長い一日の終わり
「ハァハァ……」
お、終わった……。
もうこれで、魔物は全部倒した。
というか、魔物は元の姿に戻った。
つまり、間違ってももう俺達のことを襲うことはない。
……これで安心して、ソージの葉を回収出来る。
「……佐々木。早くソージの葉を」
「……ああ」
佐々木は、ソージの葉がついている木に近づく。
そして、その葉を二人分、回収した。
それを、あらかじめ持ってきて置いたケースに入れる。
「……これで、すべてが終わったってことだな」
「そうだね。一先ずの所、一件落着ってところだね」
はぁ……。
溜まっていた疲れが、一気に体に襲いかかってくるのを感じる。
「疲れてたんだね、瞬一」
「ああ……葵は?」
「私もだよ……今日はちょっと疲れたかな」
葵や俺だけではない。
空に一之瀬、佐々木も疲れた様子を見せていた。
大和だけは、何故か平然としている。
こいつ……本当に一体、何者だよ。
「佐々木君。笑顔がこぼれてますね」
「え?」
一之瀬に指摘されて、佐々木はそのことにようやっと気づく。
俺も、佐々木の顔を見てみた……その顔は、今日ここにきてから初めてみる顔だった。
「そういえば、今日初めてですよね……佐々木さんが笑ったの」
空も、そのことを指摘する。
「……ああ。すべてが終わったから、これでアイツを助けられるから」
「結局お前の頭の中には、幼馴染のことしかねぇってことかよ」
「……悪いか?」
「いや、別に。人は大切にするべきだって、いつしかの人も言ってたしな」
「誰が?」
「……聞くな」
カッコよく決めたはずなのに、葵の言葉ですべてが台無しになった気がする。
まぁ、もともとそういうキャラじゃないし、別にいいんだけどよ。
「さてと。早くこの葉を持って帰って、先生の所に行こうぜ」
「そうだね。今日に行っても大丈夫だと思うからね」
大和、それは迷惑にならないか?
さすがにそろそろ日が傾いてきた時間だし……。
「大丈夫です。連絡なら先ほど入れておきました」
「いつの間に!?一之瀬、お前意外と行動早いな」
何だか新たな発見をした気分になったような気がした。
「さて。んじゃ、行きますか」
「学校へ行って、早く薬を作ってもらって、そしてアイツを……」
「……気になってたんだけど、アイツって誰のことなの?」
葵が佐々木に尋ねる。
まぁ、俺もさっきから聞きたかったことだけど、敢えて聞かなかったんだよな。
何か、聞いた所で言ってくれなさそうだったし。
「ああ……俺の幼馴染で、三年A組の、小山千里って言うんだ」
「へぇ……小山先輩、か」
学年は上なので、先輩づけがマナーだろう。
なので、もしその人に会ったとしたら、先輩ってつけて呼ぶことにしよう、うん。
「それじゃあ、その小山先輩を助けに、早く学校へ行こう!」
「だな。佐々木、大和、一之瀬、空……学校へ戻るぞ!……悪いけど大和と佐々木、そこで寝てる晴信持ってくれないか?」
「べ、別にいいけど……」
「任せてよ」
こうして俺達の、大里山での長い一日が終わった。
後は学校へ葉を持ち帰って、薬を作ってもらうだけだ。
……ん、何か忘れている気がするけど……ま、いっか。