国王に謁見
料理は……とにかくうまい。
何だよ、この料理。
今まで食べたことのないような味ばかりだ。
「う、うまい!」
晴信なんか、頬を落としそうだ。
口にはしていないが、一之瀬と空も、料理をうまそうに食べていた。
「瞬一!このお肉、とってもおいしいよ♪」
先ほどから笑顔でそんなことを伝えてくれるのは、隣に座っている葵だ。
隣でフォークに肉を差しながら、俺にさし出してくるのだけはやめてくれ……。
何というか、シュライナーがそばで見てて、笑いをこらえているのが見えるから。
「……シュンイチも罪つくりな男ですね」
「何言ってんだよ、お前」
挙句の果てには、意味の分からないことをおっしゃるほどだ。
……シュライナーよ、それはどういう意味だ?
「や、大和君……こっちの野菜炒めなんか……ど、どうかしら?」
「うん。どれどれ……」
大和は、北条に勧められたものに箸を伸ばし、食べる。
「……うん。おいしいね」
「本当?!よかった……」
よかったも何も、作ったのはここの城の料理人だぞ?
なかなかに謎なことを言ってくれるな、コイツは……。
その時。
コンコン、と食堂のドアをノックする音が聞こえてきた。
「お嬢様とレイブン様がお見えになりました」
「分かりました。通してください」
外から声が聞こえてくる。
その通知は、アイミーと国王がこの食堂にやってきたことを意味していた。
……いよいよアイミーに会えるのか。
久しぶりだし、どう挨拶しようかな……。
「では、入ります」
ギィッと、重い扉が開かれる。
そして、そこから入ってきたのは。
「……うわぁ」
目を輝かせて、たった今入ってきた少女を見つめる葵。
他のみんなもまた、その姿に見入っていて、晴信なんか、
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!みなぎってきますぞぉおおおおおおおおおお!!」
何か、どっかの戦国武将みたく、みなぎっていた。
あの大和でさえつい振り向いてしまった程だった。
まずは国王について述べてみよう。
結局若い感じであり、見た所、50代前半と言ったところだろうか。
あごひげが少々伸びており、瞳の色はスカイブルー。
髪の色はアイミーとは違い黒。
右手には、王の印なのかは知らないが、杖らしきものを握っていた。
赤いマントを羽織り、その下には黒いスーツらしきものを着ていた。
対するアイミーの方はと言うと……。
「……綺麗だ」
一言で言うならば、綺麗。
派手すぎない白のドレスを着ていて、身に付けているものも最低限のものまでで抑えている。
首に掛けてあるネックレス、濃すぎない化粧……と言うか、化粧なんてしてるのか?
とにかく、その姿は、見た者を虜にするような……そんなものであった。
「……あれ、あの国王。展望台で見た人に似てない?」
小声で耳打ちをしてくる葵。
……そう言われてみればそんな気もしなくもないが、
「でも……なんか少し違う感じがしないか?」
「……うん」
あっちは何だかふざけたような感じを出すのに対して、目の前の国王は、真面目と言ったような感じだ。
「本日は我が国に来てくれて、本当にありがとう」
「いえ、どう致しまして」
座っていた椅子から立ち上がり、俺は国王に頭を下げる。
「……よく出来た男だな。さすがはゲンザフロウが認めた生徒なだけはある」
「……校長とは面識があるのですか?」
「若い時には、ゲンザフロウに助けてもらったことがあってね……その話は追々していくことにしよう」
ガタッと言う音を鳴らし、国王は椅子を引く。
そして席についた―――大和の斜め右隣に。
「つまり俺の左隣はアイミーってわけか」
「なぁ……改めて言わせてくれ。お前、羨ましいぞ」
そうは言われても……なぁ?
「時間を裂いてしまって申し訳ない。では、夕食の方を続けることにしよう」
その国王の言葉を聞くと、アイミーは席に着く。
俺も、立っている状態から座り直して、それが合図となったのか、夕食は再開した。