夕食の支度が整ったらしいです
「……ん?」
部屋に戻る途中、何人かの人達がこっちに近づいてくるのが見えた。
先頭には、シュライナーの姿が見える。
と、言うことは……晴信達か。
晴信達がシュライナーの後ろをついていってるってことは。
「夕食の準備が整ったのか?」
「みたいだよ。だから私達、食堂に向かってるみたい」
葵が答える。
他のみんなも、一体どんな食事が待ち受けているのかと、言葉に出していないが、顔で分かった。
……大和だけは、相変わらずいつもと変わらない笑顔なので、何考えてるかさっぱりだったが。
それに、大和はどういう料理が出ようとも、平然と食べていそうだしな。
「ん?僕の顔に何かついてるかい?」
「ああ……別に何も」
前と同じやり取りはやめよう。
さすがに三回目は(晴信のを含め)飽きてきた。
「本日の夕食は、お嬢様とレイブン様もご参加されるそうですので」
「アイミーも参加するのか?」
「はい」
アイミーか……。
久しぶりに会いたかったんだよな。
元気にやってるか見たかった所だったし。
「お嬢様って……王女様のことですか?」
「はい。我が国の王、レイブン・グレイブスタン様の娘の、アイミーン・グレイブスタンお嬢様でございます」
「おお……瞬一の知り合いに、ついに王女様も入ったか……感激だぜ」
晴信、別に俺はアイミーが王女だろうと関係ないぞ。
俺は晴信の発言に呆れつつ、足は確かに食堂まで向かっていた。
さらに話は続く。
「それにしても、王女様か……」
「何だ?憧れるのか?」
「ええ。素敵なドレスとか、ちょっと憧れます」
「ふ~む」
空がそんなことを言ってきた。
目を閉じて、なにやらブツブツ呟いているのも聞こえる。
……もしや、妄想モード突入?
「……"ヾ(><*) 」
……ってこっちもかよ!
ただ、北条の場合は、目を開いて、目線は確かに大和の方を向いている。
……大和はそれらを完全に流している、というか気づいていないだけか?
「シュライナー、そろそろ食堂にはつくのか?」
仕方ないので、シュライナーに話を振る。
シュライナーは俺達の方を向きながら、
「もうすぐ到着致します」
「みんな……心の準備はいいか?」
何故か晴信がそんなことを言ってきた。
「どうしたんだ?お前」
「いや、だってよ。王女様と一国の王様と一緒に夕食を食べるんだぞ?お前は王女様の方とは知り合いだからいいけど、俺達はまるきり赤の他人なんだぞ?本来なら、謁見も出来ないような、案外遠い存在なんだぞ?」
「案外って言うか、普通に距離は遠いよね」
大和がそこを訂正する。
「だからよ、俺達は少し心の準備をしなければならないわけだよ」
「まぁ……頑張って」
ぶっちゃけ、俺はあまり緊張という緊張をしていない。
あるといえば、アイミーに久しぶりに会えるって気持ち。
後は……中央広場で見た、男のこと。
その男の言っていたことが少し気になっている。
結局あの男は一体なんだったのだろうか?
一体、この城とはどのような関係があるのだろうか?
「どうしたんだ?瞬一」
その時。
晴信からそんなことを尋ねられた。
「いや、別に何でもないけど……どうしてだ?」
「お前が何だか考え込んでるような顔をしてたからだよ」
「ああ……ちっとばっかし考え事をしてただけだ」
「もしや、立てたフラグをどうやって回収するかとか……」
「天・誅!」
「さすがは旗おと……ごふぁ!?」
晴信の腹を思い切り殴った後に、
「食堂の方に到着致しました」
どうやら目的地にたどり着いたようだ。
「さて、この扉を開けば食堂か……行くぞ!」
特に掛け声とかは必要なかったが、なんとなく言いたかったのでそう言ってみた。
その後で、シュライナーが扉を開ける。
「久しぶりに……アイミーを見ることが出来るのか」
そんなことを考えながら、俺は食堂の中に入った。
他のみんなも、それぞれいろんな思いを持って、中に入っていく。
晴信は、痛みを持って中に入った(腹を抑えていたところから推測した)。