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Magicians Circle  作者: ransu521
秘草探し編
54/309

囲まれた者達

「……そんな」

「ど、どうして……」


俺達の目の前に立っている人物。

それは、紛れもなく、晴信の姿をしていた。

いや、晴信そのものであった。


「は、晴信に何をしたの……?」

『……ふむ。君はお会いするのは初めてだが、なんだか不思議な感覚がするな。なんというか、君からは特別なオーラが感じられるまるで……』

「質問に答えろ!!」


葵の質問を、そして俺達のことを完全に無視する、晴信の中にいるクリエイター。

葵の方に近づいてくる。

俺は、葵を守るように間に入った。


『そう焦ることはない。今回私はこの場で戦う気はない。あくまで一人の脚本家として物語を描くにすぎない。君の邪魔もする気はないし、安心したまえ』

「え……俺?」


自分のことを指差しながら。

佐々木はキョトンとした表情を見せながら言った。


『今回はこの体を偶然にも見つけたのでね。思わず入ってみたってわけだ。話を終えたらここから立ち去り、脚本を描くことに徹するとしよう』

「……どうしてこの山にいた?」


大和が、何時もとは違う雰囲気で尋ねる。

なんというか、俺にすら伝わってくる、明らかな殺気が込められていた。

しかしクリエイターは、それが分かっていてか、分かっていないのか、


『この山には私の計画に必要な駒がいたのだよ……最も、そのほとんどが、君達によって消されてしまったのだが』

「駒……魔物のことか?」

『いかにも。私はこの山に生息する生き物に対して、魔物化を促す魔術をかけた』

「なっ……!?」


驚きの声は、誰の物だったろうか。

とにかく、クリエイターのそのやり口には、ただただ驚かされることばかりだった。


「この山の生き物すべてに、ですか?」

『無論そうだ』

「なんて酷いことを……」

『酷い?誰かの役にたてているのだぞ?魔物達も幸せであったとは思わぬか?』


こいつ……。

こいつには同情という言葉はないのか?

空の言葉を聞き流す……いや、聞き流すだけならどれだけ良かっただろうか。

好きなだけ利用しといて、それでいて『魔物達が幸せ』だ?

ふざけんな!!


「……幸せ、なんかじゃありません」

『む?』えん

「幸せ、なんかじゃありません。動物達には、何の罪もないのに、勝手に魔物に帰られて……自分の意思とは無関係に、人を襲ってしまう。そんなの……そんなの悲しいじゃないですか」

『ふむ。そういう見方もあるか。まぁ、平和に縛られた哀れな人間の意見だな』

「テメェ……空にそんなこと言っていいと思ってるのか?」

『おっと。怒りの矛先をこの者に向けるのは間違っている。この者はあくまで「宮澤晴信」という個体に過ぎぬ。私を倒した所で、破滅するのはこの者だぞ?』

「……」


言われてしまっては、反論のしようがない。

こいつは晴信だ。

晴信の中には、クリエイターがその意思を忍び込ませているが、体は晴信の物で間違いない。

すなわち、クリエイターに攻撃することとはすなわち、晴信に攻撃するのと変わりない。


「……かといって、何もしないのでは君の怒りは納まらぬだろう。なら、このモノ達に代わりをさせようではないか」


パチン!と指を鳴らす。

瞬間。


「なっ……」

「周りに、魔物がたくさん……」


いつの間にか、俺達は魔物に囲まれてしまっていた。

逃げ道は……なさそうだ。


「……上等だ。そっちがその気なら、こっちも本気で挑ませて頂く」

「啓介、僕達が道を開けるから、君はソージの葉を……」

「……いや、協力させてくれ。俺も戦う」


大和の提案を、やんわりと断る佐々木。


「……そうか。分かった」

『話はそれで終わりかね?』

「クリエイター!!次はないと思うがいいよ……」

『心待ちしようではないか。君の描く脚本とやらを』


その言葉を最後に、クリエイターは言葉を発することはなかった。

晴信の体からクリエイターの意思が抜けたのか、ゆっくりと晴信の体が木に倒れ込み、そのまま寝るような体勢に入った。


「みんな……行くぞ!!」


それを合図に、俺達は魔物の群れに突っ込んだ。
















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