始まってしまった体育祭
さて、ついに問題のこの日がやってきた。
その日とは……体育祭だ。
楽しいんだが、とっても疲れて、雷山塚至上最も危険な日とも言えるこの日。
「楽しみだな、瞬一!」
「……そうも言ってられるのも今のうちだぞ、晴信」
晴信は笑顔で俺にそう言ってきた。
この笑顔が、いつまでもつかどうか……。
「ん?どうした瞬一?」
「いや、何でもない」
そんなことをしている内に、校長が壇上に上がり話を始めた。
「本日は快晴なり。体を動かすのに十分な日であると思う。みな思い切り体を動かして、優勝を目指すように」
短い言葉でまとめて、校長は壇上より降りる。
……何か、今回の校長、話がわかってる?
『次に、選手宣誓です。選手代表、小山千里さん、お願いします!』
「はい!」
「……ん?おやま……ちさと?」
なんか、その名前に聞き覚えがあるような……。
えっと……どこで聞いたんだっけ?
「ほら、前に佐々木君と一緒にソージの葉を採りに行ったときに、佐々木君が助けたいって言ってた先輩の名前だよ」
「……ああ!」
後ろより葵が教えてくれたので思い出すことが出来た。
そうだ……小山先輩って、あの人のことだったのか!
「宣誓!私達は、スポーツマンシップに則り、正々堂々と戦いぬくことを誓います!」
宣言し終えると、パチパチパチパチと大きな拍手の音が鳴り響く。
……へぇ、結構美人じゃねえか。
何というか、……大和撫子なんて言葉が似合いそうな人だな。
佐々木、羨ましいぞ。
「見惚れてたか?」
「そりゃおまえだろ」
「分かる?佐々木がいたとしても、まだ小山先輩ってフリーだよな?狙っちゃおうかな~」
「やめとけ。佐々木に殺されるぞ」
佐々木も案外馬鹿に出来ない強さだからな。
あの時は一発でブッ飛ばせたけど、次の機会でアイツと戦うようなことがあったら、苦戦するやもしれん。
ま、負ける気はさらさらないけど。
『次に生徒会長からの言葉です。生徒会長の日比谷凛さん、お願いします』
「生徒会長?初めて名前を聞いたな」
「お前、この学校のことに関心なさすぎだな」
「さすがは瞬一……学校のことに無関心なのは前から変わってないね」
「うっさいぞ、二人とも」
前と後ろからそんなことを言われる筋合いはない。
……まぁ、学校について知ってることといったら、校長の名前と学校行事がいつあるかとかぐらいだもんな。
部活だって未だ全部でどのくらいあるのかとか、どんな部活があるのかを全部知ってるわけでもないし。
生徒会のメンバーなんて面倒くさいから覚えてられないしな。
「噂によると、生徒会のメンバーっていうのは、時折様々な依頼を片づけてるみたいだよ」
「生徒からの依頼を聞くのが生徒会じゃねえのか?」
「そうじゃなくて、軽い依頼から重い依頼まで……つまり、魔術的な戦闘が必要となってくるような依頼まで片づけてるって噂だよ」
「……マジかよ」
どんな集団なんだよ、生徒会ってのは……。
ひょっとして、生徒会って名前の組織なんじゃ……。
「みなさん、おはようございます」
などと考えている内に、我が校の生徒会長だという日比谷凛先輩の話が始まった。
……生徒会長務めてるんだから、高校三年生なんだよな?
「本日は見事な体育祭日和となりました。各組全力を出して、優勝目指して頑張ってください!それではここに、体育祭の開催を宣言します!!」
えっと、日比谷先輩の特徴は……。
黒髪ロングヘアー、釣り目の黒い瞳、高い方だろうと思われる身長。
そして……。
「スタイルがボンッキュッボンッ!……だろ?」
「んなこと考えちゃいねぇっての。ただ……綺麗な人だなって考えたけど」
「……うう」
後ろで葵が唸ってるけど、俺、何か言ったか?
何がともあれ、この生徒会長の言葉から、本日の体育祭は正式に始まりを告げたのである。
……俺も予想だにしなかった、強烈な体育祭が。