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Magicians Circle  作者: ransu521
王女来日編
31/309

病室で思うこと

「……ん」


気付けば、俺は見知らぬ場所に来ていた。

……いや、よく知っている場所なのかもしれない。

見上げれば見える景色は、白い天井。

そして俺は、どうやらベッドの上にいるらしい。

でも……どうして俺はこんな所にいるのだろうか。


「……気付いたかね?」

「え?」


声のした方を見ると、そこには何故か校長が座っていた。

どんなことを思っているのか分からない表情で、ただ俺のことをじっと見ていた。


「君は丸一日眠っていた。だからあの後どんなことがあったのかを知らぬだろう?」

「あの後って……!!」


そこで俺は気付いた。

そうだ、俺はあの時、隠れていた黒服の存在に気付かずに、腹をやられて……。


「俺……生きてる?」

「うむ。間違いなく君は生きている……それで、話は聞けるかね?」

「はい、大丈夫です」


あの後、アイミーが会議の場に参加出来たのか。

出来たとしたら、それはどういう結末となったのか。

俺はそれが知りたかった。

だから俺は、校長の話を黙って聞くことにした。


「まず王女のことなのだが、無事に予定時刻には政府内に入ることが出来た」

「そうですか……良かった」


アイミーは時間に間に合ったんだな。

それなら、俺が護衛役をやった意味はあったな。

……最も、最後にはアイミーに助けられたけどな。


「次いで同盟に関することなのだが……こちらの方は成立したようだ」

「成立……したんですね」

「うむ」


短く、校長は肯定して見せた。


「今後、日本とグレイブスタン公国の間には交易が生まれ、それぞれの国との交流、魔術戦争発生時の傍観役に徹することを約束させたらしい」

「……今の口振りから言うと、魔術戦争は発生しようとしていて、しかも日本は参戦する気だったようにも思えるのですが」

「そうだな。クリエイター率いる反逆組が、日本に責め入ろうとしていたらしいが、この同盟が結ばれたのを機に国内の警備強化、並びに反逆組の取締強化が実行されたらしい」

「それであの男はあんなことを……」


これで、あの男が同盟を結ぶのを止めようとしていた理由が分かった。

それにしても、アイミーがそこまでの重役を担っていたとは……。

同盟結びに来たという時点ですでに面倒なことになっているのに、それに加えてその同盟の持つ意味が大きいときた。

そりゃあ気が重くなるよ、少なくとも俺ならば。


「ところで……アイミー達は?」


そう言えば、アイミーが何処にいるのかを聞いていなかったな。


「……同盟を結び終えた後、すぐに国に帰った」

「え……」


そっか……国に帰っちゃったのか。

……何だか、最後に別れの言葉が言えなかったのは少し寂しいな。


「だが伝言は預かっておる……ありがとう、と」

「……」


どう致しまして。

本人には直接伝えることが出来ないのは残念だけど、心の中でそう呟く。

俺の心の中で、アイミーが微笑んでくれたような気がした。


「それと、後日お礼がしたいと、王女の父……グレイブスタン公国の国王より知らせが届いておるぞ」

「マジッスか!?」


思わず俺は叫んでしまう。

ヤバい、腹が痛い……。


「時機に長期休暇がある。その日にでも行ってみるがよい」

「行くって……グレイブスタン公国にですか?」

「うむ」


……いやいや、金とかどうするんだよ。

俺、寮生活だし、金に余裕は……。


「心配は無用だ。国王が自家用機で迎えに来るようだ。もちろん旅費は無料だ」

「……そんな待遇受けてもいいのかな、俺」


にわかには信じられなくて。

俺は思わず聞き返す。


「よいだろう。たまには素直に受け入れるのも大切だ」

「……それもそうですね」


病室の窓から、俺は空を見る。

いつも通りの、青くて澄んだ空が、そこにはあった。
















某国王女護衛編はこれにて終わりです。

次回は、登場人物紹介をしたいと思います。

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