久しぶりのアイミーとの会話
「アイミー!元気だったか?」
久しぶりのアイミーとの会話に、若干テンションが高くなる俺。
それは相手も同じみたいで、先ほどからアイミーは、落ち着きがないようだった。
『私は大丈夫ですよ!……シュンイチの方こそ怪我は……』
「俺の方は完治した。だからこうして電話に出れるんじゃないか!」
『それもそうでしたね……よかった』
電話の向こうでも、明らかに心配してくれていたような雰囲気が伝わってくる。
何というか……人に心配してもらうのって、ここまで気分がいいことだったんだな。
「俺のこと心配してくれてたのか……」
『……少しばかり、怪我をさせてしまった責任が、私にもありますから』
「いやいや、お前に責任はねぇよ。俺はお前を守りたかったから護衛役を引き受けたんだ。だから、怪我しちまったのも、俺の責任だって」
『……そう、ですか?』
「ああ。だからお前はちっとも悪くない。そうやって自分を追い詰めるな」
『は、はい……』
な、何だか空気が重くなったな。
これは、何か新たな話題を振ってやらないと、この空気は打破出来ない。
「ところで、何で今日は電話してきてくれたんだ?」
『え?あ、はい。実はですね……』
アイミーは、そうして前置きを置く。
一体どんな話がくるのだろうか。
『父上があなたと一度、お話がしたいそうで』
「へぇ~それって今この電話で?」
『いえ、会って直接……とのことです』
……あ~なるほど。
「それって、日本で言うところのゴールデンウィーク中に、グレイブスタン公国に招待してくれるって話のこと?」
『知ってたんですか?』
「ああ。校長からおおよその話は聞いた」
『そうでしたか……それじゃあ……お見合いの件も、ですか?』
……はい?
おみあい?
「お前……見合いするのか?」
『はい……そうみたいです』
「あ、相手は?」
あ、アイミーが見合い……。
さすがは一国の王の娘。
きっと、その規模も違うんだろうなぁ。
『相手は……あなたです、シュンイチ』
「へぇ~シュンイチって奴か~。そいつはえらい幸せ者……って俺か!?」
『は、はい!!』
俺が突如叫ぶものだから、アイミーが驚きの声をあげる。
「ああ、すまん。つい叫んでしまった……しかし、見合いか。こんな一市民である俺と、一国を束ねる王の娘……合わなすぎるだろ」
『そういう問題じゃありません!こういう話に、身分などは関係ないものです!』
「……まぁそうだけどよ。てか、その見合い話、俺が校長から聞いた時には言ってなかったぞ」
『私の国に招待するって言ってた時、お父様が源三郎さんに言ったはずなんだけど……』
……謀りやがったな、校長。
俺が校長の方を見ると、厳格そうな顔はしているものの、口元がにやけていた。
いくらなんでもそりゃねぇよ。
「これ……ドッキリだったりする?」
『ドッキリなんかじゃありません!』
「ですよね~……俺も大変なことに巻き込まれたものだ」
『私とのお見合い……嫌、ですか?』
「うっ!」
これ、きっと電話越しにじゃなくて、直接話していたとしたら、多分上目遣いで尋ねてくる所だぞ?!。
それに、多分涙目だから、効果は抜群だ!!
「いや、俺としては嬉しい限りなんだけどな……お前のような綺麗な女の子とお見合い出来るなんてな」
『き、綺麗だなんて……そんな……』
「ただ、グレイブスタン公国の王女って言ったら、それなりの地位なわけだし、国民達からも結構好かれていると聞く。そこに俺のような奴が突如現れたら……目線が痛い」
葵と会話していた時にも感じたあの目線が。
今度は大人数のものを感じる羽目となるのかもしれない。
……それだけは、どうしても回避出来ないことかもしれないなぁ。
『大丈夫ですよ!……多分』
「多分かよ」
そりゃそうだよな。
そんなの、行ってみないことには分からないわけだし。
「ま、その日が来るまで楽しみに待ってるとするか」
『私も、シュンイチと会える日を楽しみにしてます!』
「それじゃあな、アイミー。また会おうな」
『はい、シュンイチ!また会いましょう!』
その言葉を最後に。
俺はアイミーとの電話を切った。