アイミーとの会話
風呂に入ってすっきりした俺達は、そのまま寝ることにした。
なんだかんだ言って、今日は結構充実した一日だったからな。
寝るにはもったいないかもしれないが、奈何せん体がもたない……。
「う……眠い」
窓から外を眺めてみる。
……景色が綺麗だ。
街の光でライトアップされた、何だか函館の夜景でも見ているかのようだ。
「……こんな平和な国があったなんてな」
日本じゃ考えられないな……。
最近の日本だと、いろんな事件が起きまくりだからな……。
軽い犯罪で言えば万引き・痴漢・強盗等……。
重くなってくると、ひき逃げ・誘拐・殺人。
それらのどれかが、毎日欠かさずニュースなんかに出るほどだ。
そして何より……政治家の汚職やら天下り。
……この国じゃ、そんなこともほとんど起きないんだろうな。
美しい国には、清らかな心を持った奴がたくさんいると思うし。
けど……考えてみれば、クリエイターもこの国の奴なんだよな。
……いや、違うのか?
まぁ、どっちにしろ、アイツの属している方が特別だと考えてもいいんだろうな、この国では。
「いつかこんな平和な時代が訪れればいいな、日本にも……」
柄じゃないが、そんなことを考えてしまうような光景に、俺はしばらくの間見惚れていた。
そして……。
トントン、と部屋の扉がノックされる音が耳に届く。
「誰だ?」
「私です」
この声は、アイミーか。
「入っていいぞ……つっても、俺は客人なんだけどな」
俺は外にいるだろうアイミーにそう言う。
すると、扉が開かれて、そこから入ってきたのは。
「どうしたんだ?アイミー」
やはり、思っていた通り、アイミーだった。
けど、こんな時間にこの部屋に何の用だ?
「シュンイチとお話がしたくて……」
「俺と?」
「ええ……明日のお話で」
明日……っていうと、お見合い的なことの話か。
「ああ、いいぜ。少しばかり話そうか」
「はい!」
俺がそういうと、アイミーの顔は途端に笑顔になる。
……俺は明日、こんなにも美人な人と見合いをすることになるのか。
……何だか少し楽しみだな。
……にしても。
「そういえばよ、アイミー」
「何でしょう?」
「黒い服を着て、黒い帽子を被った男って、誰だか知らないか?」
「黒い服を着て、黒い帽子を被った男の人、ですか?……いえ、分からないです」
アイミーも知らないのか……。
ますます分からなくなってきたな、あの男のことが。
一体あの男は何者で、この城にいる目的は何なのか。
それがよく分からなくて思考に入ろうとしたのだが……すぐにそれをやめる。
目の前にアイミーがいるというのに、一人勝手に思考の世界に入ってしまうのは、男として、というか人間としてどうかと思ったからだ。
「にしても、この年でお見合いすることになるなんてよ……お互い誕生日も迎えてなくて、まだ16だろ?」
「ですね。私もちょっと驚いてしまいました。けどお父様が、こういうのは早い方がいいっていうから……」
「早いって言っても、適正年齢くらいは設けられてるだろ、普通」
いくらなんでも、高校生に見合いは早すぎるだろ。
「ところで、アイミーって学校とか通ってるのか?」
「いえ、私は幼い頃から先生がこの城に来て、一対一での勉強でしたから……」
そうなってしまうのも、何だか頷けるな。
アイミーはこの国の王女だ。
王女がそう簡単に外出してしまうと、命の危機にさらされることにも繋がるからな。
「学校……行ってみたいか?」
「出来れば……行ってみたいです。どういう所なのか、私にはわかりませんから」
「だよな……」
確かに授業はたるいけど。
友達がいるという点では……学校という場所はいいところなのかもしれない。
「他にももっと話をしようぜ」
「はい!」
その後俺達は、いろんな話をして過ごした。
アイミーのこと。
俺のこと。
晴信達のこと。
シュライナー達の話のこと……など。
「おっと。もうこんな時間か」
気づけば十一時がもうすぐ終わり、十二時になろうとしていた。
「今日はここまでですね……また、明日」
「ああ。また明日な、アイミー」
そう挨拶をすると、アイミーは俺の部屋から出て行った。
「……ふぅ、寝るか」
俺はベッドに入り、そのまま寝てしまった。
……明日のこととかを考えながら。




