葵との会話中に襲う冷たい視線
タイトルに特に意味はないです。
さて、いよいよ最後の勝負となるようだ。
ここまでの戦いで、かなりの人が保健室送りにされている。
まぁ、ここまでやる必要はないだろ……普通。
「それにしても瞬一」
「何だ?葵」
俺の隣の席には、先ほど戦闘を終えたばかりの葵が座っていた。
……あれ、何か人を殺せそうな冷たい目線を感じるんですけど。
「あの術使えるようになってたんだ」
「ああ……ちょっと前に習得したんだよ。この日のためにってわけじゃなかったんだが、一応そうしといた」
流れでそんなこと言っちゃったしな(晴信に)。
「凄い威力だったよ……瞬一って、やっぱり凄いよ!」
「俺なんかよりも、お前のほうが凄いって。一年の時からSクラスに入ったなんてよ」
正直、葵に勝てる自信がないんだけど。
「けど私……一人だけでSクラスっていうのも、なんだか寂しかったな……」
「何言ってんだよ。お前にはもうSクラスの友達がいるじゃねえか」
「そういうことじゃないの……出来れば、瞬一もSクラスに来てくれたらよかったかな……なんて」
「え?俺?」
瞬間。
ギン!と、明らかにヤバい眼差しが、俺のことを貫いてくる。
や、やばい……こいつ、出来る!!
「どうしたの?瞬一」
「いや、ちょっと寒気が……」
俺のことを心配して、葵がそう言葉をかける。
余計は心配はさせたくないので、俺はそう言葉を返す。
……本当に心配はいらないわけだしな。
「そう?ならいいんだけど……」
「ところで、そろそろ勝負が始まるみたいだぜ?見てみようぜ」
俺と葵は、観客席からこれから戦うのだろうメンバーの顔を確認する。
……見たことのない奴らばっかりだ。
……ん?
あの紫色の長い髪の女子……携帯を片手に持ってるな。
科学魔術師って所か。
……あれ?
「そういえば、高一の時に知り合った奴だったな」
「あいつって?」
「あの紫色の長髪の女子だよ」
名前は確か……一之瀬春香だったか?
確か、変な奴らに絡まれてる所を助けたことがあったな……ま、今は置いておこう。
「どんな戦い方するんだろう、あいつ……」
「……またなんだね、瞬一」
またって何のことだよ……葵。
最も、この場合には何のことかを聞かない方がいいというのを、知っている。
なぜなら、その後がややこしくなるからだ。
「えっと、他の相手は……と」
他の三人の姿を見る。
しかし、その三人はまったく知らない人物だった。
戦闘場に立っている人間は、一之瀬を含む女子が二人に、男子が二人か。
何というか……見事にバランスの取れた編成だこと。
「お?始まるみたいだぜ」
「ああ……って、いつの間に戻ってきてたのか、晴信」
ふと横を見ると、何故か平然とした様子で座っている晴信。
「あれ?晴信、戻ってきたんだ」
「まあな。最後の戦いくらい見ないとな」
確かにもったいない気がするな。
俺も今さっき戻ってきたばかりだけどな。
「むぅ……」
「悪かったな。二人きりの所を邪魔したりして」
「そ、そんなんじゃないってば!」
顔を赤くして、葵は両手をブンブンと振って否定する。
……何というか、葵ってつくづく、
「可愛い、か?」
「え?」
晴信から発せられたそんな一言。
それを聞いた葵は、
「え?本当?」
「う……」
上目遣いに、そんなことを尋ねてくる。
……これ、本当に意識しないでやってるんだよな?
だったら、
「……ああ、可愛いとは思うぜ」
とりあえずそう言っておく。
「ありがと♪瞬一」
笑顔で俺に抱きついてくる。
と、同時に。
更に視線は強くなっていた。
……って、よく見たら闘技場の方から俺のこと睨んでんじゃねえか!
戦いに集中しろっての!!
『それでは位置につけ!』
校長の声が闘技場中に響く。
そして訪れる、静寂の時間。
『はじめ!!』
同時に、四人は動き出した。
後二話くらいで、クラス分け試験が終わると思います。