誤解が解けて
Side大和
「ここなら誰の邪魔も入らない」
「……」
そこは、周りにほとんど人の気配が見当たらないような、空き教室だった。
ここなら、内緒話をするのにもってこいの場所だ。
……当の森谷自身は、かなり嫌がっているみたいだけど。
「……それじゃあ、話すよ?」
「……」
話は聞く見たいだ。
僕と会話する気はないみたいだけど。
「……あの日、君があいつから何を聞いたのかは知らない。けど、僕が駆け付けた時には、もう君の両親は……殺されていた」
「……!!」
少し反応があった。
「風魔術を使って殺されていた……それに、犯人と思われる後ろ姿も見た。だから僕は、その犯人の正体を掴むために、そいつを追った」
僕はあの日、確かにそいつのことを追った。
「……そして、その男の顔を、見た」
「……それで、どうだったんだ?」
「何が?」
ここにきて、初めて森谷が口を開く。
「その男は、誰だったんだ?」
「……君に、僕が君の両親を殺したんだと告げた男……クリエイターだ」
「!!」
クリエイター。
そう、この男こそが、森谷の両親を殺した張本人。
でも……何故森谷の両親が殺されたのか。
そこまでは、まだ解明されていない。
「……でも、どうして俺の両親は、そいつに」「分からない……もしかしたら、森谷の両親は、クリエイターのことに関する何かを知りすぎたのかもしれない。それが森谷の殺された理由なのだとしたら……僕はあいつを……クリエイターを許す気はない」
「……そうか」
森谷は一言、それだけを呟く。
……真実を知ってなお、こんな反応だ。
まだ、僕のことを信用していないのだろうか?
「……あれから、あの出来事から、僕達は変わってしまった……」
「……俺はお前と口を利かないようになってしまったっけかな」
昔を思い出すかのように、僕と森谷は語る。
……懐かしい、中学の時の話。
そして、決別する羽目となった、中学の時の話。
「……まだ、大和はあそこに?」
「……うん、まだ僕は、あそこにいるよ」
「……そっか」
森谷が言う『あそこ』。
今は語ることが出来ないが……いずれその場所については語る時が来るだろう。
だから、それまで待っていて欲しい。
「……誤解は、これで解けたかな?」
「……済まなかった。今まで俺は、お前のことを勘違いしていたみたいだ」
「分かってくれたのなら、僕はいいよ」
森谷とは、昔のような……あの時のような気軽な関係でありたい。
かつて一緒にいろんな場所を回った。
かつて一緒に様々なことをした。
そんな関係に、僕は戻りたいだけなんだ。
そして……すべてのことに決着を。
僕達の過去に、決着を。
「……それじゃあ、俺はそろそろ帰ることにする」
「そっか。学校に帰らなくちゃならないもんね」
「まぁ、最近学校には行ってないけどな」
「行ってないって……どのくらい?」
「……もう一週間になる」
一週間!?
さすがにそれは長すぎると思うけど……。
「それは長いと思うよ……」
「だよな……だから明日は、学校に行こうと思ってる」
「それがいいよ……あ、昔の仲間に会った時は、よろしくね」
「ああ」
そして森谷は、扉に手を触れた。
その扉を開く前に、
「……なぁ、大和」
「何?」
森谷は一言、こう告げた。
「また……俺達、昔の関係に戻れるよな?」
「……もちろんだよ。だって僕達は、昔からの友達じゃないか」
「……ありがとう、大和。それじゃあ俺、行くよ」
「うん。またいつか会おうね」
「ああ」
そして森谷は、扉を開き、去って行った。
「……クリエイター。そういえば、瞬一と買い物に行ったあの日に聞いた男の声も、クリエイターの声にそっくりだったよな気がしたんだけど……気のせいか」
多分、あれは他人の空似だったのだろう。
この疑問から思考を切り離し。
僕も、自分の教室に戻る為に、その部屋を出た。
これにて、『学校破り』編は終わりです。
え?短い?
いいえ、仕様です。
……次回からは、『秘薬探し』編が始まります。
そして、瞬一やっと帰ってきます!!