大和vs学校破り
「ここなら、誰も邪魔は入らないし、巻き込む危険はないよ」
二人と一同がやってきたのは、闘技場。
この場所なら、確かに他人の介入に遭うことはない。
流れ弾が当たって、他人に迷惑をかけることもない。
「戦う前に、君の名前を教えてもらいたいんだけど……駄目かい?」
「……名前は、この勝負で俺が負けたら教えてやる。弱い奴に教える名前など、俺は持ち合わせていないからな」
「うっ……」
「……気にするな、小野田」
激しく落ち込む小野田を、何故か横に座っていた晴信が慰めていた。
「そうか……なら、僕の名前も名乗らないことにするよ」
「……気に食わないな。昔の俺の友人にそっくりだよ」
「……僕もそんな気がするよ。きっと戦ったら何か思い出せるかもしれないよ?」
「そうだといいな……」
二人の間に、緊迫した空気が流れ始める。
一触即発。
触れた瞬間、その者は邪魔者扱い……いや、それ以上の扱いを受ける。
先手必勝。
しかし、二人は未だに動こうとはしない……否、動けない。
油断大敵。
二人は互いの能力の違いを知ってはいない。
千差万別。
違いはあるはずだが、何の行動も起こしていない二人にとって、最初に手を出すのは自殺行為となる。
「埒が明かないな……」
その内、晴信が鎮まった闘技場内にてそんな一言を発する。
それが、きっかけとなった。
「「……!!」」
二人は同時に動き出す。
目指すは、互いの体。
「「風を纏いし我が剣よ、我の呼びかけに答え、その姿を具現せよ!!」」
「なっ……!呪文の詠唱文が同じ!?」
大和は、ポケットより携帯……いや、偽の携帯を取り出して詠唱をするふりをする。
対して学校破りの方も、ポケットより携帯を取り出して、剣を発動する術式を詠唱した。
しかし、その詠唱文が、まったくもって同じなのである。
通常、詠唱文というのは、確かに基本となる文章は存在する。
だが、そのほとんどが学んでいく最中で詠唱文が変わる。
何故かというと、詠唱文には、その人の性格・特徴等が関わってくるからだ。
なので、同じ過程を歩んできた人間か、よほど気が合う人間でもない限り、詠唱文など同じにはならないのである。
「てやぁ!」
「ハァッ!」
ガキン!と、剣同士がぶつかり合う音がする。
「何で呪文の詠唱が同じなんだ……!」
「知るか、たまたまだろ……!!」
力を込めて、互いの剣を振り払う。
そして、もう一度、打ち合う。
再び、ガキン!という音が響く。
「大地の怒りに答え、永劫なる風よ吹け!ストーム!!」
大和が詠唱を完成させた瞬間。
学校破りが立っている位置より、魔法陣が出現する。
「ちっ!」
慌てて学校破りは、剣を離し、魔方陣から慌てて離れる。
瞬間。
「うぉっ!?」
その場所から、かなり高い位置まで伸びた竜巻が現れる。
そしてその竜巻は、攻撃対象を逃して、消えなかった。
「……暗雲たちこめし空に繋がり、更にその威力を増せ!」
「万物を切り裂きし強大なる刃と化せ!!」
大和と学校破りは、それぞれの呪文を詠唱を行う。
そして、大和の方は雷を纏った竜巻を。
学校破りの方は風で出来た巨大な刃が。
「ハリケーン!」
「ウイングカッター!」
それぞれの技同士がぶつかり合う。
「うわっ!!」
二人より発せられる風が、観客席まで吹き荒れる。
魔術を防ぐ壁は、しかし自然現象である風だけは防ぐことはないのだ。
「……勝敗は!?」
土煙が舞っていて、何がなんだかよく分からないような状態となっていた。
前があまりにも見えなくて、二人がどうなっているのか、観客席からでは確認することが出来なかった。
やがて、その土煙が消え、視界を確保出来た一同が見たのは、
「「……」」
体に傷一つついてない状態でその場に立っている、大和と学校破りの姿であった。