退院後初めての登校
「う……」
眠い……。
いくら完治したとはいえど、昨日退院したばかりの、しかも病み上がりの体だからな。
「あー今日学校へ行くのたるい……けど、行かないとさすがにな」
一週間休んでたもんな。
いい加減出ないと、授業が分からなくなっちまうしな……。
それに、そろそろ晴信のことを弄る時が来たしな。
「さて、そろそろ学校にもつく頃かね」
歩いている内に、校門が見えてきた。
何か久しぶりにこの門くぐるな、俺。
何というか、今まで病室で寝てばっかの生活してきたし、いざという時に動けるかどうか不安だな。
少し体を動かしておきたいものだな……。
「んじゃ、今日の魔術の授業は、張りきってやろうかな」
と、足を止めて、決意表明をしてみせた。
その時だった。
「キャッ!」
突然止まった俺が悪かったのか。
はたまた、俺が止まらなかったとしても、慌ててた向こう側が激突してきてたのかもしれないのか。
とにかく俺と誰かが、ドン!という衝突音と共に、激突してしまった。
「あうっ!」
そんな声を挙げながら、倒れる音が聞こえた。
……大丈夫、だよな?
「わ、悪い……俺が突然止まったばっかりに」
素直に謝っておいた方が正しい判断だと思った。
だから俺は、その人物に謝る。
そこで俺は、初めてその人物の顔を見た。
「……うわぁ~お」
……何この展開。
……何この状況。
尻もちをついて倒れている少女の特徴。
まずはもちろん、うちの制服着用。
次に、青くてポニーテールの髪。
丸い瞳をしていて、美少女を思わせるような顔つき。
スタイルは……GJ!
だが、俺が知る顔ではなかった。
よく見たら、学年リボンも二年生の物ではない。
……言い忘れてたが、この学校の制服は、学年ごとに違った特徴があったりする。
男子は学ランなのであまりよくわからないが、襟章の色が学年ごとに違っているのだ。
例えば、今年は一年が青で二年が赤、三年が緑だったかな。
女子はセーラー服なので、リボンの部分の色がそれぞれの学年の色をしているということだ。
……この少女の場合、その色は青。
つまり、俺より下の学年ってことか。
「あ……いえ、こちらこそ。よそ見をしてた私も悪いですし……」
そしてこの謙虚さ。
後輩の鏡だな!
「手、借りるか?」
「あ、はい……」
パシッと右手を掴み、俺はその少女を立たせる。
「悪かったな……急に止まったりして」
「い、いえ。本当に大丈夫ですから……それより、お怪我とかされてませんか?」
「ああ、俺の方は全然平気だ」
何しろ、俺はこのやり取りの中で怪我する要素など何一つなかった気がするしな。
「それよりも……新入生だよな?」
「はい。今年から入学してきました、一年B組、植野優奈っていいます」
「俺は二年S組の三矢谷瞬一だ」
「え、S組の人だったんですか!?」
……いや、そんなに驚くことか?
……驚くことか。
「確か一週間近く入院してたって話ですよね?お怪我の方は大丈夫なのですか?」
「ああ。おかげさまでな」
「そうですか……よかった」
……あれ。
この子と会ったの、今日が初めてだよな?
まぁ、いっか。
心配してくれるのは嬉しいことではあるしな。
「どうもな、えっと……植野って呼べばいいか?」
「……出来れば優奈って呼んでほしいです。私、双子ですから」
「姉がいるのか?」
「はい」
なるほどな。
そりゃあゴチャゴチャになってしまう可能性も出てくるだろうしな。
「んじゃあ改めてよろしくな、優奈。俺のことも、瞬一って呼んでもらって構わないから」
「は、はい、瞬一先輩」
「かたっ苦しいな……けどしゃあないか。よしっ!学校外に出たら、『先輩』ってのは外そうか?」
「え?で、でも」
「いいんだよ。俺がそう呼んでもらいたいから」
何か、先輩って呼ばれるの慣れてないからな……。
学校内ではそういうメリハリをつけなくてはならないけど、せめて学校の外くらいは、な。
「わ、分かりました……それでは、また会えた時には、そうします」
「え?あ、ちょ、ちょっと!」
顔を赤くして、優奈はさっさと下駄箱の方へ行ってしまった。
……う~ん。
「何だか惜しいこと、した?」
「……晴信。お前、いつからそこにいた?」
「最初からずっと」
ふと後ろを振り向くと、そこには不気味な程明るい笑顔を見せる、晴信がいた。
何だか無性に殴りたい気分だけど、ここは我慢我慢……。
「よぉ瞬一。久しぶりだな。怪我の方はもう大丈夫なのか?」
「ああ……てか、俺が入院してたってことは、誰か言ったのか?」
「お前が入院したその日の朝のHRに、全校内で話があったそうだぜ」
「……まじかよ」
俺、負の意味で有名人じゃん。
「最も、何で入院したのかまでは言ってないそうだけどな」
「……その口ぶりからすると、少なくともお前は知ってるって顔だな」
「ああ。後、大和と葵、春香もだぜ?」
「その程度で収まってるなら、まだいい方か」
もう少し広まってしまうと、面倒なことになるからな。
「それよりも、朝からフラグ回収、ご苦労様」
「……リミッターを解除する」
殴るだけでは気が済まなかったので、
軽く感電させて、そこに放置しときました♪