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Magicians Circle  作者: ransu521
秘草探し編
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願わくば

あれから学校へ戻り。

ソージの葉を二人分吉沢先生に渡した所、薬が出来るのは月曜日になりそうだという話だったので、俺達は一旦家に帰った。

そして月曜日。

つまりは、薬が出来ると言われた日。

俺と佐々木、葵に空、大和に晴信、そして一之瀬もついてきた。


「……あれ?北条までついてきたのか?」

「当り前でしょ!昨日はよくも置いていってくれたわね……!!」

「……あ、悪い。すっかり忘れてた」

「アンタね……!!」


おっと、そろそろ俺の方が不利になってきそうだ。

ここで対北条真理亜秘密兵器登場!!


「というわけで、大和、バトンタッチ!」

「うん……えっと、真理亜」

「は、はい!?」

「とりあえず、瞬一もわざと置いて行ったわけではないし、許してあげようよ」

「……まぁ、大和君がそういうなら、別に……」


うつむき、顔を赤くしながら、北条は呟いた。

何というか、分かりやすい性格してるよな、本当。


「そんなことしてる間に、医務室についたよ」


葵、いちいち報告せんでええっちゅうに。

まぁ、何がともあれ、俺達は医務室……つまりは吉沢先生がいるところに到着した。


「失礼します!」


トントン、とドアをノックした後に、俺達はぞろぞろと中に入る。

入ってみると、椅子に座って机の方を見ていた吉沢先生が、椅子を回転させてこっちを見てきた。


「来たわね、みんな」

「はい……それで、薬の方は出来てますか?」


佐々木は、そのことを気にしているみたいだ。

それほどまでに、小山先輩のことを助けたいのか。


「ええ、出来てるわよ。後はこれを飲ませてあげるだけ」

「それで……小山先輩の病気は治るんですか?」


空が尋ねる。

すると吉沢先生は、


「分からないわ……あくまでこれは試作品。分量と製法はきちんとしたものだし、形としてちゃんとなってるわけだから、成功する可能性の方が高いけど……それでも失敗する可能性もあるわ。それでも、いいわね?」


これは、吉沢先生からの、最終確認だ。

何が起こっても、一切の真実を受け入れられるか。

佐々木に今、その選択が迫られていた。


「……はい。俺は、治る可能性にかけてみます」


佐々木は前向きであった。

助かる可能性が少しでもあるのなら。

例え助からない可能性の方が高かったとしても、やらないよりはまし。

恐らくはそう考えたのだろう。


「分かったわ。そこまでの覚悟があるのなら、この薬をあなたに譲れるわ。持って行きなさい」

「……ありがとうございます!!」


深くお辞儀をする佐々木。

俺達も、先生に向かってお礼の言葉を述べた。

すると、


「あなた達も本当にお疲れ様。あなた達の協力がなければ、この薬は完成しなかったわ」


と、逆にお礼の言葉を返された。


「そんな大したことじゃないですよ……最後に決意して、山へ行くことにしたのも、佐々木なんですから」


これで、小山先輩の病気―――アンジック病さえ治れば、佐々木の物語もハッピーエンドを迎えることが出来るだろう。

ここから先は、俺達が介入すべきではない話。

だから俺達が取るべき行動は……。


「……佐々木。俺達に出来ることはここまでだ。後はお前が、小山先輩にそれを届け、飲ませてやれ」

「……ああ。みんな、ここまで俺なんかの為に協力してくれて、本当にありがとう!!」


俺達に対しても、佐々木は深くお辞儀をした。


「ま、まぁ、その先輩の病気、治るといいわね」

「素直じゃねえな、お前も」

「何ですって……!!」

「だから二人共、落ち着いてください!!」


後ろでは、喧嘩寸前となった北条と晴信の二人を、一之瀬が慰める場面があった。

何というか、これが平和な日常なのだな、うん。


「ところで三矢谷君」

「何でしょう?」

「薬は二人分用意してあるのだけど、後一人分は誰のかしら?」

「ああ、それは……校長先生に渡してください」

「校長先生も、アンジック病だって言うの?」


吉沢先生が意外そうな表情を見せる。


「……ええ。この前ちらりと聞いてしまいました」

「……分かったわ。これは校長先生に渡します」

「ありがとうございます」


軽くお礼を言った後に、


「よし。それじゃあ俺達は帰るぞ」

「はい」

「ですね」

「後は啓介……君の頑張りどころだよ」

「頑張ってね、佐々木君♪」

「は、早くそれを渡して、治してあげなさいよ!」


俺達はそれぞれ佐々木に対してそう言葉を述べると、佐々木より先に教室へ戻って行った。

……佐々木、頑張れよ。
















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