何か挟まれてるんですけど
「ふぅ……」
この年で山登りするとは思ってなかったからな。
地味に大変だな。
「しかし、これかソージの葉か」
先生に渡された写真を見て、佐々木が呟く。
色が、とても緑とはほど遠いような、黄色の葉っぱ。
形は細長く、周りがギザギザになっている。
こんな葉っぱをつけてる木なんてあるのかね……。
「奥まで行かないとないって、先生は言ってなかったっけ?」
佐々木が尋ねる。
「ああ。確か、山奥に生えているのがこの木の特徴だな」
「じゃあ……しばらく山登りは続くということになるの?」
葵が、首を傾げながらそんなことを尋ねてきた。
俺はこう答える。
「まぁ……そうだろうな」
「マジかよ……奥に行けば行くほど、魔物の数が多くなったりするんじゃねえのか?」
「だね。魔物はこういう場所を好むって聞くからね」
晴信の問いに、大和が答える。
しかし……何で大和はそういう情報を知ってるんだ?
「博識の大和君……素敵♪」
「そこ、危険だから」
晴信が、思わずそうツッコミを入れていた。
いやはや、俺もそうは思ったが、コイツには言うだけ無駄だしな。
無視する方向で行こう。
「あの……」
「ん、どうした一之瀬?」
おずおずと俺に話しかけてきた一之瀬。
でも、このタイミングで何を尋ねる?
「魔物……出てきてるのですが」
「「「「「「……え?」」」」」」
大和と一之瀬を除く六人の声が重なる。
恐る恐る後ろを振り向いてみると。
「……」
凄くでかいクマらしきものがいました。
口元からはよだれが出ています。
今にも、『お前らみんな、食べてやる』的な表情見せてます。
「……でたぁ!!」
「落ち着けお前ら!ここは落ち着いて死んだふり……」
「クマの前で死んだふりしたら、間違いなく食われるぞ」
あの知識は、確か間違いだってこないだテレビでやってた気がする。
正しい判断は、クマの方を見ながら、そっと後ろに下がっていくだったっけ。
「みんな、クマの方を見ながら、一歩ずつ、慎重に後ろに下がっていけよ」
俺は、とりあえずみんなにそう指示を出す。
言われた通りに、みんなは後ろに下が……らなかった。
「どうした?」
「……悪い、瞬一。お前の判断は正しいとは思うけど、無理だ」
「どうしてだ?」
晴信が変なことを言ってくる。
俺にはさっぱり分からない……。
このまま逃げないと、このクマに襲われて怪我をする危険がある。
だからこの場から立ち去ろうと……。
「う、後ろからもクマが……」
「……何?」
空が後ろを見ながら呟く。
見ると、いつの間にかそこにもクマが待ち伏せしていた。
「挟まれた!?」
いつの間にか、俺達はクマに挟まれていた。
……もとい、クマの形をした魔物に。
「これは……絶体絶命って奴か」
「どうする?このままだとクマに襲われるが落ちだけど」
大和があまり困ったような顔をしないで答える。
それでも、全然困ってないと言ったような表情でなく、さすがに焦りの色が見えていた。
「気は進まないが……こいつらと戦う他ないな」
佐々木が身構え、そう言う。
「待ってくれ。ここは俺に任せろ」
「それじゃあ、私も手伝います!」
俺が進んで出ると、空が手伝うと言ってきた。
「空……空は見ててくれ。怪我しちまうぞ」
「大丈夫ですよ。自分の身は自分で守る、ですよね?それに、私も瞬一さんの役に立ちたいですから」
「……分かった。それじゃ、他の奴らは少しばかり見ててくれ」
俺と空は、戦闘態勢に入る。
空はポケットより携帯を取り出す……科学魔術師だったのか。
他のみんなは、なるべく戦闘の邪魔にならないような場所に行く。
そして……クマとの戦いが、始まった。