険悪なムード
「……おう?みんなもういたのか」
教室に来てみれば、すでにいつものメンバーは教室にいた。
葵は・一之瀬・大和・北条の四人だ。
「おはよう、瞬一」
相変わらずの眩しい笑顔で、俺に挨拶をしてくる大和。
……眩しい。
「おはようさん。みんなもおはよう」
そう挨拶をし返して、俺は他の三人にも挨拶をする。
「おはようございます」
「おはよう、瞬一!」
「朝から大和君の笑顔を見れるなんて……」
上から順番に、一之瀬・葵・北条の順番だ。
最後のはもはや挨拶とは言わないよな。
まぁ、トリップ状態になってる北条は放っておいて、
「ゴールデンウィークも終わって、今日からまた授業か」
「私は学校は楽しいからいいけどね」
「むしろ私は毎日学校にいてもいいわね……大和君の顔が見られるなら(*^o^*)」
「あのな……」
流石の大和だって、学校が休みの日は、ここには来ないだろう。
ずっと学校にいるとか……学校引きこもり少女か、お前は。
「そういえば、今度の日曜日は体育祭ですね」
そう話題を提供してきたのは、一之瀬だ。
「そう言えばそんな行事もあったっけか」
体育祭。
この学校は、毎年五月の最後の日曜日に体育祭が開かれることになっているのだ。
その体育祭も、もうすぐなのか……。
「今年の体育祭も、波乱の予感がするな」
「だね。去年も楽しかったけど、ものすごい荒れようだったからね」
大和の言っていることは正しい。
確かに、この体育祭は楽しい。
けど、一歩間違えればそれこそ大怪我しかねないような競技すらあるから、この体育祭は気が抜けないんだよな。
……まぁ、ハッチャケはするけどな。
「果たして今年は何の競技に割り当てられるのでしょう?」
一之瀬が心配そうな声色をして呟くのも頷けるのだ。
競技を選び間違えたら、死ぬ覚悟をしなければならないしな。
「……おい」
そんな時だった。
扉のすぐ近くから声が聞こえる。
……そう言えば、扉の近くで屯してたからな。
入って来る奴の邪魔になってたか。
「ああ、悪い……って、お前か」
「……俺だからどうかしたのか?」
不機嫌そうな表情&声で俺達に話かけてきたのは、最近まともに話してもいなかった由雪迅その人だった。
「何そこで道塞いでんだよ。早くどけ」
「……どく変わりに、一つ聞きたいことがある」
「……何だよ。さっさと要件を言え」
一応話は聞いてくれるっぽいな。
んじゃ、一つ聞くか。
「お前、人のことが嫌いなくせに、どうしてここに来て授業とか受けたりしてんだ?」
「……目的がある。それだけだ。分かったならとっとと失せろ。これ以上は時間の無駄だ」
「……ああ」
逆上しそうになったが、何とか踏み留まることが出来た。
俺達は、自分の席に戻っていく由雪を眺めてから、
「……なぁ、アイツって前からずっとあんな感じなのか?」
ここにきて初めて晴信が口を開く。
そして、葵にそう尋ねた。
「うん……前からずっとあんな感じだよ。いつも教室で一人孤立してて、授業は普通に受けてるみたいだけど、何故かは分からないけど、クラスにいる人と自分から話そうとはしないんだよ」
「……ふ~ん」
理解はしたが、納得は出来なかった。
性格は人それぞれって言うが、そんなに人が嫌いなら、最初から高校なんて入らなければよかったのにな。
目的があるとか言ってたけど……そこまでして果たさなければならない目的でもないだろうに。
「……」
そんな由雪を、何故だか知らないけど大和はジッと見つめていた。
「……大和君?」
一之瀬が大和に話しかける。
すると、
「何?春香」
大和は平然とした顔で、一之瀬のことを見る。
……なんだったんだ、今の大和。
いつもとは違うような……そんな感じがした。
「お~い、席につけ」
俺が大和に話かけようとしたら、ちょうど先生が入ってきてしまい、話すタイミングを逃してしまった。
渋々俺は席につき、そしてHRが始まった。