何で決闘やることになるの?
「けどよ、邪魔するったって、どうやって邪魔する気だよ?」
俺は黒服の男―――改めてメルゼフに向かって尋ねる。
するとメルゼフは、
「何って……決闘だ」
決闘……。
何て物騒な言葉なんだ、それは。
「決闘なんて……そんな物騒なことはしないでください!」
「……あまりおすすめは出来ませんね。私からもやめた方がよいとおすすめします」
「……いや、やらせてやろう」
「「お父様(レイブン様)!?」」
まさかの国王からの許可に、俺すらも驚いた。
自分の家で暴れられるようなものだぞ?
「男同士のプライドをかけた戦い、大変結構!思う存分暴れるがよい!」
……駄目だ。
昨日の夕食時の国王になっちまってる。
なんというか、楽しいものを見つけた子供のような目をしてる。
こうなってしまっては、人間というのは止められない。
「……分かったよ。その決闘とやらに付き合ってやるよ」
「……君ならそう言ってくれると思ってたよ」
まったく。
見合いならまだしも、いきなり決闘なんて展開に持ってかれるなんて、今日は何て日だ。
神様がいたら殴りたい所だぜ。
「とりあえず……外に出よう。話はそれからだ」
あんな話し方する奴も大概珍しいが……にしても、何でまたコイツはアイミーを?
王子って地位を見せ付ければ、女なんて寄ってくるだろうに(俗に言う地位乱用って奴か?)。
とりあえず俺達は、真ん中に噴水がある、正面玄関に出てきた。
花壇やらなにやらがあって、ここは決闘するにあまり相応しくない場所のようにも思えるんだけどな。
「ここを選んだのは……隠れるようなものがない所を優先に考えた結果だ。それに、ここが一番広かったからだ」
「隠れてやり過ごすなんて考えはなかったけどな……んで、具体的には何をするんだ?」
入り口付近では、心配そうな表情を浮かべるアイミーと、そんなアイミーの隣で何やら結果を見届けようとしているシュライナー。
そして……スゲェワクワクしてる国王がいた。
なんだこのバランス?
凄いカオスな場になりつつあるぞ。
「ではルールを説明しよう」
男の言ったルールを軽くまとめると、こんな感じだ。
使用武器は刀、もしくは剣のみ。
この双方なら、どれだけ使用しても可能らしい。
魔術による攻撃、防御は禁止。
剣・刀を出す魔術のみは、使用しても構わないのだという。
つまり。
「ほぼ実力勝負というわけか……」
「一応聞くが、剣、もしくは刀を出す魔術は習得してるか?」
「当たり前だろ。ソイツを使って修羅場乗り越えたこともあるんだからな」
言いながら、俺は刀を取り出す。
とりあえずは一本。
二刀流なんて剣術は、俺には無理だからな。
「承知した……なら、私も剣一本で勝負しよう。もとより私は、この方が好みなのだがな」
相手も、俺と同じように、自らの得物を取り出す。
それは剣。
刀vs剣か……なかなかお目見え出来ないシチュエーションだな。
武器を使っての戦いというよりも、魔術を使っての戦いの方が多いからな。
「相手を降参させた方の勝ちだ。それ以外は……例え怪我をしようとも、続けるつもりだ。くれぐれも、峰で戦おうとか半端な考えは持たない方が、身の為だ」
「余計な忠告どうも……後でそんな忠告をしてしまったことを後悔すんなよな」
……言ってはみたものの、俺は刀での実戦経験はほとんどない。
ぶっちゃけ、この勝負だって俺が負けるんじゃね?
「では、始まりの合図を、アイミーン、お願い出来るか?」
「は、はい……」
あまり乗り気ではなさそうなアイミーだったが、渋々引き受ける。
その顔には、やはり心配するような色が。
「……心配すんな。俺は負けないから」
「……信じてます」
「勝ったらアイミーンは私の嫁とする……いいな?」
「俺が答えるべきじゃねえんだろうが、いいだろう。俺は負ける気なんてねぇからな。その代わり、俺が勝ったらアイミーに二度と近づくな」
「いいだろう。勝つのは私だからな」
言い合って、俺達は構える。
暫しの静寂の時間の後。
「では……始めてください!」
アイミーの声が響くと同時に、俺達は動き出した。