華麗なる剣劇
二人は同時に走りだした。
相手を確実に仕留めるためのコース等も考えて動いていた。
その結果。
ガキン!という音が鳴り響き、互いの得物はぶつかり合う。
「……ハッ!」
もう一度、打ち合う。
さらに、打ち合う。
両者一歩も譲らずと言った状態であった。
「なかなか強いな……けど、これならどうだ!!」
瞬一は一旦後ろに下がり、そこから胸めがけて刀を突き刺しにかかる。
しかし、メルゼフもその攻撃を受けてしまう程、弱くはない。
「宣言してからの攻撃なんて……無謀すぎだ!!」
その攻撃を剣を下から上に振り上げることによって軌道を変えさせると、すかさず反撃にかかる。
「ゲッ!」
慌てて瞬一は体をひねって避けるが、わき腹部分を、わずかに剣がかする。
その部分だけ、服が破れていた。
「あ~あ。せっかくこの日の為に用意してもらった服が……」
そう。
さすがに見合いの場だというのに、普段着でいるのはどうかということで。
国王より正装となるような服を借りていたのだ。
「どうすんだよ、これ。かなり高いと思われるぞ?……俺が勝ったら、服の弁償も付けたしてもらおうか?」
「いいだろう。けど、勝つのは私だ……!!」
メルゼフもまた、剣による突き刺し攻撃にかかる。
狙うは喉元。
「甘い!」
瞬一はそれをしゃがんで避けて、
「テヤァ!」
峰で相手の腹を斬る……!!
「ガハッ!」
これはメルゼフの腹部に華麗に入った。
まともにその攻撃を喰らったメルゼフは、一瞬の痛みに襲われる。
その瞬間を、瞬一は見逃さなかった。
「タァッ!」
力を込めて、刀を上から下に降り下ろす。
だが、その攻撃は、届かない。
「!!」
痛みから解放されたメルゼフが、バックステップをしてその攻撃を避けた。
「……実戦経験があるようだな」
「伊達にアイミーを護衛したわけじゃねぇんだよ……最も、最後はアイミーに守られちまったけどな」
と、瞬一は言った。
「最後の部分は聞かなかったことにしておこう……聞いた話だと、君が相手にしたのはクリエイターだと言うのだからな。寧ろ、生きてる時点ですでに君は凄いだろう」
「お褒めの言葉をどうも……なら、それついでに勝負にも負けてくれねぇか?」
「断る……勝利は自らの力で手に入れてこその勝利だって、習わなかったか!!」
ドン!と地面を蹴るメルゼフ。
瞬一も、この後襲ってくるだろう攻撃を受ける為に、構えをとる。
「セイッ!!」
メルゼフが剣を降り下ろす。
瞬一は、その攻撃を右にステップをして避けた。
そして、その力を利用して、右方向に回転。
そのままメルゼフを斬ろうという魂胆だ。
だが、メルゼフもその攻撃を迎え入れる程、甘い男ではない。
「かかった……!!」
「!?」
不敵な笑みと共にそう宣言するメルゼフに、瞬一は思わず目を見開いてしまう。
だが、瞬一の攻撃は止まらない。
このままの状態なら、確実にメルゼフの体を両断することが出来るだろう。
だが、そうはならなかった。
「……え?」
何故なら、メルゼフはその攻撃をジャンプして避けたからである。
前方向に若干飛び込むような回転だったので、自然と足は前の方へ倒れていく。
メルゼフは、左手を―――瞬一の刀に乗っけた。
「何!?」
そのまま左手をバネにして飛び、空中で体勢を整え、
「頭から突き刺す!!」
瞬一の頭部目掛けて落下する。
剣は、上から物を突き刺せるように、刃を下に向けて。
「うわっと?!」
慌てて瞬一は、メルゼフの落下地点より避難する。
すると、ドシン!という落下音と共に、剣が刺さった部分に穴が空いているのを確認することが出来た。
土ならまだしも……ここはコンクリートの床だ。
そう簡単に穴を空けられるわけでもない。
「……こんなのまともに喰らってたら、今頃死んでたな、俺」
コンクリートの床に穴を空ける程の勢いを持った攻撃。
生身の人間で、今の攻撃を喰らって無事で済む者はいないだろう。
「ほう。私のこの攻撃を避けたか……やるではないか」
「あの攻撃を受けて易々と死んでやれる程、俺は人間出来てないっつの」
距離を取りつつ、二人は会話をする。
「……っ!!」
瞬一は、再び地面を蹴り、メルゼフ目掛けて突っ込んで行った。