの、これ、リタイアすることもありでしょうか?」
そりゃ当然の反応だよな。
こんな男を目の当たりにして、逃げたくならない女子はいないだろう。
……俺がもしその場にいたとしても、即刻その場からダッシュで逃げていただろう。
『リタイアすることは可能ですが、一つでも障害物を越えてからにしてくださいね!』
……つまり、否が応でも細い道だけは絶対に通らなくてはならない道というわけか。
それ以降は、いつリタイアしてもOK。
……一之瀬、無理にやることはないから。
「細い道だけ通ったらやめてくれ……なんか、一之瀬が汚れそうでいやだ」
「た、確かにそんな気がしてきたかも……」
葵も、そんな言葉を返す。
目線の先には……飢えた男の姿。
……あれをどうにかしろよ、校長。
『ところで今回のこの競技なのですが、校長先生、どう思いますか?』
『ふむ。競技が終わり次第、あの男達は処理することにしよう』
『というか、あれは召喚された者達のようで、実体があるわけではないと聞きましたが?』
『そうみたいだな。先ほど実行委員の者達に聞いたら、そのような答えが返ってきた』
そりゃ実物があんな所にいたら、相当大変なことになるよな。
騒ぎどころじゃ済まなくなる。
……学校で犯罪を助長しているのか、ここは。
「……一之瀬春香、とか言ったかしら?」
「え?貴女は……誰ですか?」
みると、一之瀬が見知らぬ女子生徒に話しかけられていた。
ていうか、俺もあんな女子は見たことないな……S組じゃないことは確かだな。
「貴女の活躍をクラス分け試験の時に見させてもらっわ……」
クラス分け試験の時、か。
確かにあの時の一之瀬の活躍は凄かったな。
よもやあそこまでの魔術を使えるとは……そしてその上、戦闘がうまかった。
あの場面で設置系魔術を使うとは、なかなかナイスチョイスだったな。
「けど、最強の水遣いは私であることを、今日この場で証明してあげるわ!」
……魔術関係ない障害物ばかりあるような気もするんだけど。
それに、S組にいない時点でもう無理じゃん。
そういうのは、せめてSに来てから言おうぜ。
「は、はぁ……」
一之瀬は、困ったような表情を浮かべる。
まぁ……当然の反応だな。
『それでは参ります!よ~い……』
パン!
あ~あ、始まってしまった。
ある意味ではカオスな、障害物競争女子の部が……。