啓介の頼み事
学級委員の会議が終わった後、俺は佐々木のことを呼んだ。
まさか佐々木啓介がB組の学級委員にまで上り詰めているとは。
ていうか、Bに入れたんだ。
「よぉ。お前は確か、クラス分け試験の時に戦ったよな?」
「お前は……三矢谷瞬一!」
「覚えてくれてたのか。嬉しいなぁ」
「いやいや、よく呼び出されているし、なんとなく分かるって」
俺ってつくづく、負の意味で有名になってるような気がしてならないのだが。
これも、校長が俺のことをしょっちゅう呼び出してるからに違いない。
「それにしても、お前よくBに入れたな」
「ああ……あんな無様な最後を遂げたにも関わらず、このクラスに入れたのが奇跡だよ」
多分こんな奇跡はもう起こることはない。
俺はそんなことを考えていた。
「それにしても、入院したんだって?」
「ああ。やっぱりBでもその話は出てたか」
一生徒が入院したって話をせんでもええっちゅうに。
同じクラスの奴が知ってればそれでいいんだから。
「怪我の方は大丈夫なわけ?」
「それなら心配いらねえよ。何せ腕のいい医者に診てもらったから、完治するのも早かったってわけよ」
そういうわけでいいんだよな?
普通なら何週間も入院生活送る羽目になりそうな怪我でも、たった一週間で行けるようになったのは、治療してくれた医者のおかげだ。
「んじゃ……怪我も治っているって言うなら、頼みやすくなった」
頼みやすくなった?
何の話をしてるんだ、こいつは。
「お前の実力を見込んで、頼みがあるんだけど」
「頼み?」
頼みってなんのことなのだろうか。
……まあ、クラス分け試験の時にはお世話になったわけだし(的として)、話は聞いてやるか。
「俺に出来ることなら協力はするけど」
「本当か!?」
啓介が嬉しそうな顔をする。
どんな話になるのかは知らないけど、とりあえず話を聞いてからだな。
けど今は……。
「この言いようもない怒りのオーラから逃れたい……」
「……(`o´)」
顔文字変わってるし。
てか、こいつは感情を顔文字にして表すのが趣味なのか?
「とりあえず、場所を移してから話そう」
「……あまり多くの人には聞いてもらいたくないし、俺も賛成だ」
と言うわけで、俺と啓介の意見が一致した為、速攻会議室を出ることにした。
「ちょっ……ちょっと!?」
何か北条が言いたそうだったが、無視無視。
「ここなら大丈夫だろう」
来た場所は、屋上。
この場所は、意外と生徒が来る確率というのが少ない場所なのである。
原因は、ここが立ち入り禁止区域ではないことにも繋がっているのだろう。
何だか、禁止っていわれると人間ってやりたくなる生き物じゃね?
「……まぁ、そんなことはともかくとして?」
「え?」
「何でもない。こっちの話だ……それで、頼みたいことっていうのはなんだ?」
俺は佐々木にそう尋ねる。
すると佐々木は、こう前置きを置いた。
「……アンジック病って病気、知ってるか?」
「アンジック病?……ああ」
そういえば、そんな名前の病気を聞いたことがある。
あれは確か、俺がちょうどアイミーの護衛をしていた時に、校長から聞いた言葉。
ていうか、校長がかかっている病気そのものだったはず。
「通常、魔術師というのは生命力を魔力に変換して魔術を使う。でも、魔術を使用した後、しばらく時間が経てば、普通だったら生命力は元に戻る……けど、アンジック病患者は、それが出来ない」
「なるほど。魔力を練成出来た所で、それを使っちまえば生命力まで消えちまう。それがアンジック病」
「そして、症状が進行すると……魔術を使用できなくなる程までに体が弱る」
校長がかかっている病気というのは、そこまでやっかいな物だったとは。
でも、それとこれとで、どういった関係があるんだ?
「なぁ、お前が言いたい用件っていうのは……」
「……実は、俺の幼馴染が、その病気にかかってるんだ。治す方法とかを、知らないか?」