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Magicians Circle  作者: ransu521
入学試験編
8/309

科学魔術師と自然魔術師の違いについて

「ん……」


目覚めた時、俺は何故だかベッドに眠らされていた。


「あれ……俺、勝ったはずなのに」

「最後のあの術を使った後、あなたはその場に倒れこんでしまったのよ」

「え?」


どこかから声がする。

……まぁ、いろんな人のうめき声も混ざってはいるが。

その中で、ひとつだけ大人びた声が聞こえた。

ていうか、大人の人の声だった。


「あれ……吉沢先生?」


その声の正体は、吉沢先生―――フルネームで言うと、吉沢茜先生だ。

この学校の保険医の人であり、なのでいつも白衣を着ている。

グラマラスなボディ、その優しい性格、そして何かを見抜くような、吸い込まれるかのように魅力的な瞳から、この学園の中でも人気が高い人なのだ。


「どうしたのかしら?私のことをじっと見て……」

「い、いえ、なんでもないです」


当然、大人というか、この学校の関係者なので、敬語を使わざる負えない。

普段敬語を使っていない俺からしてみれば、こういうのは苦手な方に入るのだ。


「あらあら。初々しいわね」

「はぁ……ところで先生」

「何かしら?」

「俺、戻った方がいいっすか?」


あ、敬語が一瞬離れてしまった。

しかし、吉沢先生はそんな細かい所は気にしないみたいで、


「ええ。もう治療は済ませてあるわ。なくなってた魔力も戻してあるし、もう戻ってもいいわよ」

「あ、ありがとうございます」


ペコッとお辞儀をする俺。


「いいのよ。私は傷を治すのが仕事なんだから」


そう言ってくれた吉沢先生に、俺は心底ホッとした。

そのまま俺は、恐らくまだ戦いが続いているだろう闘技場へと向かった。















「おお、やってるやってる」


俺が改めて中に入ってみると、すでに戦闘は始まっていた。

しかも、どのくらい俺は眠っていたのか。

いつの間にか最終戦の一歩手前まで来ていたらしい。


「うわ……俺、本当にどんだけ寝てるんだよ」


本当に、馬鹿みたいだ。


「……あれ、葵じゃないか?」


ふと、闘技場にいる一人の女子に目を向ける。

そこには、細川葵の姿があった。

身長は低め、体重軽い、スタイルはちょっと足りない、しかし顔は可愛いらしい。

らしい、と言うのは、晴信の評価から引用してきたものだからだ。

茶色で肩まで長さの、ショートヘアーと、澄んだ瞳が特徴的だ。

得意魔術は、確か俺と同じ雷だったような気がする。

ちなみに、俺や晴信と同じ、自然魔術師である。

ん?

自然魔術師と科学魔術師の違いが分からないかもしれないな。

なら、ここで少し、そのことについて説明しておこう。

自然魔術師は、自らの力のみで魔術を発動することが出来る……いわば物語の世界に登場するような魔術師だ。

自分の意志で魔力を練り、それを利用して魔術を発動する。

魔術発動のメカニズムは、こんな感じだ。

欠点として、こちらの方は自分の体の強弱によって、その術の威力等が変動する点だろうか。

一方、科学魔術師の方はと言うと……。

先ほど述べた、魔術発動までのメカニズムを、自らの体で行うことが出来ない人達がいる。

それは努力等が足りないわけではなく、そういった体の構造になっている為だ。

この世界に住む半数の人間が、それに値するらしい。

そう言った人達は、自分の力だけでは魔術を発動することが出来ない。

そこで、その過程を行えるように改良された物を利用して魔術を発動する。

それが、科学魔術師の特徴。

こちらは、自分の体にかかる負担があまり少ないので、ほぼ同じ威力の術を発動させることが出来るのが利点。

欠点としては、魔術発動までの時間のラグと、機械を破壊されてしまえば魔術が発動出来なくなってしまう点だ。

最も、科学魔術師の人達は、予備の物を何個か持っているみたいだけど。


「きゃっ!」


おっと、説明してる間にクライマックスになっているな。

葵と誰かの一騎打ちか……相手には悪いが、この勝負は葵の勝ちだな。


「太古より眠りし雷の精霊よ、私に力を貸して!」


そう。

雷属性の魔術師だとしても、その得意分野というのがある。

例えば、俺の得意技が攻撃系と防御系だとしたら……。


「出でよ、ライズ!!」


何処かから、謎の精霊らしきものが現れる。

そう、葵の得意分野というのは……。


「我が雷を受けよ!!」


その精霊から放たれる強力な雷は、相手の体を確実に包み込む。

そのまま相手は、気絶した。

そう、葵の得意分野は、召喚系なのである。

しかも、雷属性だけではなく、威力は弱いながらも他の精霊も呼べてしまうのが、葵の最大の利点。

学園側も、この力に関してはかなりの過大評価をしているらしく、一年の時は俺と晴信とは違い、いきなりのSクラス入学だった。

中学の時までは同じクラスだったのに……。

てか、あの時の葵、なんだか寂しそうな顔をしていたような気がするんだが……気のせいだろう。


「えへへ♪やったよ、瞬一♪」


俺の方を見て、Vサインを送る葵。

……気づいてたのか、俺がいたこと。

俺は葵に、右手親指を立てて、つきだして見せた。
















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