いやいやこれは無理だろ!
さて、俺達は今、全力疾走をしている。
理由は、いち早く借り物が書かれている紙を拾う為だ。
『おっと!参加者全員が全力疾走をしている!しかし紙を拾ってその内容通りのものを持ってこないと意味ないので、無意味な疾走だぞ?』
無意味じゃねぇよ!!
いち早く紙を手に入れることで、それについての捜索活動の時間を長くとることが出来るんだよ!
『そうだったんですか~初めて知りました』
……アイツ、確実に俺達の心を読んでるだろ。
読心術とか持ってるんじゃねえのか?(ちなみにここは魔術を使うような学校なので、心を読むような魔術もなくもない)。
「おっしゃ!俺はこれを選ぶぜ!」
「私はこれよ!」
俺達はついに紙を拾う。
それは折り畳まれているため、俺はその紙を広げた。
そしてそこに書かれていたのは……。
『愛を感じることが出来そうな人』
「……は?」
愛を感じることが出来そうな人って……哲学者か何かか!?
俺に誰を連れて来いと!?
「わ、私のも何これ!?」
「ん?どれどれ……」
叫ぶ刹那の持つ紙を横から覗いてみる。
するとそこには……。
『今青春を謳歌してる、ビーバー的な何か』
ビーバー的な何か!?
最早何を持っていけばいいのか分からないぞこれは!?
本当にこれを考えたのだれだよ!?
『おっと!無理難題な借り物に、参加者全員が立ち尽くしているぞ!!』
そりゃ立ち尽くすだろ!
俺の紙になんか、愛を感じることが出来そうな人とか、訳分かんないにも程があるだろ!!
「これ書いたの誰よ!」
『ちなみにこれらの紙に書かれている借り物は、一般投票によって選ばれたものとなっております』
一般投票だと?
何を言ってるんだこいつは。
つまりなにか?
これらの借り物は一般人の人達から選ばれたものがこの紙に書かれているわけなのか?
「……なによそれ。つまりこれも一般人が投稿したものだとでも言うわけ?」
『そういうことになりますね』
「ふざけるんじゃないわよ!どうしてこんなもんを投稿したりしたのよ!見つけたらぶっ殺してやる!」
「女の子がそんな物騒な言葉を言うんじゃない!」
とりあえず刹那にそう告げてから、俺はこの紙に書かれている人物を探しに行った。
と言っても、愛を感じることが出来そうな人ってどんな人だよ。
えっと……どういう奴がそれに値するのだろうか……。
まぁ、物凄くなんとなくで決めたが、コイツにかけてみよう。
「一之瀬!君に決めた!!」
「え?」
偶然次の列で障害物競争の順番待ちをしていた一之瀬を見つけた俺は、戸惑う一之瀬の手を握り、ゴールまで走って行く。
そして……。
『三矢谷選手、一之瀬選手を連れて一位でゴール!さて、他の参加者は……おっと!植野姉選手が佐々木選手を連れてのゴールです!』
……刹那の判断は正しいだろうな。
青春を謳歌してる、ビーバー的な何かと言われたら、ビーバーに似ている人物を選べばいいわけだ。
つまりは、佐々木を連れてくれば一発だったってわけだ。
まぁ、刹那な佐々木と話したことはなかったから、多少苦労したわけだが。
「あ、あの……」
「ん?」
ずっと競技の方を見ていた俺は、横にいた一之瀬に呼ばれる。
何故かその顔は赤い。
「て、手を……」
「手?……あ」
まだ手を繋ぎっぱなしだったな。
「ごめんごめん。今離すよ」
気付いた俺は、すぐに一之瀬の手を離す。
……少し残念そうな表情を浮かべたのは気のせいだよな、多分。
何がともあれ、波乱の借り物競争での俺の出番は終わった。
次は……確か大和の番だったな。