俺達がするべきこと
「え、あるの!?」
俺は思わずそう叫んでしまった。
だって、本当にあるとは思ってなかったんだもの。
「ええ。ただし、その方法は決して簡単ではないわよ」
「……難しくてもいいんです。あるのでしたら、方法を教えてください!」
佐々木はなんとしても幼なじみを助けたいらしく。
吉沢先生に、その方法を熱心に尋ねる。
……なんというか、漢だねぇ。
「……いいけど、多少の危険は覚悟してもらうわよ?」
「大丈夫ですよ。俺もついていくんですから」
もしそれが、何処かにある幻の秘草を探せとかいう物であったら、俺はついていくつもりであった。
それだけ、俺は一応の所協力する気ではあったのだ。
「……なるほどね。あなたがいるなら、安心ね」
「え?」
「なんでもないわ」
今、小さな声で何か呟いていたような気がしたんだが……。
気のせいかもしれないな。
「確かにアンジック病を治す方法はあるわ。そういった類いの薬を作る方法と、材料はある。けれど、その方法はまだ理論上のものでしかなくて、薬も実用的にはなってないのよ」
「それでもいいんです……どうか、どうかアイツを、助けてください!」
そう言うと、佐々木は深々とお辞儀した。
「……俺からもお願いします。こいつの、人を助けたいという思いは、痛い程理解出来るんです。その対象が大事な人なら、尚更……」
俺があの日、アイミーを守りたいと思ったように。
佐々木もまた、幼なじみを病魔から救い出したいと思っている。
その方法は違えど、やろうとしていることに変わりはないと思っていた。
だから俺は、佐々木に協力してやろうと考えたのだ。
「しょうがないわね。私も人を救いたいという気持ちはあるもの。協力してあげるわ」
「「ありがとうございます!!」」
俺と佐々木は、声を合わせてお礼の言葉を言う。
吉沢先生は、
「そんなに声を大きくしなくても……」
と言いながら、笑顔で言葉を返してきた。
が、その顔もやがて真剣なものに変わり。
それが、これから俺達がするべきことを説明してくれる合図なんだと理解した。
「それで……俺達は何をすればいいんですか?」
まずは俺が、吉沢先生にそう尋ねる。
すると、
「薬を調合する際に必要なものとして、エムの実と、ソージの葉が必要なの。エムの実は、それを実らせる木がちょうどこの学校に生えているからいいんだけど、ソージの葉をつける木は、ここにはないのよ」
「そうなんですか……」
なら、何処かで調達してくればいいだけの話だ。
だが、何処で?
「その木は、何処にあるんですか?」
今度は佐々木が尋ねる。
「……大里山って所は知ってるかしら?」
「確か、隣の埼玉県にある山ですよね?そこにあるんですか?」
「ええ……あるにはあるんだけど、あの山には、どうしてか知らないけど、魔物の巣があるのよ」
「魔物?」
だから最初に覚悟が必要だなんてことを言ったのか。
「でも……魔物って姿を見たことがないんですけど、本当にいるんですか?」
確かに、俺も実物を見たことはない。
魔物とは、人が魔術を使い始めてから現れた、云わば副産物と言った所だ。
急速に魔術を使用するものだから、その影響を受けた動物達が凶暴化して、暴走。
以後、その子孫が繁殖して、今に至る。
簡単に言ってしまえば、魔物とは凶暴化した動物ということだ。
「それなら大丈夫ですよ。二人で行けば分からないかもしれませんが、俺の仲間も引き連れますから」
「……そうね。大人数で行くのが賢明な判断ね」
多い方が、一人あたりの負担も減る。
まぁ、あいつらからしてみれば、タダ働きさせられただけだと思うかもしれないが……いや、そうは思わないかもしれないな。
「それじゃあ、俺達がやるべきことは、その葉を持ち帰ること……ですね?」
「ええ。けど……くれぐれも気を付けなさいよ」
「「はい!!」」
声を揃えてそう言って、一言お礼の言葉を言った後に、部屋を後にする。
俺はその去り際に、
「あ……先生!!」
「何かしら?」
「エムの実、二人分取っておいてくださいね!」
「え?あ……ええ、分かったわ」
そう頼んでから、俺は会議室を後にした。